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二百六十九話 陰謀

漫画版3巻絶賛発売中です。発売記念として、第二部の後半と閑話を全面改稿しました。今回は六十話の後の閑話「リックと完全なる世界」を載せました。これで第二部は完全版となりましたので、ご覧になって頂けると嬉しいです。

 

「ギ、ギルド協会潰れたんだ」

「ああ、わしの全てが終わってしもうた」


 なんだかもう向こう側が透けて見えそうなくらい、生命力のないバルバロイ会長。

 ギルドにいい思い出なんてこれっぽっちもないけど、ちょっと可哀想だ。


「けど、どうしてギルド協会が? アリスがいなくても、簡単に潰れないくらい、強い人たちが揃っていたはずじゃ……」


 ナギサとバルバロイ会長が、俺のほうをキッと睨む。

 う、嘘だろ? それも俺がやったと勘違いされてるのかっ!?


「あ、あの、なんか疑われてるみたいだから、先に言っとくけど。魔王と間違われた時と同じだからねっ! みんな、絶対誤解してるからねっ!!」

「お、同じ、というのかっ。ギルド協会本部に1人乗り込んですべての警備員をなぎ倒し、わしの目の前で協会を爆破していったというのにっ、同じじゃと、申すかっ!!」


 うん、だから誰だよっ、その化け物っ!


「さらに、その後もっ! ギルド設立以来のっ、かつてないほどの錚々(そうそう)たる十豪会じゅうごうかいメンバーをっ、いともたやすく根絶やしにしおったくせにっ!!」

「だからっ、知らないってばっ、だいたいかつてないほどの十豪会メンバーて誰だよっ!?」


 バンっ、と弱弱しい手で、それでも精一杯の力で、タク丼屋のカウンターに、一枚の紙を叩きつけるバルバロイ会長。


「え? なに? これがそのメンバー?」


 紙を拾って確認した途端、めまいを覚える。



【十豪会出席者名簿】


 ランキング零ゼロ位 会長 「バルバロイ・サウザ」


 ランキング一位 大精霊「彼女」


 ランキング二位 創造神「アザトース」


 ランキング三位 異界管理・表「シロ」


 ランキング四位 異界管理・裏「クロ」


 ランキング五位 絶対回避「マキエ」


 ランキング六位 古代龍 「龍之介」


 ランキング七位 永遠の距離 「ナギサ」


 ランキング八位 絶対命中「ダガン」


 ランキング九位 攻撃反射「ヒル」


 ランキング十位 攻撃吸収「アサ」


 ランキング外司会進行 「ナナシン・ナナーシ」



「な、なにこれっ!? こ、こわっ!! 世界終わっちゃうよっ!!」

「お主のほうがよっぽどこわいわっ!!」


 号泣しながら叫ぶバルバロイ会長から逃げるようにナギサと店を出る。


 え? 俺があんな凄まじい十豪会メンバー全部倒したことになってるのっ!? 

 いやいやいやいや、あり得ないっ!!

 なんだ? 本当に俺が寝ている間に何があったんだ?

 俺になりすました誰かがギルド協会を潰して、『彼女』やアザトースを倒した? いやいやいやいや、アリスでもそんなこと簡単にできないぞ。


「お、恐ろしい。俺はどうやら巨大な陰謀に巻き込まれているようだ、ナギサ」

「私は、全然覚えてないタッちんが恐ろしいわよっ」


 くっ、ナギサも陰謀に巻き込まれているのかっ!?


「気をつけろっ、何者かに監視っ、いや、命を狙われてるかもしれないぞっ」

「私は一番、アンタに気をつけてるわよ」


 ダメだ。すでにナギサは洗脳されている。

 こうなったらルシア王国に助けをっ! ……いやサシャの様子もおかしかった。今回の件に関わっていない、第三者的な国家の協力が必要だ。


「デウス博士がいる南方はダメだ。レイアは東方出身、ロッカは北方出身だったか。じゃあ残っているのは……」


 西方の魔法王国かっ!? 


「ナギサっ、ほとぼりが冷めるまで2人で西方に逃げようっ!」

「それって愛の逃避行…… ちがうっ! 地獄への片道切符よっ!!」


 ぱしんっ、と差し出した手を弾かれた。


「いい加減、目を覚ましてっ、タッちんっ! 陰謀なんかじゃないっ! 全部、アンタがやったことなのっ!!」


 ボルト山を変形させ、ギルド協会をつぶし、ランキングメンバーを瞬殺した? 全部、俺が?


「またまたまたまたぁ、そんなわけないだろ、寝ぼけてたのか、ナギサ」

「寝てたのはタッちんだよっ!!」


 いや、確かに寝てたんだけど。

 夢遊病? もしかして寝てたら俺、最強なの?


「いやいやいやいやぁ、ないないないない」

「あるのよっ! 映像撮りたかったけど、早すぎて撮れなかったのっ!!」


 うーーん、そうか。ナギサは幻術の魔法をかけられたのかもしれない。

 やっぱり魔法王国に行くのが一番のような気がする。リンならきっと、うまく解決してくれるはずだ。


「よし、すぐに行こうっ、ほらっ、ナギサっ」

「な、なにしてるの、タッちん? そこにドアなんてないわよ」

「あ、あれ?」


 なんでだろ? 目の前に何もないのに、ノブをまわすように、右手を動かしている。


「な、なんかピンクのドアがあるような気がして。それを通ったらすぐに移動できる気がして。な、なんだろ? これ?」

「私が聞きたいわよっ!!」


 俺の知らない記憶が俺の中にあるのか?

 まさか、ナギサたちの言ってることは本当に……


 びゅおんっ、と突然、何もないところを回していた右手の先に、人影が現れる。

 いかにも魔法使いです、みたいな真っ黒なフードを身に纏った人物。それは今、まさに俺が会いに行こうとしていた……


「リンっ!!」

「タクっ!!」


 嬉しさのあまり抱きつきそうになり、リンもそれをむかえ入れるポーズをしていたが、ギリギリの所でナギサに阻まれる。


「すごいタイミングだよ、リンっ! なんでかわからないけど、俺、陰謀に巻き込まれてギルド協会を潰したって勘違いされてるんだっ、リンの魔法でうまく誤解を解いてくれないかっ!?」

「無理よ、タク。魔法王国は、逆にタクが世界を滅ぼそうとしている邪悪な破壊神と認定してしまったわ」

「へ???」


 え? 俺、今度は破壊神なの??


「タクはずっと監視されてたの。六老導の危機管理魔法が、異常なまでに膨れ上がった魔力を探知したから」

「だから、それは陰謀でっ!!」

「陰謀でもなんでも、早く逃げないと危ないのっ! 魔法王国は緊急タクミ警報を発令したわっ!!」

「……そ、それって?」

「魔法王国の全勢力で、タクミを亡き者にすることが決まったわ」


 俺は、いつのまにか大国から狙われるほどの巨大な陰謀に巻き込まれていた。



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