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サシャとヌルハチ

昨日小説家になろう様がメンテナンスだったため、本日の更新になりました。申し訳ありません。

 

「なんなのっ! あのアリスの小型みたいな小娘っ! ようやくタクミと運命の再会ができると思ったのにっ! 許せないっ、絶対に許せないわっ!!」


 ボルト山に張っていた結界が破壊されたので、タクミの元へ飛んでいったら、ルシア王国騎士団が、ロッカという小娘一人に壊滅かいめつさせられていた。

 ルシア王城に戻ったサシャは、王室の玉座をガシガシ蹴りながら癇癪かんしゃくを起こしている。


「ヌルハチっ、あの小娘っ、ルシア王国に宣戦布告したわよっ、これは国を挙げて、討伐しないといけないわっ!!」

「ま、まあ、落ち着け、サシャ」


 かつて偽装とはいえ、タクミと結婚して逃げられたサシャは、国民からの人望をすっかり失っている。

 ここで小娘一人のために戦争を仕掛け、負けるようなことがあれば、ルシア王国は崩壊するだろう。


「まずは、あの小娘が何者か知ることが先決じゃ。レイアの弟子で北方出身いう情報は入っておるが、わかっておるのはそれぐらいだからの」

「むぅ」


 子供のように頬を膨らませて、拗ねるサシャ。

 いつもは厳格な王女として振る舞っておるが、相変わらずタクミのことになると、冷静ではいられない。


「……しかし、あの結界。アリスですら簡単には破れないはずなんじゃが」


 バルバロイから伝授された四神柱の結界は、ヌルハチの魔法でさらに強化を施し、以前よりもかなり強固なものとして進化させた。

 たとえ、宇宙最強の力を持ってしても、完全破壊には数日を要するはずじゃったが……


「あの子、本当にアリスの子供じゃないの? 金髪だったし」

「計算があわんじゃろ。アリスが5歳の時に産んだことになるぞ」


 だいたいアリスがタクミ以外の者と結ばれるとは思えない。

 タクミが今だに童貞であることは、遠隔鑑定魔法で毎日ちゃんとチェックしておる。


「じゃあ、なんなのっ、あの馬鹿げた力っ! 騎士団長に出戻りしたリックでさえ、何もできずに瞬殺されたわよっ!」

「しらんっ! だが只者ではないっ、ヌルハチの魔法を素手で弾き返しおったわっ!」

「いいわっ、ルシア王国だけで勝てないなら、ギルドにも手伝ってもらうわっ、そうだっ、ほかの国にもっ、東西南北全部で協力すれば、さすがに倒せるんじゃないかしらっ!!」


 ま、まずい、止めたら余計におおごとになってしまった。


「ま、待つんじゃ。そんな世界大戦みたいなことを起こしたら、タクミに嫌われてしまうぞっ!」

「そんなことないわっ! タクミもきっとあの小娘から離れたいはずよっ!」


 本当にそうじゃろうか?

 新しい弟子がやって来たことをタクミは、受け入れていたように見えた。


「あとはそうね。タクミ村の武器商人に出来る限りの魔装備を用意させてっ、さらに魔王と四天王にも声をかけなくちゃ」


 本格的にまずい。

 ルシア王国どころか、下手すりゃ世界が終わってしまう。

 いっそ、ヌルハチが再びルシア王国の実権を握ってやろうか。

 いや、まてよ。


「そういえば、昔集めたタクミポイントが残っておったんじゃないのか?」

「えっ!?」


 各国がこぞって集めていたタクミの権利を自由に出来るポイント制度。

 サシャはルシア王国の国民総出で100億ポイントをかき集め、タクミとの結婚を偽装しようとした。


「結局あれ、最後まで使わんかったじゃろ。今はポイントを貯めることはできんが、有効期限がないのなら、残ったポイントをうまく利用できんか?」


 サシャが胸元をごそごそとまさぐり、タクミポイントカードを取り出す。


「な、ないわ、有効期限。まだ50億くらい残ってるっ」

「ふむ、それでしばらくタクミと一緒にいれるじゃろう。その間にあの小娘の弱点でも調べて...」

「ナナシンっ! ナナシンっ、すぐにきてっ!!」

「はっ、サリア様、ここに」


 素早く登場したナナシンが胸に手を当ててお辞儀する。


「ナナシン、タクミと結婚できるポイントは何ポイントだったっ?」

「はい、56億7千万タクミポイントです、サリア様」

「ちっ、ギリギリ足りないっ」


 あ、危ない。

 前は偽装とか言って結婚には使わなかったのに、アラフォーになって手段を選ばなくなってきとるっ。


「確か、一日お泊まり券が1億タクミポイントだったわよね。でもそれだけじゃ進展しないわ。ナナシン、なにか、劇的に関係が発展する特典はないかしら」

「はっ、お調べ致します」


 分厚い辞書のような本を取り出して、パラパラとめくり出すナナシン。


「いや、お泊まり券でいいじゃろう。目的はロッカという小娘を調べることで……」

「ヌルハチは黙っててっ!!」


 あ、圧がすごいっ!

 大賢者ヌルハチともあろうものが、思わず一歩下がってしもうたっ!


「サリア様、この10億ポイントで交換できる、一緒にお風呂に入れる券などは如何でしょうか? 一気にタクミ様の気を引くことが出来ると思いますが」

「え? そ、そんな、結婚前の男女が一緒にお風呂に入るなんて、は、はしたないと思われないかしらっ」

「いえ、それが逆にいいのですよ、サリア様」

「逆に?」

「逆にっ!!」


 い、いかんっ、これはこれで大ピンチじゃ。


「ナナシンっ、そのタクミポイント、ルシア王国で集めたものじゃったなっ、初代女王のわしにもポイントの権利はあるのではないかっ」

「はっ、たしかにヌルハチ様にも三割ほどのポイントを使える権利がございます。現在のポイントではなく、100億の時から換算されますので、30億ポイント使用可能となります」

「ちょっと、まってよっ! 私より多くなっちゃうじゃないっ! やめてよ、ヌルハチっ!」


 やめるわけがなかろうがっ!

 うひひ、これでヌルハチもタクミとお風呂に……


「はっ、違ったっ、小娘の弱点を探るんじゃったっ」


 数年ぶりに巻き起こるタクミポイント騒動。

 まさか、それがあんな大事件に発展するとは、この時は思いもよらなかった。




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