表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
272/420

完話 アリスとラスボス

今年一年うちの弟子をご愛読、ありがとうございます。

今年最後の完話になります。どうぞお楽しみ下さい。

 

『あれ? これで終わり? 完とかENDマークないけど』

『うん、一応終わりだけど、真エンドじゃないよ。全部のイベントやアイテムをコンプリートをしないとたどり着けない、隠しエンディングがあるんだ』

『うわ、けっこう長かったのに、また最初からかよっ』

『大丈夫、裏技を使えば、ほら途中から……』



 子供たちの声が聞こえて目が覚める。

 夢だったのか。現実だったのか。

 急速に記憶が薄れていき、それを判断することもままならない。


 たが、その声はあの時と同じ。

 遠い遠い、宇宙最強の力でも探知できないような、永遠の場所から聞こえてきた気がする。


「すぐ近く、なのに永遠に届かない」


 この世界ではないどこかに高次元の存在がいる。

 タクミに宇宙最強の力を返せなかった、あの日からワタシはずっと、その存在を探していた。



「高次元の存在? 創造神や大精霊ではないのか?」


 レイアに聖剣を授けた東方最強と呼ばれる仙人を訪れる。※


「違います。そんな次元ではない上位。『彼女』やアザトースですら創造したかもしれない者達です」

「……ふむ」


 仙人がゆっくりした動きで、住んでいる小屋から何かを持ってきた。


「これは?」

双六すごろくという東方のゲームじゃ。サイコロを振って駒を進めゴールを目指す遊びじゃが、途中のマス目には、モンスターがいたり、宝箱があったり、様々なイベントをクリアしてあがりを目指すというもんじゃ」


 仙人がサイコロを振ると6の数字で止まり、しわくちゃの手で人の形をした木駒をつまみ、6マス先のマス目に駒を置く。


「わしらはこの駒のようなものじゃよ。そして、その高位の存在もまた同じじゃ。わしらを作った者たちも誰かに作られ、またその誰かも誰かに作られた。果てなどない。宇宙と同じで、どこまでもどこまでも繋がっていく」

「……永遠の場所、か」


 宇宙最強の力を使いこなすことで、その場所を感じることができたのか?


「難しいことは考えんでええ。わしらがそこに行くこともなければ、その者達がここに来ることもない。双六の駒がわしらを認識できないように、そんなもんは知らんぷりしとったらええんじゃ」


 確かに東方仙人の言う通りかもしれない。

 だが、そんな者達が存在するならば。

 この世界を双六のような、ただの遊びだと思っているなら。

 新たな敵を登場させて、またタクミに被害が及ぶかもしれない。


「そこに行けなくとも、注意ぐらいはしてやりたいんです。これ以上余計なことをしたら、承知しないぞ、と」

「神にサイコロを振るなというのか。ふぉふぉふぉ、それはお前さんにしか、言えないセリフじゃな」


 東方仙人がボルト山のほうに首を動かす。


「でもいいのかのう。お前さんがそんなことをしとる間に、またあの男にいろんなものが近づいとるぞ。……本当はすぐ側で、ただ一緒にいるだけでよいのではないか?」


 レイアの弟子のロッカか。

 あの金髪は、宇宙最強の力を浴びたワタシと同じものだ。

 たった一つしかない、この力と一体どこで遭遇したのか。


「……いいんだ。それはワタシじゃない他の誰かでも。タクミが幸せになれたら、ワタシはそれを見ているだけでいい」


 そう、それだけでいい。


「じゃ、話ありがとう。本当はそんなこと、話してはいけないんだろう?」

「……知っておったのか。わしが何者か」


 あちら側でもこちら側でもない。

 どちらにも立たたず、この世界を飽きさせないように廻している。東方仙人は、この世界で唯一、違う空気をまとっていた。


「いつか、本当に辿りつけるかもしれんな。だが気をつけたほうがええぞ。お前さんのゲームバランスは壊れておる。目をつけられたら、この世界から永遠に排除されるやもしれん」

「お気遣い、感謝する」


 大丈夫。

 ワタシが消えても変わりはいるもの。

 今はただ、この世界を遊んでいる者たちに。

 なにか一つでも、爪痕を刻み込んでやる。



『おおっ、これかっ、これが真のラスボスかっ!?』

『そうだっ! 頑張ったなっ! オールイベントコンプリートのトロフィー1%以下だぜっ! クリアしてるやつなんてほとんどいないぞっ!』


 聞こえてきた。

 今度は夢じゃない。

 はっきりとわかる。


『くぅ、まったく、攻略サイトでしらべなかったら絶対辿り着かなかったよっ!』

『いいから、早く剣を捨てろっ、そのキャラ、素手のほうが強いんだからっ!!』

『やってるよっ! でも捨てられないんだって! くそっ、これ、バグなんじゃないかっ!?』


 タクミから貰った真・聖剣タクミカリバーを捨てるわけがないだろう。


『ちょっ、なんでっ!? 動かないよっ! レバーいれてるのにっ!!』

『えっ、まって、なんかこのキャラ、こっちを……』


 プレイヤーキャラは、無意識のうちに、自分でも気が付かないうちに、サイコロを振られたように、上位の存在に操られている。


 だけど、ワタシにはもう通用しない。

 タクミから力を貰ったワタシは、お前たちから解放された。

 見えない何かに逆らうように、ギギギ、と首を後ろに反転する。


『ひっ、こっち見たっ! ボクらのほうを見たよっ!! このキャラクターっ!!』

『うわぁあああああああああっ、呪われてるっ! このゲーム呪われてるよっ!!』


 小さなボタンのついた機械を放り出して逃げていったのは、どこにでもいる二人の少年達だった。


「これでいい、これでもう、誰にも邪魔されない」


 反転させた首を戻し、再び真のラスボスに向き直る。

 紅いマントを羽織り、玉座に座ったその姿は上半身が影に覆われ、正体がわからない。


 でもワタシは、ずっと前からその正体に気がついていた。


【サア ハジメヨウカ アリス】


 声ではなく、それはテロップで頭に浮かんだ。

 今のワタシの力を全部ぶつけても壊れない、唯一の存在がそこにいる。


「参る」


 嬉しさのあまり、抱きつきたくなるのを我慢して。

 一直線に、真っ正面から、突き進む。



「やっぱり、アナタだった」


「よくわかったな、その通りだ」


※ 東方仙人初登場は、書籍版一巻裏章 アリスとレイアになります。さらに書籍版二巻の終わりにも登場しておりますので、興味がある方は、よかったらご覧になってください。宣伝ではございませんf^_^;




お待たせ致しました!

『うちの弟子』漫画版2巻が、11月8日(月)秋田書店様の少年チャンピオンコミックスから発売されました!


挿絵(By みてみん)


1巻に引き続き、小説版にはない面白さがさらに加速しています!

十豪会や大武会など物語も大きく動きます!

漫画版で躍動するタクミたちをぜひご覧になって見てください!

どうか、よろしくお願い致します!


挿絵(By みてみん)


WEBマンガサイト「マンガクロス」様でうちの弟子、漫画版最新話、掲載中!

新章突入で、タクミポイント制度が始まるよ!

超絶に面白いので、みんな見てねー!


次回公開は1月31日火曜日予定です!


漫画版はなんと、あの内々けやき様に描いていただきました。

かなり素敵で面白い漫画になってますので、ぜひぜひ、ご覧になってみてください!!


第7回ネット小説大賞受賞作「うちの弟子がいつのまにか人類最強になっていて、なんの才能もない師匠の俺が、それを超える宇宙最強に誤認定されている件について」


コミカライズ連載がマンガクロス(https://mangacross.jp/)にて3/30(火)よりスタート!!


WEB版で興味を持って頂いた方、よかったら漫画版もご覧になってみて下さい!


またWEB版と書籍版もだいぶ変わっています!


一巻は追加エピソード裏章を多数追加。

タクミ視点では書き切れなかったお話を裏章として、五話ほど追加しており、レイアやアリス、ヌルハチやカルナの前日譚など書き下ろし満載でございます。


二巻は全編がかなり変更されており、さらに裏章も追加されてます!

WEB版では活躍が少なかったマキナや、出番のなかった古代龍エンシェントドラゴンの活躍が増えたり、タクミとリンデンの幼い頃のお話や、本編でいつもカットされているレイアの活躍が書かれています。


書籍版も是非、よろしくお願い致します!



挿絵(By みてみん)

⬇︎下の方にある書報から二巻の購入も出来ます。⬇︎


これから応援してみよう、という優しいお方、下のほうにあるブックマークと「☆☆☆☆☆」での応援よろしくお願いします!

すでにされている方、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.


茄子炒め 様から素敵なレビューを頂きました。

いつも応援ありがとうございます!

言葉にならないほど感謝しています!


感想も、どしどしお待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マギみたいな世界構造だったのか……
[一言] なるほど、この世界なかなか複雑な世界構造になっていたのですね。 なんかアザートスがかわいそうになってきましたw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ