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二百五十話 千万無量

 

「これは一体何事でござるかっ!?」


 うん、俺のほうが聞きたいよ。

 やったの、ロッカだからね。


 洞窟の前には、緑一色グレイトフルグリーンによる被害でルシア王国の騎士団や医療班が、植物のようにワラワラと光合成している。


「ちょっとロッカ、オデコ見せてもらってもいい?」

「な、なんでござるか? もしかしてオデコにちゅー、とかいうやつでござるかっ!? す、少し待つでござるよっ! 拙者、心の準備がっ!!」

「その準備は俺もできてないよっ! ちょっと黙っててっ!!」


 ロッカの前髪を上げてオデコを確認する。

 緑一色グレイトフルグリーンを唱えていた、口のような穴は綺麗になくなっており、ツルンとしたオデコが広がっていた。


「どう思う? カルナ」

『たぶん、やけど、タッくんがピンチになったら自動で発動するんやと思うわ。あの時、ルシア王国の騎士団が迫ってたやろ。タッくんが危険を感じたら、ロッカの意識を乗っ取って詠唱するんやわ』

「お、恐ろしいな。俺はロッカのオデコに触れてもいないんだぞ。寸止めした拳の風圧だけで、こんなことになってしまった」


 目を閉じて、じっ、となにかを待っているロッカは放置して、カルナと2人、今後の対策を相談する。


「しかもヌルハチの緑一色グレイトフルグリーンは、まだ未完成で1人だけにしか発動できないと言っていた。なのにロッカの緑一色グレイトフルグリーンは、明らにパワーアップして、数十人にまで範囲が広がっている」

『ほ、ほんまに宇宙最強やな。武力でも魔力でも、もう誰にもタッくんを止められへん。アリスが帰ってきてもどうにもならへんのちゃう?』

「……そうだな、もう普通のやり方じゃ無理かもしれない。だから最後の手段をとることにしたよ」


 武力でも魔力でも、俺の力を制御することはできない。

 だったら残るはもう一つしかない。


 パタパタパタ、と激しい風斬り音が上空から聞こえてきた。


『な、なんや、またなんか来たでっ! ああっ、ルシア王国の皆々様が、風に揺られて吹っ飛んでるっ!! なんなん、アレっ!?』

「ヘリコプターだ。また新しい機械を発明したらしい」

『え? まさか、アイツかっ!?』

「おーい、タクミくーーん」


 ヘリコプターから大きな頭を乗り出して、白い白衣に身を包んだ少年のようなおっさんがブンブンと手を振っている。


「お久しぶりですーー、デウス博士ーー」


 かつて、最弱だった時の俺が唯一、まともに死闘を繰り広げた好敵手。武力でも魔力でもない。世界一の頭脳、科学の力を持つ男がやって来た。



「なるほど、いままで抑えていた力が制御できなくなり。仲間たちに被害が及んでしまった、というわけですね」

「そうなんだよ。ヌルハチやサシャは植物みたいになっちゃうし、クロエは吹っ飛ぶし、ロッカはオデコに変な穴ができちゃったんだ」


 ふむ、とデウス博士が頷きながら、ノートにメモをとっている。


「残念ですね、タクミ君。君は弱くなってしまったようだ」

「え? 弱く? いや強くなりすぎて困ってるんだけど」

「いえいえ、これまでのタクミ君はどれほどの力を持っていても、それを一切、表に出すことがなかった。力を計ることができないことが、僕にとっては一番の驚異だったのです」


 う、うん。表に出すも何も、力がなかったからね。


「力を抑えることができない今のタクミ君なら、僕はすべてを解析することが可能でしょう。そうすれば科学的にそれを上回る防御壁を作り出し、簡単に拘束することができるはずです」


 おお、頼もしい。色々と解決するまで、デウス博士に捕まっていたほうがいいかもしれない。


「それでは早速、タクミ君の力を計らせてもらうよ。マキナ、最新の計測器スカウタをお願いします」

「ハイ、デウス博士」


 助手としてついて来たマキナが、片目だけ装着するタイプの眼鏡のようなものを持ってくる。

 向こうの世界のアニメで見たことがあるやつだ。


「ふむ、タクミ君の力は53万…… いや、ちがう、53億? あれ? ちょっと待ってっ! ゼロがっ、ゼロがどんどん増えてるっ! 嘘だっ! 最新型の計測器スカウタが壊れるっ!? うわぁあああああああああっ!!」


 ぼんっ、と爆発して粉々に砕け散る計測器スカウタ

 デウス博士が、顔面をおさえながら転げ回っている。


「デ、デウス博士っ」

「よるなっ、化物っ!!」


 が、がーーん。唯一分かり合えていた最弱友達だったのに。


「し、信じられない。68桁までの数値を測れる計測器スカウタが、まるで役に立たないなんてっ!」

「あ、あのぅ、俺、拘束してほしいんだけど」

「できるわけないだろうっ! くそうっ、向こうの世界の科学と融合させた超科学を軽々と凌駕しやがってっ! マキナっ、帰るぞっ、一から全部やり直しだっ!」


 ああああ、帰らないでっ! 俺をなんとかしてっ!!


『あかんっ、タッくんっ! 手を伸ばしたらあかんっ!!』

「あ」


 ヘリコプターに乗り込んで、帰っていくデウス博士に向かって、右手を伸ばしただけだった。

 それだけでヘリコプターの上部で回るパタパタが、バキンと折れて、ぴゅーー、とどこかに飛んでいってしまう。


「ヘリコプター制御不能。衝撃ニ備エテ下サイ」

「うわぁあああああああああっ、この化物がぁああぁーーーっ!!」

「ご、ごめんなさぁいぃぃぃ!!」


 目の前でヘリコプターが墜落して、洞窟の前が爆炎に包まれる。


「し、しばらくお世話になるよ、タクミくん」


 こんがり焼けたデウス博士が、ゴホッ、と煙を吐いてパタンと倒れた。




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