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百四十七話 父と息子?のメロディー


 タクミ ➡︎ アザトースの息子がナギサだと勘違いしている。

 アザトース ➡︎ タクミが自分の息子だという事を知っていると勘違いしている。


 アザトースと二人きりで食卓テーブルで向かい合う。

 実は息子だったナギサには、ヌルハちぃと一緒に奥の部屋へ行ってもらった。


 今回、アザトースが息子を心配して来たのなら、うまく話せば戦いをしばらく避けられるかもしれない。

 いや、抜群にうまくいけば、平和的な解決で無血終戦も有り得るのだ。


「どうした、アザトース。なんでも聞いてくれて構わないぞ」


 アザトースは沈黙したまま、じっ、と俺を見つめている。

 まあ、顔が闇に覆われているので、おそらく見つめているという予想なのだが……


「……本当に、答えてくれるのか」


 ようやく、アザトースが重い口を開く。

 まあ、俺もそこまで詳しくナギサのことを知ってるわけではない。

 それでも数ヶ月一緒に暮らしていたので、アザトースの知らないナギサを、少しは語ることができるだろう。


「ああ、精一杯答えてやるぞ」


 だから、まだ攻めてこないでね、と心の中で付け足しておく。


「……息子の成長とは本当に早いものだな。変わっていくとは思っていた。しかし、まさかここまで早く、急速に変わっていくとは思わなかったのだ」


 そ、そうなのか。

 ナギサが女の子に変わったのは、そんなにいきなりだったのか。

 俺が出会った時には、もうあの姿だったから違和感なく接していたが、アザトースにとってはかなり衝撃的な変化だったのだろう。


「確かにお前にとっては急激な変化だったのかもしれない。しかし、それはただ単に目に映る姿を見ていただけではなかったのか? もっとずっと前から、中身はすでに変わっていたんだよ」

「そ、そうだったのか」

「ああ、俺には変わった今の方がすごく自然に感じるよ」


 アザトースの表情はわからないが、おそらく驚いているのだろう。

 手に持ったお茶が震えすぎて、中身がこぼれている。


 しかし、今のナギサはどうみてもかわいい女の子だ。

 もう無理に元に戻そうとせず、そのまま息子ではなく、娘として接したほうがうまくいくような気がする。


「まずは受け入れろ、アザトース。まだこんなもんじゃない。これからもまだまだ変わっていくぞ」

「ま、まだ、変わるのかっ!?」


 女の子に変わったばかりだからか。

 ナギサはまだ女の子らしい格好をあまりしていない。

 化粧も薄いし、髪もボーイッシュ、服装もこっちでは鎧だし、向こうの世界でもTシャツにジーンズで女の子ぽくなかった。


「そりゃそうだろ、年頃なんだ。これからさらに綺麗になっていくぞ」

「さ、さらに綺麗になるのかっ!?」


 アザトースが大袈裟に驚いている。

 やっぱり息子が綺麗だと思いたくはないのか。


「そこはちゃんと受け止めないとダメだぞ、アザトース。お前の息子はちゃんと綺麗だ」

「そ、そうか、そうだな、確かに翼を広げた姿は綺麗だった」


 だいぶ錯乱しているのか、わけのわからないことを呟きながら、闇からダラダラと汗が流れている。


「わ、わかった、しかと受け止めよう」


 なんとか必死に受け入れたらしい。


「そうだな、少しずつ理解していけばいい。あと、その変な合体もやめたほうがいいぞ」


 ナギサが女の子に変身したから、対抗して化物に変身したのだろうか。

 どうやら、アザトースはかなり迷走しているようだ。


「……やはり、この程度では通用しないということか」

「いや、通用しないというより、完全に方向性を間違ってるよ」


 ナギサに父親として尊敬されたいようだが、こんな気持ち悪いものと合体したらますますナギサは離れていってしまう。

 アザトースを見るナギサの目は、まったく父親を見る目ではなかった。


「息子の急激な変化に、ついていけないのはわかる。だけど、無理して自分まで変化しないほうがいいぞ。絶対に同じようにはなれないんだから」

「私ではその域に到達しないというのか」


 え? その域に到達?

 いやいやいやいや。

 まさか、アザトースも女性に変身するつもりなのか。

 闇に覆われているので、素顔はわからないがハッキリと宣言できる。


 女性になったアザトースを想像した。

 無理だ。絶対に気持ち悪い。


「不可能だ、アザトース。天地がひっくり返っても、その域には到達しない」

「……嘘偽りのない目だな。……そうか、それほどまでかっ」


 うん、そりゃそうだろう。

 こうやってナギサが息子ということを聞いても、女の子としか思えない。

 それほどナギサの女装は完璧なのだ。


「とりあえず、ちゃんと話をするなら、まず、その気持ち悪いのを取ってからだな。あと顔を隠しているのもダメだと思うぞ。一度、普通の父親に戻って、話し合ってみたらどうだ?」

「武装を解除して完全降伏しろ、というわけか。そこまでして和解した後、私になにが残るというのだ?」


 本当は認めたくない息子の女装を認めて和解する。

 確かに辛い選択だが残るものは一つだけある。


「家族の絆だ。それ以上に大切なものがあるのか?」


 アザトースが沈黙した。

 深く考えているのか。

 しばらくの間、静寂の時が流れる。


 やがて口を開いた時、聴こえて来たのは言葉ではなく、懐かしいメロディーだった。


「たんたた♪ たんたた♪ たんたたたたた♫」


 ナギサがよく口ずさんでいたメロディー。

 そうか、これは二人の親子の思い出の歌なのか。


「たんたた♪ たんたた♪ たんたたたたた♫」


 アザトースを応援するために、俺も同じように口ずさむ。


「「たんたた♪ たんたた♪ たんたたたたた♫」」


 二つのメロディーが重なり合った。

 きっと、奥の部屋にいるナギサにも届いているだろう。


『え? なんなんこれ? 怖い怖い、タッくんとアザトース、何してるんっ!?』


 魔剣カルナがツッコミを入れたが、二人のメロディーは止まらなかった。




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現在、第三話が公開中です!

ヌルハチ登場回です!

尻回です!

面白にあふれています!


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挿絵(By みてみん)

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すでにされている方、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.


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― 新着の感想 ―
[一言] …結局このメロディーなんなんだ… そして誰か、こいつらの勘違いを正してやってください…でも。この勘違いぶりは間違いなく親子の絆よ
[一言] お互いの勘違いが加速しているw
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