少年よ我に帰れ
3 「少年よ我に帰れ」
俺はとても驚いている
人生19年、色々な出来事があった
小学生低学年、街の狭い道路で、トラックに轢かれかけることがあった、あの時は本当に驚いたし、安全運転を心に誓った瞬間だ
そして、中学時代、何故か友達の彼女だった、生徒会長の女の子と付き合うことになった
フツメンの俺に、可愛い彼女が出来るとは夢にも思ってなかったから、あん時は過去1驚いた(ただし、三カ月ほどで自然消滅したが・・・)
次に高校時代、当たってお願いで受けた大学の推薦、試験の論述を半分程しか書いていないはずなのに何故か合格、校内1早く大学がある決まった
あれもなかなか驚いた、奇跡も魔法もあるんだねって思った瞬間だった
しかし、そんな出来事すら霞む程に目の前の非日常的な出来事に呆然とし、幼女を眺めていると
「んん〜?にんげんしゃん?むぅ?なんで?」
幼女はふわふわしながら、俺に近づいてきて不思議そうにつぶやきながら、俺の顔や肩をペタペタ触ってくる
手小ちゃいなぁ、それにプニプニしてて、正直気持ちいい
でも、とりあえず今はこの幼女の事を尋ねないと
俺は名残惜しく思いながらも、そばの木に焼きキノコを置いて、ペタペタしている幼女の手を離し、脇の下から抱え込み目線を合わせて話しかける
「えーと、幼女ちゃん?とりあえずいきなり触ってごめんね
それでなんだけどお名前教えてくれるかな?」
俺はロリコンではないが子供好きだ、いとこを小さい頃から面倒見てたから、子どもの扱いは得意だ
すると幼女ちゃんはキョトンとした顔をしたと思ったら、すごい興奮した様子で笑いだした
「しゅごいしゅごぉい!わたちにしゃわれるの〜?
おもしろーい!」
きゃっきゃ言いながら、幼女が手元でわちゃわちゃしている
非常に癒されるので、ついつい幼女の頬をツンツンしまう
「ふむ!ふぬ!ふゆ!もっともっとして〜」
ツンツンされた幼女は満面の笑みでもう1回と急かしてくる
クソ、俺はロリコンじゃないが、この笑顔は堪らなく可愛いな、喜んでるし、付き合ってあげようか
いや、決して僕がしたいわけじゃないんですよ?
そんな自己弁護をしながら、当初の目的を忘れ幼女と戯れていると
「どうしたの?エル?そんなところに生えてないわよ?相変わらず慌ただしいこなんだか・・ら・・」
幼女と戯れてていた俺の後ろから、突然女性の声がした
俺は再び慌てて後ろを振り向くと、幼女と同じ緑色の髪をした20歳前後の美女が、こっちを見て声を失ったような様子であった
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!
ぱっと見、現在の俺は幼女をいじくり回している、不審者兼ロリコンだ
しかも、この女性、幼女の保護者である可能性が非常に高い、何たって髪の色が同じく緑色だ
突然わけわからない場所に来てしまったとはいえ、幼女が一人だけでこんな場所にいるわけなかった、、
我に帰った俺はそんな風に慌てふためいていた
こ、ここはとりあえず何か言い訳をしないと・・
「わ、わあ〜、な、なんでこんなところに子供がいるのかなぁ?きみ迷子になっちゃったのかなぁ?」
俺はさりげなく、幼女を突いていた頰から指を外し、顔を覗き込んで、あたかも今出会って事情を伺っている様子を演出してみる
少し声が上擦ったが、まだましなレベルの言い訳だろう
すると緑髪の女性は震えた声で
「そ、そんな嘘!」
と言い、そして続けてとんでもないことを言ってきた
「な、なんで精霊に触れるの!?」
・・・、何を言ってるんだろうか?
この幼女が精霊?
精霊っていうと、物語に出てくる羽の生えたようなやつか?
浮いてることが不思議ではあるが、見た目は完全に幼女だし、言動も完全に幼女のそれだ
しかし、保護者とみられる女性がそんな根拠のないことをこんなに驚いて言うなんて考えられないし
「幼女ちゃんが精霊?・・・うーん?」
俺がそう呟き難しい顔をして唸ると
「むぅ?」
俺の真似がしたかったのだろうか、俺を真似た幼女の呟きが虚しく響いた