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二百二十四話 神様のいいね

 

「チョビひげぇえええええっっっ!!」


 東方に飛ばされてから、もう一度大きく叫ぶ。

 あ、あの野郎、裏切りやがったでござるよっ!


 辺りを見渡すと、小さな藁葺き屋根の家がいくつか並んでいる。

 村というには規模が小さい。

 もしかしてレイア様の生まれ故郷、神降し一族の隠れ里か?


 ここからタクみんのいる西方まで、まともに行ったらどう頑張ってもひと月近くかかるでござる。

 でも、神降ろしの能力者なら、拙者を一瞬で西方まで飛ばせる者がいるかも知れないっ。


「た、たのもうっ! どなたか、いらっしゃらぬかっ! 助けてほしいでござるっ!」


 小さな家が並ぶ中心地、一つだけ一回り大きい家の門を叩く。


「なんだ、そのすでに滅びた古臭い東方なまりは?」


 中から声がしたと同時に門が開き、黒い衣装に身を包んだ隠密らしき女性が現れる。


「っ!? レ、レイア様っ!!」


 い、いや違う。見た目はそっくりだが、身体から流れる威圧感オーラが別物だ。

 コイツもまたサシャの偽物みたいにレイア様のフリをしているのかっ!?


「き、貴様、レイア様に化けて、何を企んでいるでござるっ!」

「ああ、レイアの知り合いか。紛らわしくて悪かったな。私はヨル。レイアの双子の妹だ」※

「な、なぬっ!?」


 た、確かによく見ればレイア様より少し目が吊り上がっているでござるっ! 


「こ、これは失礼したでござるっ! 最近、偽物事件が横行しており、また、まがいものかと思ったでござるよっ」

「うん、そうか。まあ誤解が解けてよかったよ。それじゃあ、気をつけて帰って……」

「待つでござるよぉぉっ!!」


 門を閉められそうになったので、慌てて、しゅぱぱっ、と滑り込む。


「拙者っ、レイア様の一番弟子ロッカと申す。西方に向かうつもりが、手違いで東方に来てしまったのでござるよっ!」

「お、おお、すごい方向音痴だな」

「ち、違うでござるっ、拙者、チョビ髭に嵌められたでござるよっ! と、とにかく、なんとか今日中に西方まで行かなければならないでござるっ! ヨル殿、神降しの力でなんとかしてほしいでござるよっ!」


 レイア様の双子の妹ならば、きっと有能な神を持っているでござる。一瞬で拙者を西方に飛ばすくらい、簡単に……


「あー、悪いな。私たちはもう神降しの一族ではないんだ。すでに引退して細々と暮らしている」

「へ?」

「レイアから聞いてなかったのか? 神降しの里、一族全員の神をレイアが奪っていったんだ。一度は全部返しもらったが、隠密生活が長かった私たちは神降しとの縁を断ち切り、平穏に暮らしていくことを選んだんだ」


 え? 全部奪っちゃったの? 

 で、また返しちゃったの?

 な、何をしているのでござるかっ、レイア様っ!

 このままでは拙者、西方に行けないでござるよっ!!


「だ、誰か一人くらい、神降しができる人、残ってはござらんのか?」

「ああ、今は全員、隠密として簡単な仕事しかしていない。どうしても神降しの力が必要なら、自分で神を降ろしてみてはどうだ?」


 え? 拙者が?? 神を???


「確か神降しの儀式は、生まれた頃から激しい修行をこなしてきた神降しの一族しか習得できなかったはず……」

「そうだな、つい最近までそうだったんだが、神降しの一族とまったく関係のない男が、簡単に神降しを習得した事例が確認された」

「なっ、本当でござるかっ!」


 それなら拙者にもできるかもしれない。

 拙者、自慢ではござらんが、そこいらの非凡な男になど、決して負けないでござるよっ。


「それなら早速、移動系の神様を降ろしたいでござるっ! よろしくお願いしてよろしいでござるかっ!」

「移動系なら韋駄天だな。全力で走れば、東方から西方まで1時間もかからないはず」

「おおっ、すごいでござるっ、ぜひ、その神様をお願いするでござるよっ!」


 レイア様はいくつもの神様をその身に宿していた。

 拙者も余裕があれば、二つ、三つ、降ろしてみるでござるか。


「それでは、サッサっとやってしまおう。あまねく八百万やおよろずの神々よ。我ら悠久のいにしえより使いし、巫女の果て…… えっと、なんだっけ? ま、いいか、とりあえず、この者に韋駄天の加護を与えたもう」

「最後、適当だったでござらんか?」

「そ、そんなことないぞっ、おっ、韋駄天が降りてきた。しっかり踏ん張れよっ」


 おおっ、これが、神降しでござるかっ!

 神々しく暖かい光のようなものが、キラキラと拙者に降り注いでいるっ!


『よいしょ、お邪魔しますよ』

「っ!? だ、誰でござるかっ!?」


 いきなり、目の前にスキンヘッドで筋肉ムキムキのオッサンが現れた。

 裸だと思ったが、かろうじてパンツ一枚だけ履いている。


「へ、変態がっ! ムキムキの変態が拙者に迫ってきているでござるよっ!」

「それが韋駄天だ。全てを受け入れろ」


 ええええっ!? す、全てを受け入れるーっっっ!?

 ちょっとまつでござるっ! 拙者が思っていた神様のイメージとまるで違うでござるっ!!


「ど、どう考えても質量的に無茶ではござらんかっ!?」

「神は物理的なものではないから、見た目の大きさは関係ないぞ」


 じゃあ、どこに入れるのでござるかっ!?


「この世界に存在する者はすべて、力を入れる為の器が存在している。皆、それぞれに容量は決まっていて、自分の器に見合った力を貯めていくことができるんだ。本来は、自らの力でいっぱいになり、神のような大きな力を入れる隙間などどこにもない。だから私たち神降しの一族は、その器を広げる為、血の滲むような修行を生まれた時からやってきたんだ」

「う、器っ!? そんなものが拙者の中にあるでござるかっ!!」

「ああ、今までに見たことがない異様な器だ。どうやったらこんな形になるんだ?」


 な、なんでござるとっ!! 

 拙者の器っ、そんな変なのでこざるかっ!? 


 身体の内部に集中すると、グネグネといびつに捻じ曲がった黒い器が見えた。 


 そこに、ぴちょん、と神の力が注がれる。


「ダメでござるっ! こぼれるでござるっ!!」

「ほう、見えるのか。力の器が」


 どうやったかはわからない。

 拙者の両手が身体の中に突然現れ、捻じ曲がった器を強引につかんで引き延ばした。

 ぐるぐると螺旋状になっていた器の入り口が大きく広がる。


「っ!? 器に直接、干渉した、だと!? お主、いったい……」


 こぼれかけていた神の力が、ギリギリで、たぷん、と波打つ。


 少しはみ出たままの韋駄天が、いい笑顔で、ぐっ、と親指をつき立てた。



※ レイアとヨルのエピソードは、小説版 一巻裏章① 「ヨルとレイア」に載ってます。よければご覧になってみてください。


『うちの弟子』漫画版2巻が、2022年11月8日(月)秋田書店様の少年チャンピオンコミックスから発売されました!


挿絵(By みてみん)


1巻に引き続き、小説版にはない面白さがさらに加速しています!

十豪会や大武会など物語も大きく動きます!

漫画版で躍動するタクミたちをぜひご覧になって見てください!

どうか、よろしくお願い致します!


挿絵(By みてみん)


WEBマンガサイト「マンガクロス」様でうちの弟子、漫画版最新話、掲載中!

第二部始まりました!

超絶に面白いので、みんな見てねー!


次回公開は6月27日火曜日予定です!


漫画版はなんと、あの内々けやき様に描いていただきました。

かなり素敵で面白い漫画になってますので、ぜひぜひ、ご覧になってみてください!!


第7回ネット小説大賞受賞作「うちの弟子がいつのまにか人類最強になっていて、なんの才能もない師匠の俺が、それを超える宇宙最強に誤認定されている件について」


コミカライズ連載がマンガクロス(https://mangacross.jp/)にて3/30(火)よりスタート!!


WEB版で興味を持って頂いた方、よかったら漫画版もご覧になってみて下さい!


またWEB版と書籍版もだいぶ変わっています!


一巻は追加エピソード裏章を多数追加。

タクミ視点では書き切れなかったお話を裏章として、五話ほど追加しており、レイアやアリス、ヌルハチやカルナの前日譚など書き下ろし満載でございます。


二巻は全編がかなり変更されており、さらに裏章も追加されてます!

WEB版では活躍が少なかったマキナや、出番のなかった古代龍エンシェントドラゴンの活躍が増えたり、タクミとリンデンの幼い頃のお話や、本編でいつもカットされているレイアの活躍が書かれています。


書籍版も是非、よろしくお願い致します!



挿絵(By みてみん)

⬇︎下の方にある書報から二巻の購入も出来ます。⬇︎


これから応援してみよう、という優しいお方、下のほうにあるブックマークと「☆☆☆☆☆」での応援よろしくお願いします!

すでにされている方、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.


茄子炒め 様から素敵なレビューを頂きました。

いつも応援ありがとうございます!

言葉にならないほど感謝しています!


感想も、どしどしお待ちしています!

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[一言] これ超兄貴に出てくるアドンとサムソン?w
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