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嘘/微熱からMystery

8「嘘」


「とりあえず、そろそろ日が落ちてきそうだし

どこか休めそうな場所に移動しないか?

って言っても、こっち来たばっかりで何にも知らないんだけどな・・・」


エルニとの話し合いの後、気がついた時には辺りが薄暗くなっており、日の傾き加減からして、元の世界の夕暮れに近づいていることがわかった



「そうね、まあ私達精霊はあまり気にならないけど、あなたは人間ですものね

今寝ているエルのことを考えるとあまり動きたくないわね

少し歩いた場所に町があるはずだから、そこに行きましょうか

ソコソコのお金は持っているはずだから、宿には困らない筈だわ」


エルニの提案に賛同するが、なぜ精霊の彼女が人間のお金を持ってるのだろう?

俺は疑問に思い、その町まで歩く道中尋ねると



「精霊の中には人間と混じって生活している者たちもいるのよ

一般的なものは、森の精霊であるエルフ、土の精霊であるドワーフね

で、その者たちとは私は交流があるから、人間のお金を貰うことがあったのよ

私自身使う場面がなかったから持っていたのだけれど、まさか使えることがあるとはね」



「でも、それはエルニのお金だろう?俺しか周りに見えていないなら俺の宿代だけなのに、エルニのお金を使うのは気がひけるよ」


正直なところエルニの申し出はありがたいが、俺の宿代のためにエルニがお金を使うのは・・・、と考えてしまう



するとエルニはなんでもないというように笑って

「ふふ、あなただけの為というのが気がひけるというのであれば、言いなおすわ

エルをゆっくり休ませたいから付き合ってくれない?

エルと離れられないからあなたも一緒にね」

そういう言い方されると、無理に断るのも失礼だな



「了解、そういう事なら

ありがたく泊まらせて貰うよ、というかもしかしてエルニって人に見えるようにもなれるの?」


エルニの口ぶり的に人に見える状態になれるのでは?そう思って聞いてみたら案の定いけるみたいだ



「と言っても、私のような上級以上の精霊でないと気配を感じることさえ難しいけどね

あなたみたいにエルのような下級精霊を見たりできる人間は未だかつて存在しないわ」


うーん、俺に特別な力とか無いと思うんだけどなぁ

不思議に思うのはここに来て目覚める前に見ていた夢ぐらいなもので・・・





そうこう考えているうちにまあまあな大きさの街並みが見えてきた

もしかして、これが言ってた町なのか・・・



「そういえば、俺何も身分を証明するもの持ってないけど、ちゃんと入れるのかな?」


「ええ、少しの通行料を取られるかもしれないけれど、ちゃんと入れるわよ」

そんな会話をしながら町の入り口に近づくと



「こんばんは君たち

ここレーンに入るには身分証の提示か通行料が全部で3枚必要だけど、どちらかお願いできるかな?」


夕暮れ時にもかかわらず、優しそうな声でボーイッシュな感じの女性の門番らしき人物が俺たちに声をかけてくる

それにしても、男の、それもおじさんを想像していたので、こんな優しそうな人が門番とは驚きだ



俺が驚いている横でエルニが「銅貨枚払います」と言い俺の代わりに支払ってくれている

男としては申し訳なく思うが、まだ来たばかりなのでしょうがないと割り切るしか無い

早く稼げるようになって返さないとな



「ごめんエル二、代わりに払ってもらって

このお金は後で体(肉体労働)で返すよ」

俺はそこまで気にせずエル二に話しかけると



「な、なにを言っているのよ!

そんなこと私は要求しないわよ!」

すごい勢いで赤面しながら大きな声でそう言ってくる



んんん?

この反応はおかしいと思う

ただ借りた金を労働(男であるから肉体労働)などで返そうとしただけなのに・・・


あっ!もしかして体ってところを、そういう意味で捉えてる?

何という誤解だ・・・

てか男からそんなこと言っても需要ないだろっと、ちょっと呆れながらエルニの

誤解を解こうとしていると



「な、なんてえっちな子達なんだ!!!

お金の代わりに、か、体でなんて・・・

も、もしかしてその背中の子供も彼女の?」

エルニだけでなく、女性門番の人も勘違いしているみたいだ



ボーイッシュだけど美人だから、こういうことに耐性あるかと思ったのに・・・意外だ

意外と初心なことに驚きながらも、別のことのほうが俺を驚かせた


しかし子供って・・、まさかエルがみえているのか?

もしそうだとしたらなんとか精霊であることをごまかさないとやばいぞ・・・

守ってみせるとかかっこいいこと言っといて、いきなりエルを危険にさらすなんてシャレにならない

初対面からいきなり嘘をつくのは申し訳ないが

ここは何やら勘違いしてくれていることに便乗して



「え、えーとそういう訳で

この後のこともあるしね?俺たちもう行きますね?」

今は甘んじてプレイボーイの役を受け入れよう

早くこの場所を離れることが優先だ

俺は早くこの場所を離れるために、エルニの手を引いて町のほうに足を向けた



「ええ?や、やっぱり

そういうことをしに行くの!?

こ、心の準備が・・・」


エルニは俺が手を掴んだことにより、より顔を赤面させている

ああもう、またエルニのポンコツな部分が出てしまってる

だけど今はそれも後回しだ



「じゃ、じゃあ行くかエルニ」


「う、うん」

俺はエルニの手を引いて、速足で町に入っていく

変に目立ってなかったらいいんだけどな・・・









閑話「微熱からMystery」


_先ほどの彼らが遠ざかっていくところを、私は熱に浮かされた様子で見つめていた

何やら若い男女だと思ったが、それだけでは不思議には思わない

しかし、会話が聞こえてきたが、ま、まさかあの年でそういう関係だとは思わなかった・・・



私は恥ずかしながらこの年までそういう経験はない、それどころか交際経験すらないものだ

自分で言うのもなんだが、私は名のある騎士の家系に生まれた

だからだろうか、男性に会う機会も少なくそういう方面に疎くなってしまった

そういったこともあり、あのような幸せそうなカップルを見ると

一種の羨望に似た感情を抱いてしまう



それにしても先ほどのカップルは初々しかったな

男のほうが少し落ち着いて見えたが、女のほうはこちらも恥ずかしくなるぐらい赤面していた

まあ、そういうこともあって興味をそそられたのだが・・・



「エルニって言っていたよな・・・」



忘れもしない恩人と同じ名前

幼い頃、(帰らずの森)で迷子になり、木の下で泣いていた私を慰めて

町の近くまで送ってくれた優しい女性

とてもやさし気な瞳をした、お母さんのような女性

帰り際に名前を聞くと「エルニ」と名乗っていた



だからだろうか、先ほど男が「エルニ」と呼んでいてドキッとしてしまった

しかし、私が幼い時にあったあの女性は若いお母さんって感じだったが、今は10年以上たっているのだから

あの女性とは別の「エルニ」だろう

でも、なんだか不思議な気分にもなって・・・

そう思うと、あの二人はいったい・・・


私はその後、不思議とあの二人のことが頭を離れないのだった


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