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二百十二話 タクミポイント、再び

 

「タクミポイントが残っている?」


 朝ご飯を作っていたら、緊急用の通信機器を通じてリックから連絡があった。

 携帯電話と呼ばれるその機械は、向こうの世界では電波を飛ばして離れた距離にいても通話できるものらしいが、こっちではなんか魔法で繋がってるらしい。


「あれって、大草原の戦いの後、リックがすべての国のポイントを回収して廃止にしなかった?」

『ああ、元々タクミポイントシステムは、俺が提案して作らせたものだ。騒動が終わって、東西南北すべての国のポイントを回収して収束したつもりだったんだが ……サシャが持っていたポイントだけ、全部使いきったと思って未回収だったんだ』


 ああ、そういえば世間にはサシャが俺との結婚に大量にポイントを使っていたことになっていたな。


 あれ? サシャってその後も俺のフリをしたアザトースと結婚して別れてるから、バツ2って事?

 うん、触れてはいけない。黙っておこう。


「でもあれだろ? あれってアリスが管理していたし、ポイントが残っていても使えないんじゃないの?」

『いや、アリスは管理している様に見せていただけで、実質は複雑なシステムで管理されている。東方の神降ろしに似た力に、南方のデウス博士が科学的な技術を導入して、西方の魔法使いが最終処理をしたものだ』


 うん、なんでそんなに大袈裟にしちゃったの? タクミポイント。


「つまり、サシャがタクミポイントを俺に使ってきたら」

『うむ、逃れるすべがないということだ』


 俺が描いた円の中で、くが〜〜、と三角座りしながら器用に寝ているロッカの方を見る。

 まずいな。サシャがポイントを何に使うかによって、望まむ争いが生まれそうだ。


「そ、そのタクミポイント、リックのほうでこっそり処理できないか?」

『サシャだけならなんとかなったかもしれないが、どうやらポイントはヌルハチも使えるらしい。すまないが弱体化している今の俺では、到底敵わない』


 えっ? ヌルハチも使えるのっ!?

 い、いやな予感が止まらないっ!!


『俺のほうは休暇をもらって、南方のデウス博士を尋ねてみる。おそらくタクミポイントシステムの停止方法を知っているはずだ。タクミはそれまでの間、サシャとヌルハチから逃げて…… あっ』

「ど、どうした? リックっ!?」

『ちょっ、ちょっと待てっ! ヌルハっ! 城の中でそんな魔法をっ!!』

「リックっ、リックっ、大丈夫かっ!?」

『ウン、タクミ、ボク、ダイジョウブ、ダヨ』


 絶対大丈夫じゃないよねっ!?

 や、やばいっ、すぐにきちゃうぞ、サシャとヌルハチ。


「ロッカっ! 起きてくれっ! 移動するっ!」

「むにゃ、ご飯ですかぁ? 動けないのでぇ、あーんしてください、あーん」


 寝ぼけて大口を空けているロッカの口に、作りかけのおむすびを放り込む。


「シン絶対タクミ円環(サークル)は解除したっ! 早く準備してくれっ!」

「むぐむぐ、こ、このおむすびはっ、食べる位置によって具が違うっ! たらこ、おかか、しゃけがそれぞれ三角形の頂点にあり、真ん中に梅干しまでっ、ああっ、ちゃんと米にまで隠し味がっ!?」

「い、今、その感想いいからっ! 急いでっ、お願いっ!!」

「むっ、タクみんっ、神速転移反応がっ!」


 キュイーン、と目の前に光の渦が現れ、それが人の形に変わっていく。


「ま、間に合わなかった」

「大賢者っ、いや、これは反応が三つっ」


 さ、最悪だ。

 ヌルハチだけではなく、サシャまで一緒に転送してきたのか?

 だとするとあと一人はっ!?


「お久しぶりでございます、タクミ様」

「ナ、ナナシンさんっ!」


 黒い執事服を着たメガネの青年が、サシャとヌルハチと共に現れる。


「我が主人、サリア王女と初代女王ヌルハチ様がタクミポイントの交換に参りました。手続きをお願いしたい」

「い、いや手続きと言われても……」


 確か前はレイアがアリスに報告して、受付を行っていたはずだ。


「ポイントで何をするのか俺はまったく知らないんだ。だから、この件はアリスが戻ってから……」

「ご心配には及びません。こちらにタクミポイントで交換できる、すべての事項が記載されておりますゆえ」


 分厚い辞書のようなカタログを取り出すナナシンさん。


 こ、こんなにページあるの?

 これって全部、俺がやることだよね? 


「ちょっと見せてくださいっ、えっ、な、なんですか、これっ! こ、こんなことまでっ!! ちょっ、これって、18歳以下禁止の項目があるじゃないですかっ!! 拙者、どうすればいいのでござるかっ!?」

「うん、ロッカはポイントないから関係ないよ」

「はっ、そ、そうだったっ! い、いけない、あまりに魅力的な項目に、冷静さを失ってしまったっ!!」


 名残惜しそうにジト目で見ながら、ナナシンさんにカタログを返すロッカ。

 何が書いてあるのか、俺は怖くて確認できない。


「と、とにかくっ、タクみんにこんな羨ましい、い、いや破廉恥なことはさせられませんっ! どうしてもというなら、拙者を倒してからにするがよいっ!!」


 バスターソードを抜いて、サシャとヌルハチを睨みつけるロッカ。


「残念ですが、その必要はございません。タクミポイントを使ってしまえば、タクミ様は絶対にその通りにしなければならない呪いにかかっていますので」


 へ? の、呪い? 

 俺、呪いにかけられてたの? 

 確か、リックが西方の魔法使いが最終処理をしたと言ってたけど……


「それでは、まずはサリア様から……」


 かつて断崖の王女(シアクリフリリー)と呼ばれていた、行き遅れ王女が、怪しい笑みを浮かべて、最初の願いを口にした。


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― 新着の感想 ―
[一言] いつの間にかサシャの扱いがひどいことにw
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