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二十七話 大武会 開催

 

 大武会が行われるギルド総本部に着いたのは開催当日の朝だった。

 冒険者試験に落ちたり、大武会で初戦敗退したり、ここには、あまりいい思い出がない。


 四方は巨大な壁で覆われ、まるで砦のように武装されたギルド総本部を外から見上げる。


 戦争でもするつもりか? 

 一体、ギルドは何と戦うつもりで、こんな所を作ったのだろうか。


 凄まじい威圧感を放つ建物に圧倒されながら、入り口の門に辿り着くと、門番らしき男に止められた。


「本日はギルド大武会だ。入場にはチケット、もしくはギルドカードが必要となる」


 如何にも門番らしき体のごつい鎧の男が、門を塞ぐように立っていた。


「全員、参加者だ。通してくれ」


 前もってバルバロイ会長から送られていた書状を見せると、門番の男が慌てて門を開けた。


「こ、こ、これは失礼致しましたっ。どうぞ、お通りください!」


 門番が直立不動の姿勢で震えている。

 やはり、俺は魔王と思われているようだ。

 まあ、すぐ後ろに人外の四天王やクロエがいるし、まともな集団には見えないだろう。

 むしろ、最初、よく俺達を止めたな、と感心する。



 中に入ると、そこはちょっとしたお祭りのように、多くの出店が並んでいた。

 普段はギルド関係者しか入れないギルド総本部も、五年に一度、大武会の時だけは、チケットを購入すれば、中に入ることが出来る。


「おい、あれ、まさか、魔王一行じゃねえか?」

「しっ、目を合わせるんじゃねえ、呪い殺されるぞっ」


 出店のおっさん達は、俺達が近づくとみんな、目線を逸らして一様に押し黙る。

 とても買い物ができる雰囲気じゃない。


「タクミ、わたあめ、食べたい」

「ごめん、帰りに買ってあげるからな」


 何もかも解決したら、また一般人に戻れるだろうか。

 チハルの頭を撫でながら、そんなことを考えていた。



 大武会用の舞台は総本部の中心にあった。

 正方形で石造りの大きな闘技場には、四隅に鉄の柱が埋め込まれ、それぞれに何か名前が書かれている。


「四神柱ですね。東方にも同じものがあります。玄武、白虎、青龍、朱雀の四体の神獣が四方を守ることにより、闘技場は神聖な場へと昇華します」


 レイアの国にも同じものがあるのか。

 前に大武会に参加した時は予選落ちしたので、こんな立派な舞台で戦ったことはない。


「私の神降ろしに似た術式が柱に宿っています。玄武は致命傷となるダメージを肩代わりし、白虎は不正を見抜き、青龍は欠損した部位を治療し、朱雀は死んだものを蘇生させます。いずれも能力が発動した時点で敗北が決まりますが、この闘技場で戦うのならば、死んでしまうということはないでしょう」

「そうか、それなら安心して戦えるな」


 初戦で戦わず棄権しようと思っていたが、死なないのなら、戦ってみてもいいかもしれない。


「はっ、タクミさんは、その余りある力で対戦相手を亡き者にしてしまうことを心配されておられたのですねっ」

「うむ、よくわかったな、その通りだ」


 うん、俺が死ぬことしか心配してない。



「お待ちしておりました。タクミ様」


 出迎えてくれたのは、十豪会(じゅうごうかい)の円卓を準備したリンデンさんだった。


「もうすぐ予選が始まりますが、十豪会(じゅうごうかい)のメンバーの皆様は本戦からの出場になります。それ以外の皆様は予選会場に向かって下さい」


 ああ、確かにそんなルールがあった。

 ギルドランキング上位十名は本戦トーナメントから戦える。

 うちは、代理だったチハルとジャスラック。

 四天王とクロエの七人が予選から戦わないといけない。


「お前ら頑張って来いよ。本戦で待ってるからな」


 狂戦士(バーサーカー)ザッハが爽やかな笑顔で見送った時だった。


「あ、ザッハさんも予選からですよ」

「へ?」

「先日、正式にザッハさんのランキング降格が決定しました。現在のザッハさんのギルドランキングは106位のCランクです」

「な、なんだとっ!?」


 一気に100位も順位を落とすザッハ。

 十豪会(じゅうごうかい)で、ミアキスに手も足も出せず、コテンパンにやられたのが、よほど印象が悪かったようだ。


「お、覚えとけよっ! 俺様は本当は強いんだからなっ! くそうっ、みんなぶっ倒してやるっ!」


 捨てゼリフを残して予選会場に走るザッハ。

 その瞳から流れた大粒の涙を俺は見逃さなかった。



「本戦トーナメントは現在決定している十名と予選を通過した六名の計十六名で行われます。予選をご覧になられますか?」

「いやいい。本戦が始まったら呼んでくれ」

「かしこまりました。控え室を用意致しましたので、そちらでお休み下さい」


 闘技場横にある豪華な控え室に案内される。

 ランキング一位だからだろうか、十年前、参加した時の簡易テントみたいな控え室とはえらい違いだ。


「あれ、チハルは予選に行かないのか?」

「うん、タクミと一緒にいりゅ」

「そうか、そのほうがいいな」


 大人言葉になったチハルはゴブリン王ジャスラックとも互角に戦えるが、ワンデートーナメントに向いてない。全試合、あの力を発揮することは出来ないだろう。


 まあ四天王やクロエ、ジャスラックの六人が予選で落ちるとは思えない。

 チハルが参加しなくても、全然大丈夫なはずだ。


 ん? 六人?


 もしかして、いやもしかしなくても、あの人、絶望的なんじゃ……



 その予感は的中した。

 予選会場のほうから、凄まじい爆音が聞こえてきた。


 しばらくして控え室から出ると、予選を見ていたらしい男達が騒いでいる。


「やばいぞ、ザッハの奴、ランキング落とされた腹いせに予選会場爆破したらしいぞっ」

「いや、予選で猫みたいなやつにボコボコにされたから、自爆したんだって」

「なんか、会場爆発させたから、ペナルティーで、さらにランキング降格になったらしいぞっ」


 俺が渡した魔盾キングボムのせいでえらいことになってしまった。

 まあ、四神柱があるし、死なないから大丈夫だよな。



「予選が全て終わりました。これより本戦トーナメントの抽選が始まります。皆さん、ご準備ください」


 予想通りに四天王とクロエ、ジャスラックが予選を勝ち上がる。

 闘技場の前に本戦出場者の名前が張り出された。



【ランキング上位者】


 ランキング(ゼロ)位 会長 「バルバロイ・サウザ」


 ランキング一位 宇宙最強 「タクミ」


 ランキング二位 人類最強 「アリス」


 ランキング四位 勇者 「エンド」


 ランキング五位 半機械 「マキナ」


 ランキング六位 超狩人 「ダガン」


 ランキング七位 隠密 「ヨル」


 ランキング八位 神降ろし 「レイア」


 ランキング九位 沈黙の盾 「リック」


 ランキング十位 空間使い「リンデン・リンドバーグ」



【予選通過者】


 獣人王 「ミアキス」


 不死王 「ドグマ」


 吸血王 「カミラ」


 闇王 「アザトース」


 ゴブリン王 「ジャスラック」


 ブラックドラゴン 「クロエ」


 以上十六名。



 大武会、本戦が今、始まろうとしていた。

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