はじめての魔法?
22「はじめての魔法?」
声のした所はそんなに遠くはなかった
だが現場に辿り着いてみると、沢山の人が巨大なドラゴンを取り囲むように立っていた
そして、それら全ての人が完全武装している
ドラゴンはそれをメンドくさそうな、苛立った様子で眺めている
そこにいる人たちは
「どうする?
なんとかここで足止めするか?」
「いや・・
俺たちが束になってもすぐやられちまう」
「でも、足止めしないと
私たちの町が・・・」
といったように、口々と囁きあっている
どうすっかなぁ
なんとか他の奴らに見られずに会いたかったんだが
すると腕の中にいた幼竜が
「ガゥ!ガァグァ!」
そうドラゴンに向かって鳴き声をあげる
すると、ドラゴンは勢いよく俺たちの方向に振り向く
「幼竜!?
どうしてそんな所にいるの!?」
親ドラゴン?は俺の腕の中にいる幼竜を見て
悲鳴のような声を上げる
俺はとても驚き親ドラゴンを見上げると
親ドラゴンは低い唸り声をあげ始めながら警告してくる
「おい!そこの人族!早くその子を私に返せ!
妙な真似をするようなら、そこの精霊諸共容赦はしない!」
そう言って、完全な臨戦態勢をとりだす
まてまてまて、俺は戦いに来たんじゃない!
ていうか、ドラゴンなのに言葉話せるんだな・・・
話せるなら、話し合いで解決しようじゃないか!
「ま、待ってくれ!
俺はこの子を連れてきただけで・・・!」
しかし、俺が話し終えるのを待たず
「問答無用、返さないというのなら
力づくで取り返すまで!」
「ちょっ!?」
言い終えるや否や、口から特大サイズの炎を
俺に向かって飛ばしてくる
するとエル二が俺の前に立ち
「リーフシールド!」
緑色のバリアのような物を俺たちの前に展開する
ズガガガガ!!!
地面が抉れるような音を響かせながら
バリアが炎から俺たちを守ってくれている
しかしエル二は余裕がない様子で
「くっ、やっぱり木属性じゃ相性が悪いわね・・・
まずいわ、このままじゃ押し切られる!」
そして何かを決心したような顔で俺に叫ぶ
「逃げて!このままじゃみんなやられ・・・!」
すると、エル二が叫び終えるより前にバリアが壊れ
炎がエル二に直撃しそうになる!
ゴォウ!!!
エル二に当たるまであと数メートル
危ない!!!
そこで、俺は力の限りに叫んでいた
「やめろぉ!!!」
するとどうしたことか、エル二にもうすぐで当たりそうなっていた炎が消滅し
消滅した場所からその炎と同じサイズをした水の塊が出現して、親ドラゴンに向かって飛んでいく!
親ドラゴンはそれを見てとても慌て出す
「なっ! そんな!?
あ、主人様!?ど、どうして!?」
しかし、ドラゴンは驚きのあまり跳ね返った水玉の防御を忘れてしまい
その水玉がドラゴンの体に直撃する
バスン!!!
「グウァ!」
ドラゴンが衝撃に耐えられず、仰け反るようにして倒れる
な、なんだ!?
今のは!
もしかして・・・、俺がやったのか・・・?
少し呆然としていると
「今がチャンスだ!
なんだかわからないが、ドラゴンをやっつけるぞ!」
「いけるわ!魔法隊攻撃準備!」
それまで呆然としていた冒険者たちがドラゴンが倒れたのをチャンスだと思ったのか
再びドラゴンに向かって攻撃しようとしている
ま、まずい!何とかしないと!
俺が何かしようとするより先に
「転移!!」
エルニが切羽詰まった様子で魔法を発動する
すると次の瞬間
体に不思議な負荷が掛かる
そして次に目を開けると
転移したばかりにいた森に場所が変わっている
「えっと、助かった?」
周りに俺たちと親ドラゴンが近くにいるのを確認して、安堵のため息をつくのだった




