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百五十五話 いちばんおおきいのは?

 

「なんで、この人ついてきたんですか?」


 魔王の大迷宮ラビリンスからエンドを連れてきてから、レイアの機嫌が悪い。


『ぶおっ!? ぶおおんおんっ!!』 

 だれっ!? また女ふえたっ!!


 なぜか、ダビ子もエンドを連れてきたことに怒っているようだ。


「なにか文句でもあるのか? そういえば、まだ決着がついてなかったな、レイア」

「……そうですね。この場で決着をつけましょうか、勇者エンド」

『ぶっおおんっ、ぶっおおんっ!』

 やっちまえっ、やっちまえっ!


 や、やばいぞ、このままでは前と同じように二人の戦いが始まってしまう。


「ふん、生意気な口を。いつもタクミ殿のそばにいて、大した活躍してないくせにっ。肝心な戦い全部カットされてるぞっ!」

「なっ、そっちこそ、ずっと出番なかったくせにっ! 勇者のくせにほとんどモブキャラだったじゃないっ!」

『ぶっおおおっおおおんっ!』

 どっちもどっちもだよっ!


「ちょっ、ちょっと、な、仲良くしようよ、みんな」


 三人が一斉に俺の方を見る。


「タクミさんは」

「タクミ殿は」

『ぶおおん』

 タクミは


黙っててっ(ぶっおんっ)!!!』


 三人の声が見事に重なってハウリングする。

 うん、息ぴったりだな。

 意外と仲良いんじゃないかな。


 ……もう、落ち着くまでほっとこう。


 迷宮の入り口に腰掛けて、ちょっとくつろぐ。


「はっ、なんだ、そのなまくらは? 前に持っていた聖剣ムラマサはどこへやった?」

「だ、だまれっ、そんなものなくとも、貴様など簡単に倒してくれるわっ」

『ぶおおおんっ、ぶおおおんっ』

 ともだおれっ、ともだおれっ


 そういえば、レイアもエンドと同じく三大聖剣のうちの一つを持っていたが、アザトースとの戦いでなくしてしまった。

 元々、聖剣と呼べる代物でないタクミカリバーも粉砕したし、これでエンドのエクスカリバーが唯一この世に残った聖剣ということになる。


「レイア、それ折っちゃダメだぞ。すっごい貴重品だから弁償できないぞ」

「わ、わかりました。気をつけます」

「馬鹿にするなっ、お前ごときにこの聖剣エクスカリバーが砕けるものかっ!」


 派手に光る聖剣エクスカリバー。


「いいなぁ、あれ。量産できないかな? みんなに持たせたら、すごい戦力あがるのにな」

『無理やで、タクちゃん。あれは一点ものや。魔装備は仰山ぎょうさんあるのに、聖剣はあんまりないやろ。簡単に作れるもんやないねん』


 俺の呟きに答えてくれるスーさん。

 無意識のうちに声が出てしまったようだ。


「なんか特別なの?」

『そやな、あれもシステムみたいなもんやからな。いまはそこまでやないけど、覚醒したら、どえらい力あるねんで』

「ふーーん」


 まあ、どうしてもほしいわけじゃない。聖剣を失ったレイアやアリスに似たようなものを持たせたら喜んでくれるかな、とちょっと思っただけだ。


『大丈夫やって、タクちゃん。仲間探しも順調やし、このままでも簡単には負けへんで』

「そうだな、これでアリスが帰ってきたら、もう無敵なんだけどな。一体、どこでなにをしてるんだろ」

『……そやな、もうとっくに復活してるはずやのにな』

「えっ!?」


 スーさんからの意外な新事実に思わず驚きの声をあげる。


「え? アリス復活してるの? と、いうかスーさん、いつから、そのこと知ってたの?」

『タクちゃんのとこ、きてからすぐやな。深い深い闇の中で、ごっつい力がうねりをあげたの感じたわ。でも、今はもうどこにいるか、わからんようなってしもた』

「そ、そうなんだ」


 復活してるなら、すぐに帰ってきそうなのに、どうして帰ってこないんだろう?


「もしかして、アザトースに負けたこと気にしてるのかな?」

『そやな、次は負けへんように、どっかで修行でもしてるんちゃうか』

「まだ強くなろうとしてるのか、アリスは……」


 出会った頃から、加速的に強くなっているアリス。

 今回、初めての敗北を味わって、さらに修行しているなら、いったいどれほど強くなっているのかまるで想像もつかない。


「みんないるんだから、一人で強くならなくてもいいのにな」

『ほんまやな。帰ってきたらちゃんと伝えたり。強さより大切なもん、ここにはいっぱいあるんやから』


 なんか名言ぽいことを言って締めに入ろうとするスーさん。

 しかし、目の前では……


「ばーか、ばーか、乳無しっ、洗濯板っ」

「なっ、貴様の方がつるぺたじゃないかっ、エンドっ」

「ちがうっ、これはサラシを巻いて、って、ボクは男だっ」

『ぶぶぶ、ぶおおおぶぶぶおおおおおおおおおおんっ』

 ふふふ、どうやらワタシが一番大きいみたいだなっ!

「「アンタのはどれが胸かわからんわっ!!」」

『ぶ、ぶおーーん!!』

 が、がびーーん!!


 なんか、争っている間に、いつのまにかレイアもエンドもダビ子の言葉をなんとなく理解できたようだ。


 ちなみにダビ子の胸はガソリンタンクの部分である。

 うっかり触らないように気をつけよう。


 砂漠の日がくれて辺りが暗くなってきた。

 バラバラになったドグマはいつのまにか風に飛ばされ、もう見つからない。復活するのに何年もかかりそうな気がする。さよなら、ドグマ。しばらく忘れないよ。


「さあ、みんな、お腹空いたから帰るぞ。今日はバターラビカレーだ」


 あれだけ騒いでいた三人が、ピタッと止まり、一斉にこちらを振り向く。


 一年越しのレイアとエンドの戦いは、今回も決着がつかなかった。





エンドとレイアの初対決エピソードは、第一部 四章「二十五話 真実はいつも一つか二つ」でやってます。

忘れてたら、また読んでみてね。


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― 新着の感想 ―
[一言] ええ!ガソリンタンクって胃じゃないの?(目反らし
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