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涙より笑顔を

10「涙より笑顔を」


俺たちは205号室にたどり着き一息つくことが出来た

俺はベッドの上に座り、その向かいのベッドに座るエルニに切り出す



「さっきも思ったけど、エルって人間には見えていないんだよな?」


「ええ、そうよ

基本的には精霊自体見えないもので

大抵の人間は精霊の気配を認識するのがやっとというところよ」



やはりそうなのか・・・


宿屋の女性も見えていなかったし

ここに来るまでに町中の男どもがエルニのことを口々に噂していたが、普通に見えているなら目立つであろう美幼女であるエルについては誰も話していなかった

普通に緑髪だから目立つはずだしな



「じゃあ、門番の女性はどういうことなんだ?

俺たちのこと3人って言っていたぞ?」


エルニの話が正しいとなると、門番の女性がエルを認識しているのはおかしい

俺がそう言うとエルニはとても驚いて「そんな!?」と驚愕していた


ていうか、キミもその場所にいたんですけどね・・・



「ということは、見えてた理由は分からないけど

あの女性には要注意ってことか

悪い人には見えなかったけど、警戒するに越したことはないな」


「そうね、私の方でも少し探ってみるわ

今はこの子の身の安全が第一ですしね」

エルニは俺のふとももで眠るエルの髪を撫でる



それに反応してか、エルがゆっくりと瞼を開く

「んぅ?おとーしゃん?」

寝ぼけ眼で俺の顔に手を伸ばす



すると何故かエルニがそれを見てドキッとした表情をして凍り付いた様子でこちらを見てくる


なんなんだ?その反応?

俺が疑問を持っていると



俺に手を伸ばしていたエルが手を止め

突然びぇーと大きな声でエルが泣き出した!


「おとーしゃん!どこぉ!いかないでぇ

エウ、おいてかないでぇ!」

そう言って激しく泣いている



なんだなんだ!?

寝て起きたと思ったら俺をお父さんと勘違いし、次の瞬間お父さんを呼んで泣いている


突然の出来事に困惑して、エルニの方を見るがエルニは激しく動揺した様子である

とりあえず、エルニは当てにできないとしても、エルを泣き止ませないと



しかし、何故だろう・・・

エルの泣いている顔を見ると胸が締め付けられるような気持ちになる


俺はそんな不思議な感覚を味わいながらも

俺は手でエルの両目の涙を拭いながら


「泣かないでくれよエル

俺はここにいるし、俺はどこにもいかない

だから安心して泣き止んでくれ

俺はお前の笑顔のほうが好きだからさ」

そう言って、エルの頭を撫でて笑顔でエルの顔を覗き込む



すると、エルはスンと一度鼻をすすった後、ニコッと笑顔を見せてくれる

「うん!おにいたんの・・・おとーしゃんのゆうことにすう」

そう言って、泣き顔から一転、ニコニコしながら俺の顔に手を伸ばす


ペタペタペタ


小さいエルの手が俺の顔に触れる


それにしても・・・

「なんでお父さんなんだ?」


何故だかその響きが俺の心をざわつかせた


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