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二百七十六話 最後の問いかけ

 

「タクみんっ、どこへ行くのでござるかっ!?」

「うん、ちょっと後始末に」


 俺の偽物が作ったビー玉のような宇宙を、ロッカの手に握らせて、ピンクなんとかドアを出現させる。


「せ、拙者は?」

「しばらく反省しててね。それ、刺激与えたら爆発するからね」

「ひぃぃーーっ、でござるっ!」


 ちょっとかわいそうだけど仕方ない。

 人を見た目で判断してはいけないことをわからせないと。ミニチュア宇宙とお留守番の罰である。



 ドアを開けて、床に六芒星が描かれた西方マジックキングダムの地下室に入っていく。

 すでに観念しているのか。

 六芒星の先に座っている六老導りくろうどうたちは、目を閉じて微動だにしない。


「ねてる? もしかして死んでる?」

「生きておるわ」「破壊神タクミ」「もはや手は尽きた」「我らの命など」「好きにすれば」「よい」


 ご老人を亡き者にすることなんて出来ないし、でも、ほっといたらまたなんかやらかしそうだし、まったく邪魔くさい老人たちだ。


「うーん、緑一色グレートフルグリーンで緑にしようかなぁ。でも解除方法、ロッカが発見しちゃったしなぁ」※1

「ふん」「破壊神が」「何を甘いことを」「消し飛ばせばよい」「我らが息子と」「同じようにっ」


 え? あれ息子なの? 六老導の?

 な、なんか嫌だな。自分のコピーがこのおじいちゃんたちの息子って。


「もう偽物とか作らないんなら、許してあげてもいいんだけど。……またやるよね?」

「もちろんだ」「もうしません」「なんだとっ!?」「六つの意志が」「乱れておるっ!」「だって怖いもん」


 おじいちゃんズ混線中。しばらく待ってあげよう。


「と、当然だ」「我ら六老導は」「世界の秩序を」「なによりも重んじる」「破壊神の存在など」「許すわけにはいかん」


 なんとか一つにまとまったが、無理してない?

 世界の秩序か。

 たしかに暴走した俺は、世界を滅ぼしそうになった。

 だけど、反省して2度とそんなことにならないように、あることを計画中なんだけど……


「言っても信用してくれないだろうなぁ。やっぱり悪いけど、しばらく緑になってもらって……」


 突然、耳に、キーーン、と何か巨大なものが飛んでくる音が入り込み、天井を見上げる。


「あれ? もしかして、まだ切り札とかあるの?」

「我らではない」「最高の魔法使いが敗れ」「貴様がこの地を訪れたなら」「南方の細菌兵器が」「魔法王国全土に向けて」「発射される手筈だったのだ」


 細菌兵器?

 魔法王国を巻き込んで?


「めちゃくちゃするなぁ。まあ、着くまでに全弾撃ち落とすか」

「撃ち落としても」「もう遅い」「発射と同時に」「その細菌は」「撒き散らされながら」「飛んでいる」


 ふむ、だったら細菌そのものを消し飛ばすか。


「積み込まれた細菌は新種の培養微生物だ」

「その大きさは1ミクロン以下で視認することはできない」

「普段は人間にまったく害のない微生物だが」

「月の光を長時間当てることで活性化し」

「そこにエリクサーを吹きつけることで」

「空気に浸食し、さらなる進化を遂げていく」


 え? う、うん…なんか、その微生物、どっかで聞いたことがあるよね。


「恐ろしいのはここからだ」

「空気中で進化した微生物は」

「その中で細胞分裂を繰り返す」

「酸素と結合し、時間と共に増殖していく」

「それが10%以下なら人体に問題ない」

「しかし、それが10%を超えると……」


 うん。間違いない。


「それ、ファイナルクエストン?」

「さすが破壊神、南方の最終兵器を知っておったか」


 知ってるわっ。

 それ、俺の妄想だからね。

 ナギサと一緒にマキエを騙すために作った嘘の細菌だからね。※2


 え? なに? 南方の科学者は、俺の空想の産物を現実にしたのっ!? 

 アンブレラポーションでファイナルクエストンを操って、体内に侵入して脳を潰すことも可能なのっ!?


 ……うん、アンブレラポーションってなに?


「それ、ただのハッタリじゃないかなぁ」 


 だって現実には存在しないからね、ファイナルクエストン。

 南方の科学者がそんなものを作り出せるとは思えない。俺のハッタリをそのまま利用したとしたら、出所はマキエとつながりのあるデウス博士あたりか。


「南方と組んだけど実行してるのは、ほとんど西方の魔法王国だよね。向こうは失敗したら次は自分たちが決めて見せる、任せておけ、とか言って最終兵器のことを言ってたんじゃない?」

「ああ、確かに」「その通りじゃが」「それがなんじゃというんじゃ」「南方機械帝国と我らは」「最後まで破壊神と戦うと」「誓い合ったのじゃ」

「飛んできてるのは、最終兵器なんかじゃない。すぐにわかるよ」


 パチンっ、と指を鳴らして、俺を偵察していた千里眼ドローンを再起動させる。何かの役に立つかな、と思って、パクっておいてよかった。


 ぶんっ、と地下室のモニターに、魔法王国全土が写し出され、その上空に無数のミサイルが飛来している。


「さあ」「魔法王国と」「共に滅びよ」「破壊神タクミ」「これが」「ファイナルクエストンだっ」


 ドン、ドン、ドーン、ドーン、とミサイルが次々と空中で爆発すると、無数の小さな星が弾けて、宙に大きな花を咲かせていく。


「へ?」「なに?」「これ?」「なんだ?」「花火?」「なのか?」


 それは戦いの終わりを告げる、最後の(ファイナル)問いかけ(クエスチョン)だった。




※1 緑一色グレートフルグリーンの解除方法は、は第八部三章「二百六十四話 禁魔法の魔法」に載ってます。ぜひご覧になって見て下さい。


※2 ファイナルクエストンは、第四部 五章 「百三十一話 ファイナルクエストン?」に載ってます。人気のエピソードですので、ぜひご覧になって見て下さい。





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