表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
406/420

三百十一話 カッチーン

 

 はしる。

 ただひたすらに走っている。

 流れる汗もそのままに、風を切るように走っていく。


「ふぅ、朝から走るのは気持ちいいな」


 文字の力に頼りすぎて、自ら運動することはほとんどなくなっていた。だらしなくたるんでいた下腹は、ここ数日で随分とマシになってきた気がする。


「よし、今日は朝ご飯までにもうひと走りしてみようか」

「タクみん、走る目的忘れてないでござるか?」


 突然、ロッカに話しかけられて、びくん、となる。

 いつのまに背後にいたんだろうか。まったく気配を感じなかったが……


「そんなことはないぞ。ちゃんと健康とダイエットのために……」

「スピード狂と戦うためではなかったのでござるか!」

「あっ」


 走るのが気持ち良くて完全に忘れていた。

 そういえば、最初は少しでも基礎スピードをあげるために走っていたんだった。


「うん、まあ、当初の目標は達成してたんだよ。けっこう早く走れるようになったから、そこそこはついていけるはずだよ。スピード狂の速さに」

「100メートル何秒でござるか?」

「……に、20秒ぐら……」

「全くついていけてないでごさるよっ!!」


 う、うん、ちょっとそんな気はしてたんだけどね。


「ま、まあ、そこから文字の力使うから。もうすごいことになるはずだよ。生まれ変わった俺を見てほしい」

「生まれ変わる前に試合おわっちゃうでござるよっ!」

「そんなことないよっ、前は全力で100メートルも走れなかったからねっ」


 ロッカが頭を抱えている。

 だ、大丈夫だよ。俺、けっこう頑張ったから。


「はぁ、やっぱり拙者たちが、全力でフォローしないといけないでござるな」

「え? ロッカたち、何かしてるの?」

「内緒でござるよ。でも拙者たちが活躍したら、ちゃんとご褒美は貰うでござるから、覚悟しておいてほしいでござる」


 な、なんだろうか。ちょっと不穏な空気を感じてしまう。でも、スピード狂の攻略方法が思いつかない今、ロッカたちが活躍してくれるなら大助かりだ。


「わかった。俺にできるご褒美なら、なんでもするよ」

「タクみんは何もしなくていいでごさるよ。ご褒美は気づかないうちに貰っとくでござるから」

「???」


 何を言っているのかわからないが、まあ大したことではないだろう。だいたい俺が人にあげれるものなんて、たかが知れている。美味しい料理を振る舞うくらいで精一杯だ。


「あれ? そういえば、預けていたカルナが見当たらないけど、まだ寝てるのか?」

「カルちんは特訓中でござるよ。本当は拙者が先にマスターしたかったのでござるが、ジャンケンに負けたのでござる」

「特訓? ミッシュ•マッシュに改造されて、かなり強くなってるのに?」


 神樹王には通じなかったが、今やカルナの実力は無限界層ランキングにも入るくらいだぞ。


「強さだけでは勝てない敵もいるでござるよ。タクみんは最強でござるが、トーナメント苦戦しているでござろう?」

「うっ、た、たしかに」


 色々作戦を立てているが、どれも手こずっている。トーナメントが始まる前、勘違いで倒していた時のほうがサクサク勝てていた気がする。


「今回はもう作戦は拙者たちに任せて大丈夫でござるよ」

「そ、そう? そんなに自信満々なら任せてみようかな」


 俺も走るほうに集中できるし、頑張ってもらおうかな。


『あっかーーーんっ』

「へ? カ、カルナっ!?」


 さっきまでいなかったはずのカルナが突然現れる。いや、現れたというより、いきなりロッカの手の中にすっぽりと収まっていた。


「カルちんっ、どうしたのでござるかっ」

『特訓中に失敗してしもたっ、皇后止まったまま動かへんっ』

「ええっ、解除できないのでござるかっ」

『そこを覚えるまえに失敗してんっ』


 失敗? それって作戦に関わる特訓がダメになったってこと? 


「と、とりあえず、様子を見るでござるよ。少ししたら戻るかもしれないでござろ?」

『そういう感じちゃうねん。もうカッチーンてなってて、たぶん何億年ほっといても、そのままやで』


 え? 誰が? 皇后が? 皇后って誰だっけ?


「え、えっと……作戦失敗な感じ?」

「だ、大丈夫でござるよっ、カルちんと2人なら、どんな試練も乗り越えて……あ、あれ? カルちん? カルちんっ!? ああっ、カッチーンってなってるでござるっ!!」


 カルナは剣だから元からカチンカチンだよ? と言いたかったけど、それはどう見てもいつも以上にカチンカチンのカルナだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アストロンなのか凍れる時の呪法なのか・・・ タンマウォッチやザ・ワールド目指してんだろうが方向をおもっくそ間違えてね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ