閑話 タクミ対策委員会
「これが現在、確認されている超宇宙タクミの事案です。バルバロイ会長」
ギルド会本部の会長室の椅子に深く腰掛け、ルシア王国統括執事長、ナナシン・ナナーシからの報告書に目を通す。
「……これは本当に、真実なのか?」
「間違いありません。リック殿から預かった千里眼の水晶で確認しております」
机の上に置かれた報告書に再び目を通し、大きな溜息と共に、天を仰ぐ。
ようやく訪れた平和がガラガラと崩れ落ちる音が聞こえてきた。
【超宇宙タクミ 暴走事案報告書】
三月某日 第六禁魔法ロッカとの練習試合で、直接触れる事もなく額に謎の穴を開ける。
四月某日 黒龍の王、クロエ・コダイをデコピンで吹っ飛ばし全治3ヶ月のケガを負わせる。
四月某日 大賢者ヌルハチ(本名ヌ・ルシア・ハシュタル・チルト)の禁魔法 緑一色を跳ね返し、植物化させる。
五月某日 ヌルハチの治療のため訪れたルシア王国医療班と騎士団を緑一色で大量植物化させ、大草原を彷彿とさせる。尚、呪文の詠唱は穴を開けたロッカを介して行った模様。
五月某日 暴走するタクミを抑える為に訪れたデウス博士、及びマキナを最新兵器ヘリコプターと共に爆破。現在、人質として捉えられている。
「酷いな、あまりにも酷すぎる」
いや、これだけの力を持ちながら、まったくの野心を持たず、これまで大人しくしていたほうが奇跡だったのか。
「ルシア王国の対応は?」
「現在、行方不明のサリア・シャーナ・ルシア様に変わり、前女王様が復活されておりますが、不測の事態のため、収拾がつかない状態です」
騎士団が壊滅していては、戦力としてアテにはならんか。
いや、そもそも今のあの男には、全人類総出で戦っても勝てる気がしない。
「あの男の、タクミの目的はなんだと思う?」
「わかりません。超宇宙タクミの思考は、我々の理解の範疇をとうに超えております。ただ望むならば、その力で全てを叶えることができるでしょう」
「世界制覇も、人類絶滅も、か」
ゆっくりと目を閉じて、タクミとの出会いを思い出す。
あの時は、魔王と誤認定してギルド総出で挑んだが軽くあしらわれてしまった。
「もはや、魔王すら可愛く思えるほどの脅威じゃな」
大きく息を吸い込み、カッ、と目を開いて宣誓する。
「これより十豪会メンバーを召集するっ! 」
ナナシンが顔を歪めて耳を塞いだ。
「えっと、これは何かの間違いではないのか? ナナシンよ」
「いえ、現在の1位は間違いなく、あの男でございます、バルバロイ会長」
「マ、マジで?」
「マジで、でございます」
人手不足のため、臨時の秘書になってもらったナナシンを疑ってしまう。
「おいおい、十豪会の会場、大武会の跡地じゃねえか。俺様、本戦出てなかったから、なんか嫌な気分だぜ」
「まあまあ、ザッハ。今はランキング1位にゃんだから我慢するにゃ。次の大会があったら優勝できるにゃ」
円卓の1と2に座り談笑する狂戦士ザッハと獣人王ミアキス。
こ、これほどまでに、今のギルドは落ちぶれてしまったのか。3位から10位の顔ぶれも見たこともないような奴ばっかりじゃ。
「ギルドランキング上位者に通達したのですが、ほぼ全員に逃げられました。どうやら超宇宙タクミ暴走の噂が広まっているようです」
「ギルドライセンス剥奪のペナルティも厭わぬ、というわけか。やってきたのはバカ2人。これはもう十豪会は中止せざるをえんの」
逃げ出した冒険者たちを責めるつもりはない。
もともと無謀な賭けだったのだ。
「ガハハハ、なんだなんだ、どいつもこいつも弱そうだな。よーし、1位の俺様が戦い方ってやつを教えてやるぜ」
「……本当は吾輩が1位だったけど面倒くさいから、ナナシンに頼んで変えてもらったにゃ」
「ん? なにか言ったか、ミアキス?」
もう見てられんの。そうそうに解散を宣言して…… ん? なんじゃ、誰か来たようじゃが?
「ごめんなさい、ちょっと、その席、譲って頂けるかしら」
「ああっ、てめえ、誰に向かって…… ひぃっ!!」
立ち上がって、背後の女性を確認したザッハが、そのまま固まって気絶する。
「隣の子猫ちゃんもいいかしら」
「も、もちろんですにゃ! すぐにコイツを連れて失礼しますにゃ!!」
バカなっ、あり得ないっ! どうして、あの者たちが、こちらの世界にっ!!
「どうやら奥の手が届いたようですね」
「ナ、ナナシンっ、お主があの者たちを呼び寄せたのかっ!? あ奴らはこちらの世界にはもう関わらないと誓ったはずじゃっ!!」
「以前、ルシア王国の騎士団長をしていたナギサ殿とは連絡を取り合っていましたので今回の件を報告させていただきました。お子様の暴走を止められるのは、ご両親だけですから」
なんと無謀なっ、だがこの者たちならっ!
「……超宇宙タクミを倒せるかもしれん」
ギルドランキングをすべて書き直し、別世界からの来訪者たちが、それぞれの円卓に座っていく。
【十豪会出席者名簿】
ランキング零位 会長 「バルバロイ・サウザ」
ランキング一位 大精霊「彼女」
ランキング二位 創造神「アザトース」
ランキング三位 異界管理・表「シロ」
ランキング四位 異界管理・裏「クロ」
ランキング五位 絶対回避「マキエ」
ランキング六位 古代龍 「龍之介」
ランキング七位 永遠の距離 「ナギサ」
ランキング八位 絶対命中「ダガン」
ランキング九位 攻撃反射「ヒル」
ランキング十位 攻撃吸収「アサ」
ランキング外司会進行 「ナナシン・ナナーシ」
かつてないほどの錚々(そうそう)たるメンバーに、背筋がぞくっ、と震える。
「あ、あれ? ミアキス、俺様たちの席は?」
「そんなのとっくになくなったにゃ」
はみ出した2人を無視して、大きく息を吸い込む。
「では、これより十豪会を開会するっ! !」
ナナシンは前もって耳を塞いでいた。
『うちの弟子』漫画版2巻が、2022年11月8日(月)秋田書店様の少年チャンピオンコミックスから発売されました!
お待たせしました!
漫画版3巻は、2024年3月7日発売です!
1巻に引き続き、小説版にはない面白さがさらに加速しています!
十豪会や大武会など物語も大きく動きます!
漫画版で躍動するタクミたちをぜひご覧になって見てください!
どうか、よろしくお願い致します!
WEBマンガサイト「マンガクロス」様でうちの弟子、漫画版最新話、掲載中!
第二部始まりました!
超絶に面白いので、みんな見てねー!
次回公開は3月26日火曜日予定です!
漫画版はなんと、あの内々けやき様に描いていただきました。
かなり素敵で面白い漫画になってますので、ぜひぜひ、ご覧になってみてください!!
第7回ネット小説大賞受賞作「うちの弟子がいつのまにか人類最強になっていて、なんの才能もない師匠の俺が、それを超える宇宙最強に誤認定されている件について」
コミカライズ連載がマンガクロス(https://mangacross.jp/)にて3/30(火)よりスタート!!
WEB版で興味を持って頂いた方、よかったら漫画版もご覧になってみて下さい!
またWEB版と書籍版もだいぶ変わっています!
一巻は追加エピソード裏章を多数追加。
タクミ視点では書き切れなかったお話を裏章として、五話ほど追加しており、レイアやアリス、ヌルハチやカルナの前日譚など書き下ろし満載でございます。
二巻は全編がかなり変更されており、さらに裏章も追加されてます!
WEB版では活躍が少なかったマキナや、出番のなかった古代龍の活躍が増えたり、タクミとリンデンの幼い頃のお話や、本編でいつもカットされているレイアの活躍が書かれています。
書籍版も是非、よろしくお願い致します!
⬇︎下の方にある書報から二巻の購入も出来ます。⬇︎
これから応援してみよう、という優しいお方、下のほうにあるブックマークと「☆☆☆☆☆」での応援よろしくお願いします!
すでにされている方、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
茄子炒め 様から素敵なレビューを頂きました。
いつも応援ありがとうございます!
言葉にならないほど感謝しています!
感想も、どしどしお待ちしています!