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二百七十四話 コスチューム

 

「痩せないでござるよ?」

「痩せないですね」

『タッくん、こっそり裏でなんか食べてへん?』


 チョビ髭のヴィーガン料理を1ヶ月食べ続けたが、タクみんの体重はコンマ1グラムたりとも変わらなかった。


「もぐもぐ、野菜だけなんてって思ってたけど、んぐんぐ、このひよこ豆のコロッケめっちゃうまいじゃないかっ。それにニンニクの効いたドレッシングが絶妙すぎて淡白な野菜もどんどん食べれるぞっ。はふはふ、おかわりっ」

「はい、たんとお召し上がりになってください」

「たんと、はダメござるよっ!! もしかして無限におかわりを許していたでござるかっ!?」


 そうですけど、なにか?

 みたいな感じで首をかしげるチョビ髭。


「ヘルシーだからといって食べ過ぎては元も子もないでござるよっ!」

『タッくん、ここの野菜、緑一色グレートフルグリーンかもしれんから、食べるん嫌がってなかった?』

「美味しかったらなんでもいいよ。元人間でも今は野菜だし」


 お、恐るべしブタクみん。


「仕方ないでござる。もうカルナで脂肪を切り落とすしかないでござるな。痩せたら魔法も使えるし、再生リバースで治せばいいでござるよ」

「いや、人殺しじゃないかっ!!」


 あーゆえばこういうデブでござるな。

 やっぱり最初から断食させればよかったでござるよ。


「チョビ髭は今後いっさい、エサを与えてはダメでござる。これからは拙者がタクみんの全てを管理するでござ……」


 ブォンっ、と突然、目の前にピンクのドアが現れる。

 ピンクディメンションドアっ!?


「タクみんの力が復活したのでござるかっ!?」

『いや、タッくん、盗み喰いしてるで』


 あ、あの野郎でござる。

 じゃあ、このドアは一体?


 ガチャリとノブが回り、扉の向こうから、何者かが現れる。


 その姿はまさに……


「た、た、た、た、タクみんっ!? 痩せてた時のカッコいいタクみんが戻ってきたでござるっ!!」


 拙者の想いが天に届いたのでござるかっ!?


『ちゃうで、ロッカ。アレはタッくんとちがう』

「こっちのブタのほうがタクみんとちがうでござる」


 もう誰がなんと言おうが、新しく現れたタクみんが本物でいいでござるよ。


「やあ、みんな久しぶり。そして、はじめまして」


 ズッキューーンっ、でござるっ!!

 な、なんでござるかっ! 前のタクみんよりも爽やかな笑顔でござるっ!


「拙者のタクみんが帰ってきたでござるっ!!」

「ははは、大歓迎じゃないか。嬉しいなぁ」


 シン・タクみんがキラキラと輝きながら歩いているでござる。

 ああ、拙者、もう気絶しそうでござるよ。


「タクミ様のクローンですか。能力までコピーできるとは。どうやら魔法王国と機械帝国は手を組んだようですね」

「さすが、ソッちん、状況把握能力は秀逸だね」


 はうっ、とチョビ髭が胸をおさえてよろめいた。


「これはっ、偽物とわかっていても、心が揺らいでしまいますねっ」


 わかるっ、わかるでござるよっ! 拙者、もうブタクみんのほうが偽物でよいでござる。


「えっと、俺のそっくりさんってことでいいのかな?」

「失礼でござるよっ、ブタクみんとは、まったく似てないでござるっ!!」

「まあまあ、こんなのでもオリジナルだから、そんなにイジメないであげてね」


 さすが、シン・タクみんっ、優しさが溢れているでござるっ!


「しかし、これは想像の斜め上の事態だね。まさかオリジナルがこんなことになっているなんて」

「本当でござるよ。太り過ぎて力も使えないでござる」

「うん、これじゃあ、いともたやすく簡単に消せちゃうじゃないか」


 ん? 消す? 何をでござるか?


『タッくんっ! 逃げてっ!!』

「あ」


 それは、ほんのわずかな、まばたきよりも短い、刹那の瞬間でござった。


 シン・タクみんが、ブタクみんに手をかざしたと思った時には、まばゆい光と共に、その直線上にある全てのものが、消滅していた。


 ぼとん、と脂肪に包まれた腕が地面に落ちてバウンドする。

 それが、ちょうど光からはみ出していたブタクみんの右腕だと気付くまでに、しばらく時間がかかった。


「え? タ、タクみんは?」

「ん? 消えたよ、この世界から。本物は僕1人で十分だろ?」


 え? ブタクみんが? この世界からいなくなった?

 だ、大丈夫でござる。ちゃんとカッコいいほうのシン・タクみんが残って……


「……ちがうでござるよ」


 どうして気が付かなかったでござるか?

 本当の、本当のタクみんはっ、こんなことをしないでござるよっ!!


「お前なんかタクみんじゃないでござるっ!!」

「当たり前じゃない」


 突然、背後から声が聞こえてくる。

 なにもない景色に、人の形をした影がはっきりと色を成していく。


「ステルス迷彩っ!? ずっといたのでござるかっ、クソビッチっ!!」

「誰がクソビッチよ、ねえ、タッちん」

「これ、ちょっと気に入ってたのに」


 偽タクみんの攻撃で右腕がちぎれたブタクみんを脱ぎ捨てて。


「まだ予備あったかな? ナギサ」


 本物のタクみんが飄々(ひょうひょう)とかっこよく現れた。




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