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カルナとクロエ

 

「なんなんっ! あのアリスの小型版みたいな奴っ! せっかく久しぶりにタッくんに会えるチャンスやったのにっ! むかつくっ、めっちゃむかつくっ!!」


 ボルト山に張られていたヌルハチの結界が壊れたので、カル姉と二人で飛んでいったら、レイアの弟子のロッカという小娘にボッコボコに撃退された。

 カル姉はエメラルド鉱石で囲まれた大鍾乳洞に帰るなり、そこら中にあるものを投げて暴れている。

 古代龍エンシェントドラゴンのじいちゃんがいたら、怒られるとこだが、向こうの世界に行ったきり、いまだ帰ってこない。


「くーちゃん、アイツうちらに喧嘩売ってきたでっ! これはもう一族のプライドにかけて、黒龍ブラックドラゴン族総出で、やっつけにいかなあかんとおもうねんっ!!」

「ちょ、ちょっと落ち着こ、カル姉っ」


 魔剣ソウルイーターによる封印は、じいちゃんがいなくなったことで弱まっていき、カル姉はあっさりと脱出に成功してしまった。


 実質、じいちゃん以外にカル姉を止めれる者は黒龍ブラックドラゴン一族には存在しない。

 言いたい放題、やりたい放題。

 だんだんと昔のヤンチャだった頃のカル姉に戻っていってる。


「せっかく、せっかく元に戻れたのにっ! 魔剣の時はそばにおってもなんもできへんかったけど、この姿なら、あんなことや、こんなこと、もう恥ずかしくて口にできへんようなことも、できるねんでっ!!」


 あ、あかん、このままほっといたら、エライことになってしまう。


「と、とりあえず、もう一度、今度は人間の姿で行ってみよ。ドラゴン形態で行くから警戒されたんかもしれんわ」

「ほんまか? あいつ、なんかウチらのこと知ってるみたいやったで。けがらわしい黒トカゲめ、とか言うてへんかった?」


 ……おそらくレイアの入れ知恵だ。

 あの金髪小娘に、タクミ殿に近づく女をすべて排除するように言い聞かせているのだろう。


 ダ、ダメだっ、このまま放っておいたら、黒龍ブラックドラゴン一族を巻き込んだ大戦争に発展するっ!


「い、いやいや、きっと聞き違いやって、タクミ殿に敵対する悪いドラゴンと勘違いされたんやわ、きっと」

「ほんまに? タッくん、うちらに気づいてへんかった?」

「ひ、久しぶりやったから、ちょっとわからんかったんちゃうかなぁ」


 タクミ殿めっちゃ気付いてた。

 後ろのほうで、早く逃げてって何度もジェスチャー送ってた。

 どうやら、あの金髪小娘、タクミ殿でも制御できへんみたいや。


「そ、そうやっ、せっかく人間形態になってんから、次は二人でおめかしして行こうやっ、タクミ殿も喜ぶってっ」

「……おめかし? 人間の服着るん? なんや、ちょっと新鮮やな」


 お、のってきた。チョロいところは変わってない。


「魔剣ソウルイーターをレイアに預けた時、東方の着物をいくつか貰ったやん。あれを着て行ったら、きっとタクミ殿もイチコロやって」

「あ、あれか。なんか帯とかあって着るの面倒やなかった? くーちゃん、あんなん、ちゃんと着れるん?」


 う、た、確かに。着付けが面倒で一度も試してなかった。


「だ、大丈夫っ、あんなん、カル姉のセンスで自由に着こなせばいいねんっ、オリジナリティにあふれてて、逆に素敵になるはずやっ!」

「逆に?」

「逆にっ!!」


 なんとか強引に押し切って、大鍾乳洞の奥から大量の着物を取ってくる。


「なになに、こんなに貰ってたんっ!?」

「うん、あの魔剣にはそれくらいの価値があるらしいで。さあさあ、とにかく着てみよっ」


 気が変わらないうちにやってしまわねばっ!

 着たらとにかくベタ褒めしてのせていくっ!


「あれ? これ裏表反対やない?」

「いや、カル姉っ、それも逆にビューティフルっ!」

「ほ、ほんまにっ!そ、そんな逆ばっかりでいいんっ!?」


 や、やばい、裏表なんかより思った以上に着物が似合わない。

 これは、本当に普通に着るより、めちゃくちゃ着るほうがいいのかも。


「ほら、カル姉っ、東方の姫は十二単衣じゅうにひとえっていうて、たくさんの着物を重ねるそうやでっ! 真似してみよっ!」

「え? そんなに着たら動きにくない?」


 なにかあった時、暴れにくいし、もってこいや。


「あっ、化粧もせな、東方では白粉おしろいというて、顔を白く塗るのが流行ってるらしいでっ!」

「う、うちら黒龍ブラックドラゴンやのにっ! し、白なってええのんっ!?」

「ええどすっ、タクミ殿もギャップ萌えどすっ」

「なに? どすってなにっ!? こわいっ、くーちゃんっ、ちょっとっ、うちの顔パタパタするのやめてっ!!」


 うん、これなら多少はマシに……な、ならへんな。

 ま、まあいいか。きっとタクミ殿なら、そんなに酷いことは言わんはずや。


「さ、さすがカル姉っ、東方の着物がここまで似合うとはっ! きっとタクミ殿もメロメロっ!!」

「ほ、ほんまにっ!? なんか、向こうの世界行ったときに見た、チクショー、って叫ぶ人に似てる気がするねんけど」

「きっとその人も、絶世の美女やったんやろなっ!」

「いや男やったで」


 ち、ちくしょー。 


「と、とにかく行こっ! きっと大丈夫やっ! タクミ殿にあんなことやこんなこと、やってまおっ!!」

「そっかっ、いけるかっ! よっしゃ、くーちゃんにもパタパタしたるなっ!!」



 数日後。

 前回よりも警戒されて、再びロッカにボコられる。


 ボルト山を着物白塗妖怪姉妹が挽回はいかいしているという噂が流れ出したのは、また別のお話。



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