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閑話 愛の斬撃

 

 めっちゃねてた。


 過去回想から戻られへんようになってから、一体どれほどの時が流れたのか。

 ミッシュ•マッシュは、うちの言葉に耳を貸さなくなり、吸収合体を繰り返し続け化け物になってしもた。


 無限界層ランキングに入る頃には、うちは完全にあきらめて、いつか訪れるタッくんとの再開だけを待ち望んでいた。


 もう、いっそ、その日まで冬眠するように眠ってたらいいんちゃうか、と思って大爆睡していたら……



『タッくんっ、バラバラになってるやんっ!!!』


 え? なにコレ?

 どうなってんのっ!?

 目覚めたらいきなり広がる悲惨な光景に意識が追いつかへん。

 教室の床には【不】【可】【侵】【領】【域】の5文字が飛び散ってる。


『こ、これ、うちが斬ったんっ!? 身体に嫌な感触が残ってるっ!! いやぁああああっ!! なんてことするんやっ、ミッシュ•マッシュっ!!』


 ミッシュ•マッシュの脳内に直接言葉を送っているが、反応があれへん。

 長いこと寝てたせいで、言葉がうまく送られへんのかっ!?


『タッくんっ、タッくん、大丈夫かっ!? ちょっと起きてっ!! コイツ、しばいたってっ!!』


 あかん、こっちも反応ない。

 てかバラバラで生きてるかどうかもわからへん。いややっ、うちがタッくんをやってしまうなんてっ、そんな未来のために爆睡しとったんと違うっ!!

 ラブラブな再会を期待しとったのにっ!!


「こんなものなのか、勘違い王タクミ」

「……そんなわけないだろうが、出来損ないの不良品め」


 バラバラのままのタッくんの頭が口を開く。

 よかった、生きとった。でもやっぱりうちの声は聞こえてへんのか……


 糸という文字が斬り刻まれたタッくんの断面にいくつも張り付いてる。

 そこから伸びた線のようなものが、バラバラになった四肢と繋がり、手繰(たぐ)り寄せるように近づいていき、元に戻っていく。


ツギハギ修正(パッチワーク)


 瞬時に回復する再生リバースやない。

 なんでや? うちに斬られた部位がなんか赤黒く変色してる。再生できへん呪いにでもかかってるんか? 

『こわっ、なんやこれっ、うち、めっちゃ怖い魔剣になってるやんっ!?』


 うちに起こってる異変にようやく気がつく。

 なんてことしてくれるんや、ミッシュ•マッシュ。

 無限界層ランキングで戦って敵を吸収合体するついでに、そいつらが持ってた強力な武器もうちと合体させとったんかっ!?


 無敵やったタッくんの文字ごと斬り裂く魔剣。

 うちが寝てる間に、一体どれほどの武器と融合してきたんやっ!?

 まだまだ、どんな特殊武器要素が備わってるか、うち本人も全然わからへん。


「虚勢を張るなよ、痛ましいなぁ。生まれ変わった僕のカルナには敵わないよ」

「……カルナを」


 それは世界に響き渡る。


「カルナを呼び捨てにしていい男は俺だけだっ!!」

『いやーーーん♡ タッくんっ!!」


 身体中から、力が溢れてきたっ!

 今なら、愛の力で何者にも負けへん気がするっ!!


 ……ん? ちょっ、まって。今それやとマズない?


 ズバァアアアアっ、とミッシュ•マッシュがうちを横一文字にふるう。


『あっかーーーんっ!!』


 くっついたばかりのタッくんの体が上下真っ二つに両断される。

 正確には、タッくんが一瞬で召喚した【盾】のカプセル、不可侵盾アイギスごと斬り裂いた。


『いやぁああああっ、豆腐みたいにスパスパ斬れるぅぅうぅっ!!』

「ぐふっ……最強の盾すら通用しないのかっ、強くなったな、カルナっ」


 あっかんっ、タッくんのオーラが減りまくってる。

 たぶん、これ、再生させへんだけやなくて、攻撃と同時に魔力も吸い取ってるやんっ!

 早いとこ、ミッシュ•マッシュの腕から離れて、タッくんのとこ戻らなほんまに死んでしまうっ!!


『んぎぎぎぎぎぃっっ』


 ミッシュ•マッシュの手から離れようと力を込めるがまったく動けない。


『なんや、これ、まるでミッシュ•マッシュの手にくっついているみたいに……いやあぁあぁあぁっ!! ほんまにくっついてるぅぅぅぅ!! ピッタリ繋がってるやんかっ!!』


 魔剣のグリップとミッシュ•マッシュの右手が一体化するように融合していく。


 コイツ、タッくんと戦う時を待ってたんかっ!!

 タッくんの目の前で、一つになろうとしてるんかっ!?

 嫌や、絶対嫌やっ、うちは、うちはっ、ずっとタッくんだけのものなんやっ!!


『タッくんっ!!!!!』


 全力の叫びは届かない。

 長いこと寝てたせいで、言葉がうまく送られへんのやなかった。

 それが、全てミッシュ•マッシュの手に吸収され、邪魔されていることを知る。

 邪悪な笑みを浮かべたまま、うちをタッくんの頭めがけて振り下ろす。


「大丈夫」


 半分になったままのタッくんが、懐かしい笑顔で微笑んだ。


「ちゃんと聞こえてるよ、カルナ」

『タッくんっ! だから、それっ!! うちを感動させたらあかんねんっ!!!』


 かつてないほどに(たかぶ)った感情が、沸点を超えて爆発する。


 うち史上最強の愛が斬撃となって、タッくんに向かって降り注いだ。




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