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二百四十三話 ナイスガイ

 

 アタミ(アリス)は、ロッカとの修行にハマっていた。

 師匠としてはレイアに教えるのが苦手なアリスだったが、弟子となることで、逆に師匠の時よりも上手くいっている。


「師匠、そのパンチすごい。あえてワタシに初期動作を見せてくれなかったら、よけれなかった」

「そ、そうでござろう。よくぞ、拙者の意図に気がついたでござるな。……ち、ちなみに、どんな動作でござったか?」

「パンチを繰り出す方の肩がぴくっ、て動いてた。でも、そこまで大袈裟にしなくても大丈夫」

「そ、そ、そ、そうでござるかっ、次からはヒントは少な目にしておくでござるよっ」


 ダラダラと汗をかきながら、かろうじて師匠の尊厳を守るロッカ。

 当分の間、この二人は放っておいて大丈夫そうだ。


「空いた時間で何をしようかな。ゴロゴロしてもいいけど、せっかくだから、新しいレシピでも考えてみようかな」

「タクミさん、お手隙のようでしたら、お願いがあるのですが」

「お、おお、どうしたんだ、レイア」


 まさか、今頃、また修行したいなんて言い出さないよね?

 無理だよ、もうレイアに教えることなんて一つもないよ。


「実は先日、非常に珍しい神様を山で見かけたのですが、どうも私の力では降ろせないみたいで」

「え? レイアに降ろせない神様がいるの?」


 隠密の里の面々もほとんど引退状態だし、神降しに関しては、もはやレイアの右に出るものはいない。

 そんなレイアに降ろせない神様なら……


「うん、それはあきらめたほうがいいね。そっ、としておいてあげよう」

「そうもいきません。もしかしたらとんでもない災いをもたらす、邪神やもしれません。悪さをしないように、ここはタクミさんのお力でなんとかして頂けないでしょうか」


 うん、無理だよ。

 とんでもない災いをもたらすなら、さらに無理だよ。


「そ、そういうのはアリス、いやアタミとかのほうが向いてるんじゃないかな?」

「アリス様は、どんな神とか関係なしに消滅させてしまいそうです。ここはやはりタクミさんしか」

「え? ちょっと待って。レイア、アタミがアリスって知ってるの?」

「あ、はい、外見が違うだけで、どう見てもアリス様ですよね。ヌルハちぃも気づいてますよ」


 き、気づいてないのはロッカだけか。

 そうだよね。ちょっと小さくなって黒髪になっただけで、ほとんどアリスそのものだもんね。


「そ、そうか。それじゃあまず様子だけ見に行こうか」

「はい、タクミさん」


 悪そうな神様だったら、すぐにアリスを呼んでこよう。

 てか俺が行っても、どんな神様かわからないような気もするが……


「アレです、タクミさん、見えますか?」

「お、おおお」


 洞窟から離れ、少し山を登った丘の上。

 そこには、ユラユラと揺れる黒い影のようなものが立っていた。

 草場にしゃがみ込んでレイアと二人で観察する。


「な、なんか真っ黒のシルエットだね。どんな神様か心あたりはないの?」

「はい、影の神様かと思いましたが、どうも違うようです。近づいて姿を確認しようとしましたが」


 隣にいるレイアの額から、つーー、と汗が流れ落ちる。


「これ以上は身体が動きません。まるで絶対に近づけない、強い力が働いているようです」

「え? そ、そうなの?」


 全然、気づかなかったけど、そんな力が働いてるの?

 試しに、一歩だけ前に進む。……え? 


「ふ、普通に近づけるんだけど」

「さ、さすがタクミさんっ、やはり私など、足元にも及ばないっ!」


 えーー、やめてぇーー! 

 これ俺一人で行くハメになりそうじゃないかっ!!


「ちょっと、なにかあったらすぐにアリスを呼んできてね」

「タクミさんが手加減できず、神様を倒しすぎないようにするためですねっ! わかりましたっ!」


 全然わかってないけど、もうそれでいいや。

 とにかく、この黒いシルエットの正体を確認したら、すぐに退散だ。


 そー、と。慎重にゆっくり近づいていくと……


「な、なんだ、これ」


 黒い影と思われたシルエットは、影ではなかった。

 全身に黒い文字がビッシリと書き込まれている。

 こ、怖っ、向こうの世界のアニメで見た特級呪物のような姿に思わず、ざざっ、と後ずさった。


「お経? いや違うぞ、これは……っ!!」


『第八部ラスボス』


 おでこに書かれている文字に戦慄する。

 そして、それ以外にも、身体中に書かれている文字は……


『暗黒空間より誕生した混沌の王』

『あらゆる攻撃を何十倍にもして弾き返す』

『世界に影があるかぎり何度でも蘇る』


「え? な、なにコレ」


 子供が考えたようなデタラメなチート設定、さらにそれだけではなく。


『主人公の生き別れた兄』

『と見せかけて実は姉』

『しかし血の繋がりはなく、主人公のことが好きになる』


「いや、設定ブレまくりじゃないか」


 いろんな設定が書き込まれすぎて、無茶苦茶な文字人間。


「もしかして、これが次の強敵になるのかな。まだ作りかけみたいだけど、どうして俺は近づけたんだろ?」


 首を横に傾げると、文字人間も真似して同じように傾げた。

 どうやらわからないらしい。


「どうしようかな。このままほっといたらすごいラスボスになりそうだし。でもこの状態で倒すのも可哀想だし」


 まだ読んでない文字にも、恐ろしい設定が書かれていそうだ。


「あ、そうだ。レシピを書こうとして持ってきたメモ帳にペンが挟んであったな」


 身体中に文字が書かれた文字人間だが、まだいくつかは書き込めるスペースが残っている。


「よし、追加で書いておこう。『超優しくて誰も傷つけない。誰よりも平和を望むナイスガイ』と」


 おへその上に空いた場所にそう書くと、目も鼻も口もない、文字人間がさわやかに笑ったような気がした。


 そして、そのまま、ひゅっ、とその存在がかき消える。


「タ、タクミさんっ! 影はっ! 邪神はっ!?」


 動けなかったレイアが走ってきたが、状況はわかっていない。


「さ、さあ? でも俺、もしかしたらラスボスになりそうなヤツを倒してしまったかもしれない」

「さ、さすが、さすが私のタクミさんですっ」


 うん、私のじゃないけどね。


「なんだこれ?」


 文字人間がいた辺りを囲むように、小さなかわいい足跡が、てんてん、と続いている。


 それはやっぱり懐かしい、小型犬の足跡だった。




『うちの弟子』漫画版2巻が、2022年11月8日(月)秋田書店様の少年チャンピオンコミックスから発売されました!


挿絵(By みてみん)


1巻に引き続き、小説版にはない面白さがさらに加速しています!

十豪会や大武会など物語も大きく動きます!

漫画版で躍動するタクミたちをぜひご覧になって見てください!

どうか、よろしくお願い致します!


挿絵(By みてみん)


WEBマンガサイト「マンガクロス」様でうちの弟子、漫画版最新話、掲載中!

第二部始まりました!

超絶に面白いので、みんな見てねー!


次回公開は11月28日火曜日予定です!


漫画版はなんと、あの内々けやき様に描いていただきました。

かなり素敵で面白い漫画になってますので、ぜひぜひ、ご覧になってみてください!!


第7回ネット小説大賞受賞作「うちの弟子がいつのまにか人類最強になっていて、なんの才能もない師匠の俺が、それを超える宇宙最強に誤認定されている件について」


コミカライズ連載がマンガクロス(https://mangacross.jp/)にて3/30(火)よりスタート!!


WEB版で興味を持って頂いた方、よかったら漫画版もご覧になってみて下さい!


またWEB版と書籍版もだいぶ変わっています!


一巻は追加エピソード裏章を多数追加。

タクミ視点では書き切れなかったお話を裏章として、五話ほど追加しており、レイアやアリス、ヌルハチやカルナの前日譚など書き下ろし満載でございます。


二巻は全編がかなり変更されており、さらに裏章も追加されてます!

WEB版では活躍が少なかったマキナや、出番のなかった古代龍エンシェントドラゴンの活躍が増えたり、タクミとリンデンの幼い頃のお話や、本編でいつもカットされているレイアの活躍が書かれています。


書籍版も是非、よろしくお願い致します!



挿絵(By みてみん)

⬇︎下の方にある書報から二巻の購入も出来ます。⬇︎


これから応援してみよう、という優しいお方、下のほうにあるブックマークと「☆☆☆☆☆」での応援よろしくお願いします!

すでにされている方、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.


茄子炒め 様から素敵なレビューを頂きました。

いつも応援ありがとうございます!

言葉にならないほど感謝しています!


感想も、どしどしお待ちしています!

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