完話 アリスとラスボス
今年一年うちの弟子をご愛読、ありがとうございます。
今年最後の完話になります。どうぞお楽しみ下さい。
『あれ? これで終わり? 完とかENDマークないけど』
『うん、一応終わりだけど、真エンドじゃないよ。全部のイベントやアイテムをコンプリートをしないとたどり着けない、隠しエンディングがあるんだ』
『うわ、けっこう長かったのに、また最初からかよっ』
『大丈夫、裏技を使えば、ほら途中から……』
子供たちの声が聞こえて目が覚める。
夢だったのか。現実だったのか。
急速に記憶が薄れていき、それを判断することもままならない。
たが、その声はあの時と同じ。
遠い遠い、宇宙最強の力でも探知できないような、永遠の場所から聞こえてきた気がする。
「すぐ近く、なのに永遠に届かない」
この世界ではないどこかに高次元の存在がいる。
タクミに宇宙最強の力を返せなかった、あの日からワタシはずっと、その存在を探していた。
「高次元の存在? 創造神や大精霊ではないのか?」
レイアに聖剣を授けた東方最強と呼ばれる仙人を訪れる。※
「違います。そんな次元ではない上位。『彼女』やアザトースですら創造したかもしれない者達です」
「……ふむ」
仙人がゆっくりした動きで、住んでいる小屋から何かを持ってきた。
「これは?」
「双六という東方のゲームじゃ。サイコロを振って駒を進めゴールを目指す遊びじゃが、途中のマス目には、モンスターがいたり、宝箱があったり、様々なイベントをクリアしてあがりを目指すというもんじゃ」
仙人がサイコロを振ると6の数字で止まり、しわくちゃの手で人の形をした木駒をつまみ、6マス先のマス目に駒を置く。
「わしらはこの駒のようなものじゃよ。そして、その高位の存在もまた同じじゃ。わしらを作った者たちも誰かに作られ、またその誰かも誰かに作られた。果てなどない。宇宙と同じで、どこまでもどこまでも繋がっていく」
「……永遠の場所、か」
宇宙最強の力を使いこなすことで、その場所を感じることができたのか?
「難しいことは考えんでええ。わしらがそこに行くこともなければ、その者達がここに来ることもない。双六の駒がわしらを認識できないように、そんなもんは知らんぷりしとったらええんじゃ」
確かに東方仙人の言う通りかもしれない。
だが、そんな者達が存在するならば。
この世界を双六のような、ただの遊びだと思っているなら。
新たな敵を登場させて、またタクミに被害が及ぶかもしれない。
「そこに行けなくとも、注意ぐらいはしてやりたいんです。これ以上余計なことをしたら、承知しないぞ、と」
「神にサイコロを振るなというのか。ふぉふぉふぉ、それはお前さんにしか、言えないセリフじゃな」
東方仙人がボルト山のほうに首を動かす。
「でもいいのかのう。お前さんがそんなことをしとる間に、またあの男にいろんなものが近づいとるぞ。……本当はすぐ側で、ただ一緒にいるだけでよいのではないか?」
レイアの弟子のロッカか。
あの金髪は、宇宙最強の力を浴びたワタシと同じものだ。
たった一つしかない、この力と一体どこで遭遇したのか。
「……いいんだ。それはワタシじゃない他の誰かでも。タクミが幸せになれたら、ワタシはそれを見ているだけでいい」
そう、それだけでいい。
「じゃ、話ありがとう。本当はそんなこと、話してはいけないんだろう?」
「……知っておったのか。わしが何者か」
あちら側でもこちら側でもない。
どちらにも立たたず、この世界を飽きさせないように廻している。東方仙人は、この世界で唯一、違う空気をまとっていた。
「いつか、本当に辿りつけるかもしれんな。だが気をつけたほうがええぞ。お前さんのゲームバランスは壊れておる。目をつけられたら、この世界から永遠に排除されるやもしれん」
「お気遣い、感謝する」
大丈夫。
ワタシが消えても変わりはいるもの。
今はただ、この世界を遊んでいる者たちに。
なにか一つでも、爪痕を刻み込んでやる。
『おおっ、これかっ、これが真のラスボスかっ!?』
『そうだっ! 頑張ったなっ! オールイベントコンプリートのトロフィー1%以下だぜっ! クリアしてるやつなんてほとんどいないぞっ!』
聞こえてきた。
今度は夢じゃない。
はっきりとわかる。
『くぅ、まったく、攻略サイトでしらべなかったら絶対辿り着かなかったよっ!』
『いいから、早く剣を捨てろっ、そのキャラ、素手のほうが強いんだからっ!!』
『やってるよっ! でも捨てられないんだって! くそっ、これ、バグなんじゃないかっ!?』
タクミから貰った真・聖剣タクミカリバーを捨てるわけがないだろう。
『ちょっ、なんでっ!? 動かないよっ! レバーいれてるのにっ!!』
『えっ、まって、なんかこのキャラ、こっちを……』
プレイヤーキャラは、無意識のうちに、自分でも気が付かないうちに、サイコロを振られたように、上位の存在に操られている。
だけど、ワタシにはもう通用しない。
タクミから力を貰ったワタシは、お前たちから解放された。
見えない何かに逆らうように、ギギギ、と首を後ろに反転する。
『ひっ、こっち見たっ! ボクらのほうを見たよっ!! このキャラクターっ!!』
『うわぁあああああああああっ、呪われてるっ! このゲーム呪われてるよっ!!』
小さなボタンのついた機械を放り出して逃げていったのは、どこにでもいる二人の少年達だった。
「これでいい、これでもう、誰にも邪魔されない」
反転させた首を戻し、再び真のラスボスに向き直る。
紅いマントを羽織り、玉座に座ったその姿は上半身が影に覆われ、正体がわからない。
でもワタシは、ずっと前からその正体に気がついていた。
【サア ハジメヨウカ アリス】
声ではなく、それはテロップで頭に浮かんだ。
今のワタシの力を全部ぶつけても壊れない、唯一の存在がそこにいる。
「参る」
嬉しさのあまり、抱きつきたくなるのを我慢して。
一直線に、真っ正面から、突き進む。
「やっぱり、アナタだった」
「よくわかったな、その通りだ」
※ 東方仙人初登場は、書籍版一巻裏章 アリスとレイアになります。さらに書籍版二巻の終わりにも登場しておりますので、興味がある方は、よかったらご覧になってください。宣伝ではございませんf^_^;
お待たせ致しました!
『うちの弟子』漫画版2巻が、11月8日(月)秋田書店様の少年チャンピオンコミックスから発売されました!
1巻に引き続き、小説版にはない面白さがさらに加速しています!
十豪会や大武会など物語も大きく動きます!
漫画版で躍動するタクミたちをぜひご覧になって見てください!
どうか、よろしくお願い致します!
WEBマンガサイト「マンガクロス」様でうちの弟子、漫画版最新話、掲載中!
新章突入で、タクミポイント制度が始まるよ!
超絶に面白いので、みんな見てねー!
次回公開は1月31日火曜日予定です!
漫画版はなんと、あの内々けやき様に描いていただきました。
かなり素敵で面白い漫画になってますので、ぜひぜひ、ご覧になってみてください!!
第7回ネット小説大賞受賞作「うちの弟子がいつのまにか人類最強になっていて、なんの才能もない師匠の俺が、それを超える宇宙最強に誤認定されている件について」
コミカライズ連載がマンガクロス(https://mangacross.jp/)にて3/30(火)よりスタート!!
WEB版で興味を持って頂いた方、よかったら漫画版もご覧になってみて下さい!
またWEB版と書籍版もだいぶ変わっています!
一巻は追加エピソード裏章を多数追加。
タクミ視点では書き切れなかったお話を裏章として、五話ほど追加しており、レイアやアリス、ヌルハチやカルナの前日譚など書き下ろし満載でございます。
二巻は全編がかなり変更されており、さらに裏章も追加されてます!
WEB版では活躍が少なかったマキナや、出番のなかった古代龍の活躍が増えたり、タクミとリンデンの幼い頃のお話や、本編でいつもカットされているレイアの活躍が書かれています。
書籍版も是非、よろしくお願い致します!
⬇︎下の方にある書報から二巻の購入も出来ます。⬇︎
これから応援してみよう、という優しいお方、下のほうにあるブックマークと「☆☆☆☆☆」での応援よろしくお願いします!
すでにされている方、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
茄子炒め 様から素敵なレビューを頂きました。
いつも応援ありがとうございます!
言葉にならないほど感謝しています!
感想も、どしどしお待ちしています!




