二百五十四話 超宇宙解禁
漫画版3巻絶賛発売中です。発売記念として、第二部の後半と閑話を全面改稿しています。本日も第二部一章「 四十五話 封印を解く」の後に「閑話 カルナとクロエ」を載せましたので、ご覧になって頂けると嬉しいです。
また、今回の改稿に伴い本編を一週お休みして申し訳ございません。忘れちゃっている方は、前回のお話253話「フラグ回収」から読み返して頂くと、今回スムーズに読んで頂けるかと思います。よろしくお願い致します。
「ご、ごめん、来ちゃった」
「来ちゃったのおぉっっっっ!?」
アザトースが驚いて、おもろい顔で倒れている。
自分にそっくりな顔が崩れる様は、あまり見たくないかもしれない。普段、俺よりシリアスな雰囲気でいるから尚更だ。
『タ、タッくん、やっぱり簡単に来たらアカンかったんちゃう?』
「そ、そう? 確かになんかすごい結界っぽかったもんな」
普通にスルーして入ってしまった。非常に申し訳ない。
今から数分前。
ギルド本部が壊滅して逃げるように帰ってきたら、ボルト山全域を神々しい光のカーテンが包み込んでいた。
『タッくん、これ』
「うん、たぶん『彼女』が作った結界だ。そこにアザトースの力も加わって強化されてる。完全なる絶縁結界。外部からの侵入は絶対不可能だ」
見ただけで結界の情報が全部頭に流れてくる。
そして、それを破る術がないことも。
『不可能って? 今のタッくんでも? これ、壊されへんの?』
「なんか触ったらダメな感じがするんだよなぁ。でも今の俺なら大丈夫なのかな?」
最弱だった俺がすごい力を手に入れて、調子に乗っていたのかもしれない。
軽い気持ちで、絶縁結界に触れてみると……
バチっっっ、と触った右手が勢いよく弾かれた。それだけじゃない。さっきまであった俺の右手は綺麗さっぱりなくなっている。
「う、うわぁあああああああああっ! カ、カルナっ、俺の腕なくなっちゃったっ! どっか行っちゃったっ!!」
『いやぁああああっ! さがしてっ! タッくん、なくなった腕さがしてあげてっ!! って……あ、あれ?」
「あ、はえてきた」
なくなった腕が、ニョキっ、と生えて元通りになる。
アリスと戦ったときに魔王が使っていた無詠唱の回復魔法、再生だ。※
どうやら一度見たことがあるものは、強くなる前のやつでも全部自由に使えるらしい。
『あ、相変わらず超無敵やな、タッくん。でもこの結界、ほんまに壊されへんの?』
「たぶん力じゃ無理っぽい。触れたら魔法もかき消される」
ヌルハチの転移魔法も作動すると同時にキャンセルされた。
外部からのあらゆる事象をなかったことにする結界か。
「あ」
『あ』
二人して同時に声を出す。
どうやって中に入ろうか考えていたら、ピンク色のドアが突然目の前に現れたのだ。
『こ、これ、タッくんが出したん?』
「わ、わかんない。でも見たことがある気がする。あっちの世界で」
恐る恐るドアノブを回して中に入ると、そこはもういつもの洞窟前だった。
「タクみんっ、おかえりなさいでござるっ」
「ただいま、ロッカ」
よかった。まだオデコの穴は発動していない。
びっくりして腰を抜かしているアザトースに手を差し伸べる。
「えっと、すぐに『彼女』と一緒に帰ったほうがいいと思うんだけど、無理なのかな?」
「ざ、残念だが不可能だ。絶縁結界の解除時間が来るまで我々も外に出ることができない」
それはまずいな。また力が勝手に作動して、アザトースたちが大変な目にあうかもしれない。
「過ぎた力を持て余しているのね」
レイアと戦っていた『彼女』が戻ってくる。俺が来たことでその戦いに意味がなくなったことに気付いたようだ。
「安心なさい、匠弥。母が全部受け止めて持って帰ってあげるわ」
「う、うーーん。たぶん無理だと思うから、何もしないほうがいいんじゃないかなぁ」
すっ、と『彼女』が手をかざすと、そこに小さな紅い鳥がやってきて、ぴとっ、と指先にとまった。
「大丈夫よ、もしもの時のためにスーさんを連れきたから。気にせず、思いっきりかかってきなさい」
四神柱の朱雀こと、スーさんがまかせろ、とばかりにコクコクと頷いている。
「思いっきり、か」
自分の手を裏返して、手のひらを見ると、そこから力の奔流が、ぶわっ、と溢れ出すの感じた。
何もしなくても、勝手に作動していた莫大な力。
それを自らの意志で使ったらどうなるのか?
想像しただけで恐ろしいのに、それを試してみたくてウズウズする。
「い、いや、私は手加減したほうがいいと思うぞ、匠弥。も、もう使う前から、ヤバいオーラでてるし。すっごく嫌な予感がするぞ」
「せ、拙者もお父上に賛成でござるっ。大きすぎる力は破滅をもたらす、と常日頃からタクみんが言ってたではござらんか」
うん、それは俺が弱かった時、雑に力を使うロッカのせいで何度も死にそうになってたからだよ。
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。一回、全力を使ってみようかな」
『タ、タッくん? ほんまにタッくんなん? な、なんか別人みたいな顔してるで』
生まれた時から最弱だった。
一生懸命修行しても、ゴブリン一匹倒せなかった。
そんな俺が力を持ってしまったら、使わずにはいられないじゃないか。
開いていた手のひらを、ぐっ、と握る。
溢れる力が一点に集約され、キィィィィィィッン、と衝撃波のような音がボルト山全域に響き渡った。
「ワクワクするわね」
それでいいのよ、と言わんばかりに、『彼女』が優しく微笑んだ。
抑えきれなくなった力を、持て余して解き放つ。
全ての予想を超えたその力は、いとも簡単に絶縁結界ごとボルト山を消滅させた。
※ 魔王が再生を使うお話は、第二部五章「六十三話 本体」に載ってます。新しく改稿したお話ですので、まだの方は、ぜひ一度、読んで頂けるとうれしいです。




