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閑話 誤認定

 

「第七禁魔法が」「発動する」「備えよ」「衝撃で」「世界が」「歪む」


 6つの意識が1つになる。

 今のわしは六老導りくろうどうのイップクであり、ニシンであり、サンポであり、ヨロズであり、ゴカンであり、ムロマチでもある。


「衝撃? タクミが作った別世界にいるのに、ここまで影響があるのか?」

「関係ない」「第七禁魔法は」「すべての」「並行世界に」「影響を」「及ぼす」


 元々我々は一つだった。

 魔法王国に伝わる外道魔法。

 母の胎内で我らは分裂し、六子として生まれ落ちた。

 故に肉体も、意志も、常に元の一つに戻ろうとシンクロしていく。


「……いったい何がおこるんだい?」

「見定めよ」「大盗賊バッツ」「我らは」「歴史の」「証人と」「なるのだ」


 千里眼ドローンからの映像が地下室のモニターに大きく映し出される。


 我らが作り出した最高の魔法使い。


『魔法王国は僕が潰しておくから、心配しなくて大丈夫だよ。これ以上、弟なんていらないからね』


 裏切りは想定内だ

 自分と同じものから

 偽物として生まれる

 その苦しみは

 我々が誰よりも

 深く理解している。


「それでも」「破壊神を」「倒すには」「こうするしか」「なかったのだ」「許せ」


 感情が溢れ

 揺さぶられ

 生まれ落ちてから

 一度たりとも

 流れなかったものが

 頬を伝う。


「「「「「「我が息子よ」」」」」」


 ぼっ。


 ほんの小さな光の塊がその手に生まれる。

 それは、刹那よりも、短い時間で、ありとあらゆるものよりも、大きく広がっていく。


 宇宙開闢的爆発ビックバン


 時空の指数関数的急膨張インフレーション後に相転移により生まれた超高温高密度のエネルギーの塊が膨張の開始となる。

 それは、今から138.2億年前にこの宇宙が誕生したのと同じものだった。


「最初からっ、2人とも消すつもりだったのかっ!? 六老導っ!!」

「すべては」「帰するべく」「場所に」「宇宙は」「再び」「誕生するのだ」


 音もなく

 悲鳴もなく

 消えゆく姿もなく

 その爆発は

 全てを

 飲み込んだ。


 千里眼ドローンが消滅すると同時に、モニターはひび割れ、粉々に砕け散る。

 遅れて、どんっ、と世界全体が大きく縦に揺れた。


「タクミっ!!」

「祈りは」「意味をなさぬ」「最高の魔法使いの」「最高にて最後の」「第七禁魔法が」「発現したのだ」


 破壊神タクミが新しい世界を創造したことが吉と出た。

 もし、この世界で第七禁魔法が発現すれば、世界の半分はなくなっていただろう。

 別世界という閉鎖空間での発現とはいえ、この程度の衝撃でおさまったのは、まさに奇跡としか……


「奇跡?」「いや」「たとえ」「別世界といえど」「この程度の衝撃で」「済むはずがないっ」


 粉々に砕け散ったモニターが予備眼ドローンの映像に切り替わる。

 そこには、もう何も映らないはずなのに……


「へぇ、宇宙を作り出したのか。すごいな、第七禁魔法は」


 破壊神タクミっ!?

 どうしてっ!?

 なんでっ!?

 平然とっ!?

 笑っているっ!?

 ありえないっ!!


「因果律にある領域が地平線を超えて膨張していくのを、同じ速度で凝縮させたんだ」


 大盗賊バッツの目線がタクミの手元に注がれる。

 破壊神は、まるで無邪気な子供みたいに、ビー玉のような小さい球体を、手のひらで転がし笑っていた。


「ほら、みて、ロッカ。これ宇宙なんだよ。落としたらどうなるかな? はい、パス」

「ひぃイィィィッッッっ!! やめるでござるよっ、ダークみんっ!!」


 科学と魔法の頂点に立ち

 世界のことわりすら捻じ曲げる

 最強の魔法使いの

 第七禁魔法を

 完全にオモチャ扱い

 だとっ!?


「僕を造った六老導が言ってたよ。宇宙最強。それを超えるのは宇宙そのもの、だって」


 宇宙最強を

 新たな宇宙で

 上書きして

 塗りつぶす

 その筋書きは

 完璧なはずだった。


「でも違ったんだね、オリジナル。君は宇宙最強なんかじゃない」


 そうだった

 人類最強でも

 宇宙最強でもない

 この破壊神は

 そんな枠組みを

 とうに超えていた。


「僕らはずっと、誤認定していたんだ」

「よくわかったな、その通りだよ」


 魔法と科学の

 頂点に立つ

 最強の第七禁魔法は

 なす術もなく

 この世界から

 抹消された。



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