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百五十九話 彼女

 

「だから、おっきくなってたんですよっ! レイアがっ! どれくらい? わかりませんよっ! いっぱいですっ!」


 ボロボロの姿で、ルシア王城にカミラが帰ってきた。

 コウモリの羽が半分千切れて見るも無惨な姿になっている。


「ばちんっ、て。蚊のようにばちんっ、て叩かれたんですよっ、もう、嫌です。私、お家帰りたいですっ」

「お、落ち着け、カミラ。す、少し休んでだな。そうだ。長期休暇を許可しよう」 

「嫌ですっ、もう辞めますっ、帰してくださいっ」


 さすがのアザトースも、あたふたしてはる。

 仕方あらへん。

 こっちはこっちで、大忙しやったからな。


「う、うむ。できればその望み叶えてやりたいのだがな。それもできなくなった」

「え?」

「異世界と現実世界を繋ぐターミナルが破壊された。システムが復旧しない限り、我々は帰ることができない」

「う、うそでしょ」


 どしゃっ、と力なく崩れ落ち、そのまま動かなくなるカミラ。

 アザトースは、腰に帯刀しているうちを見て、話しかける。


「……おそらく、匠弥タクミがやったのだろう。異世界にいながら、どのようにしてそんな真似ができたのか。まったく、軽々と想像以上のことをやってのける」


 いやいや、タッくん、そんなんできへんよ。

 ちょっと嬉しそうに語るアザトースに、ツッコミをいれたいが、黙っとく。

 このままタッくんにビビってるほうが色々うまいこといきそうや。


「……レイアが巨大化したのは、システム障害を利用したからか。一歩間違えれば、暴走しかねない。もはや、匠弥はこの世界を創造した私より、遥かな高みに存在している」


 うんうん、絶対、タッくん、なんもわかってへんわ。

 レイアが勝手におおきなっただけやとおもうで。


「ちょっとまって、システムが障害を起こしているなら、アザトースが取り込んだ四凶は?」

「……制御不能だ。強制遮断して、簡易パッケージに封じてある。朱雀以外の残った四神柱も、同様に使えない」


 そやねん。

 いきなり四凶、暴走して、アザトース食べられかけたからな。

 敵やけど、ちょっと見るに耐えられへん光景やったわ。


「もう、勝ち目ないじゃないですか」

「……」


 うち、頑張ってタッくん、助けようと思ってたけど、このままほっといたら、アザトース陣営、自滅しそうや。


「いざというときのために、持ち込み式の脱出ポッドを用意している。これで向こうに戻って、ターミナルを治すしかない」

「そ、それ私に貸してくださいっ、私が行って、ちゃちゃっと治してきますよっ」

「旧型の緊急用、マキが事故で二つに分かれたやつだぞ」

「……いってらっしゃい、アザトース。健闘を祈ってるわ」


 急に遠い目をして、すんっ、となるカミラ。


「留守の間は、ドグマに代理を務めてもらう。……そういえば、ドグマはどうした? 一緒ではなかったのか?」

「壮絶にやられたわよ。粉々になって砂漠に消えたわ。復活までかなり時間がかかるんじゃない」

「へ? だ、誰に?」

「タクミが一瞬で復活させた72体の魔族によ。ドグマが死体を操ってたのに、それを奪われて手も足も出なかったわ」


 アザトースを覆う闇が、不安定に揺れ出した。

 やばいくらいに動揺してはる。


「ば、バカな。数千年前に亡くなった魔族だぞ。勇者リック一人ですら、復活できたのは奇跡に近い。それを72体同時? しかも一瞬だとっ! 匠弥はそこまで朱雀をバージョンアップさせたのかっ!!」


 だからタッくんに、そんなんできへんて言うてるやん。

 絶対、朱雀が一人で頑張ってるだけやわ。


「もう、ターミナル治したら、ごめんなさいして、みんなで一緒に帰りません? なんだったら、もう一つ、新しい異世界作ったらいいじゃないですか?」

「無理だ。この世界ができたのは奇跡に近い。核となる(シロ)(クロ)も完全に消失デリートした。もう二度と異世界は作れない」

「それだったらタクミに、息子さんに頼んだら、作ってもらえるんじゃないですか? きっとシロとクロも復活できるはずですよっ」

「完全消去を覆すのかっ!? いや、それは、さすがの匠弥でもっ!」


 うん、タッくん、料理以外、作られへんから。

 世界なんて大層なもん、作られへんから。


「……匠弥に謝り、世界を創るか。我々がしてきたことを考えれば、あいつが簡単に許すとは思えない」


 そうかなぁ。

 タッくんやったら、すぐ許してくれるで。超平和主義やから。


「とにかく、ターミナルが作動しない現状は打破しないとならない。このままでは、彼女を呼ぶこともできなくなる」

「……それこそ、最終手段ですよ。私たちが全滅した後のことなんて考えたくないです。だいたい、アレはもう、彼女と呼べるような代物じゃないですよ」

「彼女は彼女だよ、今も昔も変わらない。ただ少し、人の枠組みから外れただけだ」


 え? 誰? 彼女て誰?


「ターミナルを復旧させた後、彼女と連結させる。そうすれば匠弥にも、いや、もう誰であろうと手を出せないはずだ」

「そ、そんなことして大丈夫なんですかっ、それに十二賢者どもが黙ってませんよっ」

「今の匠弥に対抗するには、そうするしかないんだ」


 いやいやいやいや、……連結てなに? もう怖い怖い怖い。

 連結とかせんでもめっちゃ対抗できるから。

 全力でタッくんに挑むとか、ほんまやめたげて。


 アザトースが眼前に闇を広げ、中から人が一人入れるくらいの、カプセルを取り出した。


「行ってくる。留守は頼んだぞ、カミラ」


 うちのことを忘れているのか。

 元から持っていくつもりやったのか。

 アザトースはうちを帯刀したまま、カプセルに足を踏み入れた。


 なんやこれっ! なんで……っ!?


 そう思った瞬間、ぶんっ、という振動と共に、すべてが暗転する。



 意識が戻った時、そこには、どこか懐かしいような、新世界が広がっていた。









リック復活のエピソードは「第二部 裏章 ①リックとバッツ」に。

マキが分裂したエピソードは「第四部 二章 閑話 マキA」に。

シロとクロの消去エピソードは「第四部 五章 閑話 シロ」に。

ドグマの魔族死体操りからの復活エピソードは「第五部 二章 百五十二話 魔族の救世主」に。

それぞれ載ってます。

忘れちゃった人は、ぜひご覧ください(=^ェ^=)


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