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百話 十豪女子会

 

「久しぶりじゃの、大草原以来じゃな」


 毎回、毎回、いきなり登場するバルバロイ会長。

 絶対わざとやってるのだろう。

 相変わらず趣味が悪いくそじじいだ。


「悪いが会長、今取り込んでいるんだ。十豪会じゅうごうかいなら参加できないぞ」

「ふぉふぉふぉ、違うぞ。今回は強者を集めてもどうにもならん。ギルドを総動員しても今のアリスには、まるで敵わないじゃろう」


 どうやら、バルバロイ会長はすべての事情がわかっているようだ。


「なぜ、そのことを?」

「わしの師匠は過去現在未来のあらゆる出来事を知ることができる。選択の時が来たのじゃろう。師匠に頼まれ、その手助けに来たんじゃよ」


 バルバロイ会長の師匠、東方最強仙人か。

 しかし、バルバロイ会長に助けられて、なんとかなる問題でもない。

 要は、俺が誰とキスをするか、という選択なのだ。

 そんなもの、赤の他人が決めるものではない。


 お、俺とキスする人との問題なのだ。


「手助けなどいらない、という顔をしておるな。心配せんでよい。わしは単なるサポート。司会進行役じゃ」

「……いったい、何をしようとしているんだ?」


 その質問にバルバロイ会長は、実に嬉しそうに答えを出す。


「誰がお主に選ばれるか決める女子だけの十豪会じゅうごうかい。名付けて十豪じゅうごう女子会じょしかいじゃ!」


 あまりのことに俺がぽかんと大口を開けて、呆然となる中、食卓の向こうから、おおっ、と女子達から歓声があがる。


「タ、タクミさんに選ばれるとはどういうことですか?」

「参加資格は? ルシア王国の王女特権で参加できますか?」

「はいはいはい、うち参加するっ! 早いもん勝ちでいいやんなっ」

「カル姉ずるいっ、そうやっ、胸の大きさ順にしよっ!」

「チハル、あのじじい、きらい」


 一気にもりあがる女子達をバルバロイ会長が手を前に出して制する。


「落ち着くがよい。参加条件はすでに決まっておる」


 真剣な顔のバルバロイ会長に、皆がゴクリと息を飲み、沈黙する。

 そして、バルバロイ会長は懐から何かを取り出す。

 それは、番号が書かれた一枚の紙キレだった。


「それってアリスが配っていた……」

「そうじゃ、アリスが自分のライバルと認めた者に配っていたこの紙が、十豪じゅうごう女子会じょしかいへの参加条件じゃ」


 再び、みんなから大きな歓声が湧く。


「それ、持っていますっ、私、3番ですっ!」

「ふっ、私は2番だわ。前は1番でしたけどね」

「なんでうちが7番でクーちゃんが6番なん? 交換してやっ!」

「いややっ、これはうちのやっ! はなしてっ、カル姉っ!」

「チハル、チハルももってるよっ!」


 大騒ぎである。

 というか、十人も女子が集まるのか。

 これ、俺は参加しなくていいんだよね?


『いや、ワタシも持っているカナ。1番ダゾ』


 俺の中にいるシロが自慢気にそう言う。


 そ、そうだった。

 そういえば、アリスはシロに紙を渡していたんだ。

 しかも1番なのっ!?


『参加決定ダナ、タクミ』


 えっ!? この中に俺も参加するのっ!?


 シロが出てこれないので、無情にも俺の強制参加が決まってしまった。



 一夜明けた正午前。

 毎度お馴染みの円卓に十人の女性が集まっていた。

 そこに俺とバルバロイ会長が加わって、12の席がすべて埋まる。

 円卓には時計と同じ0から11の数字が刻まれていて、それぞれがアリスに渡された紙の番号に合わせた席の前に座り、俺の前には大きな数字の1の文字があった。


 わかっていたことだが、場違い感が半端ない。

 どうして、俺は女子会に参加しているのだろう。


 動揺しながらもバルバロイ会長に渡された出席者名簿を確認し、全員の顔と名前を見比べる。



十豪じゅうごう女子会じょしかい出席者名簿】


 ランキングゼロ位 空間使い「リンデン・リンドバーグ」


 ランキング一位 現れた白い者「シロ」

(捕獲者)宇宙最強「タクミ」


 ランキング二位 断崖の王女「サシャ」


 ランキング三位 神降ろし「レイア」


 ランキング四位 大賢者「ヌルハチ」

(代理人)幼女「チハル」


 ランキング五位 魔王「マリア」


 ランキング六位 勇者「エンド」


 ランキング七位 黒龍「クロエ」


 ランキング八位 魔剣「カルナ」


 ランキング九位 吸血王「カミラ」


 ランキング十位 獣人王「ミアキス」

(同伴)狂戦士「ザッハ」


 ランキング外 司会進行 「バルバロイ・サウザ」


 アリスが渡した紙に書いてあった番号が、そのままランキングになったみたいだが、一体どういう基準なんだろうか?

 力の強さではないことくらいしかわからない。


『……わからないノカ? そうか、恋愛の力も皆無なノカ』


 俺の中で、残念そうなシロの声が響く。


「貴女が0番ですか、リンデン・リンドバーグ。アリスも冗談が過ぎますね。所詮、過去の女だというのに」


 俺の左横、2番に座るサシャが右横、0番に座るリンに話しかける。


「そうですね、サシャ王女。私も貴女は2番ではなく、もっと下だと思っていました。賄賂でも渡したのですか?」


 俺を挟んで、0番の席に座るリンと2番の席に座るサシャが微笑みながら睨み合う。

 こ、こわい。

 やめて、俺、こんなピリピリした空気に耐えれないよ。


 そして、まだ始まる前だというのに、円卓の所々で女子トークが繰り広げられていた。


「クーちゃん、うちら順位低くない? 絶対もっと上やとおもうわっ」

「大丈夫や、カル姉。順位は常に変わるもんや。この会が終わるまでに、ごぼう抜きしたろっ」


 カルナとクロエは結託して、手を握り合っている。


「レイア、だいじょうぶ? なんか、むねにいれてる?」

「しっー、チハル、内緒ですっ。これは、そう、あれです、秘策というやつですっ!」


 まだ胸のことを気にしていたレイアが、胸の所に何かを仕込んでいた。

 だけど、ずれているのか、左右で形がおかしくなっている。


「はっ、まさか、が勇者と並んでこのような会議に出ることになるとはな」

「それはこちらのセリフだよ、魔王。ボクもそんな日が来るなんて思わなかった」


 勇者と魔王が仲良く会話している。

 あれ? そういえば女子会なのに、男のフリをしているエンドがいていいのだろうか?

 まあ、まわりもあまり気にしていないようだし、エンドが座っていてもまったく違和感がない。

 むしろ、この中で最も異質なのが……


「ミアキス、なんで貴女、男連れて来てるのよ」


 日傘にサングラス姿のカミラが、ミアキスにツッコミを入れていた。

 確かに、ミアキスの後ろに立っているザッハは、この中の誰よりも目立っている。


「知らないにゃ。心配して勝手についてきたにゃ。きっと吾輩わがはいにベタ惚れなんだにゃ」

「ち、ちがうぞっ、俺様は、お前が恥ずかしいことをしないか、心配でついてきてやったんだっ! だ、誰がお前なんかっ! バ、バーカっ、バーカっ!!」


 これまでの十豪会じゅうごうかい以上に大混乱だ。

 みんな、それぞれ好き勝手に騒ぎ出す。

 これ、本当に会議になるのか?


 そんなことはまったく気にしないバルバロイ会長がいきなり立ち上がった。

 太陽が真南に位置し、正午ちょうどになっている。


「では、これより十豪じゅうごう女子会じょしかいを開会するっ! 」


 バルバロイ会長の大きな声が三度みたび、草原に響き渡った。




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― 新着の感想 ―
[一言] あれ? 勇者のエンドは胸に触って女子だと気づいていたのではなかったのでしたっけか。 書籍版との違いですかね
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