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三百十七話 K

 

「タ、タクみんっ、どうしたのでござるかっ! そのさらさらストレートヘアーはっ!? あのどうにもならないアフロはどこにいったのでござるかっ!?」

「うん、ちょっと専門の散髪屋に」

「山奥にそんなものがっ!!」


 あるわけないよ。伽羅様との取引で治してもらったんだけど、まさかサラサラストレートになるとは思いもよらなかった。


「似合わないかな?」

「い、いや拙者は、なんというか、男の色気というか、カルちんっ、コメントタッチでござるよっ」

『えっ、うち? う、うちは、タッくんはタッくんやから、アフロでもストレートでも関係あらへん……やのに、なんやろ、なんかちょっとドキドキするわ』


 黒い魔剣のカルナがほんのり紅く染まっている。


「確かに、拙者も動悸と息切れが止まらないでござるっ、レイア様っ、いるでござるかっ、ここは、タクみんの髪をうまくカットして……」

「はうっ」


 地面に倒れこみながらレイアが目の前にいきなり現れる。


「無理です。サラストタクミさんを直視できるほど、私の精神は鍛えられていません。目を閉じてのカットならできますが目測を誤ると大変なことにっ」

「やめてっ、それ誤ったら首とかぶっ飛んじゃうやつだよっ!」


 サラサラストレート恐るべし。

 アフロと真逆の反応に、しばらくこのままでもいいかな、と思ってしまう。うん、別に重くないし。


「しかし、すごい人がボルト山に住んでるのでござるな。タクみんの文字もレイア様のカットも受け付けないアフロを、そんなサラサラにしてしまうなんて」

「そうだね、でも、それなりの代償は払ってきたんだ。思ったより高くついちゃったよ」


 その取引が後にどんな影響を及ぼすのか。

 伽羅様の気分次第だが、トーナメントで優勝する確率が随分と減ってしまった。


『そういえば無限界層トーナメント、次の抽選なかなか始まらへんな。まんまる、サボってるん?』

「ああ、神樹王モクモクの暴走で、かなりのダメージを負ったみたい。回復次第、再開しますのでしばらくお待ち下さい、だってさ」


 トーナメント戦以外での私闘は禁じられていたが、現在、まんまるの監視は行われていない。

 今のうちに残ったランカーたちが、どの程度の力を持ってるか測りたいところだが……


「……誰にも勝てる気がしないんだよなぁ」


 ラスボスというには、俺はあまりにも力不足だ。

 威厳もなければ実力もない。


「そういやレイアはちょっと前にラスボスやってたよね。けっこう迫力あったし、カッコよかったよ」

「そんなっ、今のサラミさんのカッコよさには全然敵いませんっ」


 うん、そういうカッコよさじゃないんだよ。


「前のラスボスとして、俺にアドバイスをくれないかな?」

「ええっ、どっちかというと私のラスボスは黒歴史なんですけど……し、しいて言えば、闇落ちした感じを全面に押し出して、そこに狂気をスパイスする、といった感じでしょうか」

「そ、そんなことしてたのっ!? ちょっと俺には無理そうだなぁ」

『サッくん、そういうの似合わへんからなぁ』


 闇とか狂気って自分で用意するものなの?

 父親も母親もラスボスやってたけど、俺にはその才能は受け継がれなかったらしい。


「根本的に見直さないといけないのか」


 今までは相手が勝手に最強と勘違いしてくれていたが、その補正は「あのお方」の登場により完全に失われてしまった。ラスボスとして、なにか大きな特徴を持たないと新しい主人公「あのお方」に対抗することができない。


「サクみん、せっかく今、カッコいいのでござるから、Kポップアイドル系を目指してみてはいかがでござるか?」

「え? なにそれ?」

「Kを全面に押し出して、色気と妖艶さをスパイスするでござるよ。メイクとかすると、さらに良しでござる」


 そ、そっち方面は考えてなかった。でもアイドルを目指すにはちょっと歳くいすぎてないか?


「レイアはどう思う? あ、あれ? レイア? レイアどこいった?」

『Kのサッくん妄想したら直視できへんかったみたいで消えてしもたで。自分をカットせな、耐えられへんかったんちゃう?』


 えっ!? 自分をカットしなきゃいけないぐらいのKの俺って!?


「じゃ、じゃあカルナは俺がKポップアイドル系ラスボスになったらどう思う?」

『サッくんはサッくんや。うちは見た目で判断せえへん。なんも変わらへんよ』


 うん、でも腰が火傷しそうなくらい魔剣が熱くなってるんだけど……言ったら怒られそうなので黙っておく。


『でもまあ、やってみたらいいんちゃう? うちもKポップアイドル系に似合うようにマイクっぽくモデルチェンジしてみよかな』

「え? これ、もうやらないといけない流れ?」

「当然でござるよっ」

『当たり前やんかっ』


 2人の迫力に押されて後ずさると、ぐにっ、と見えない何かを踏みつける。


「えへへへ、Kクミさん。生涯推していきますね」


 すでに退路はなく、目の前にはKへの扉が、ようこそと開かれていた。



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タクミ、ロボット刑事になるのか?(スットボケ
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