プチ幸運はアイテムと交換できるのです。【続・プチ不運は貯めたり使ったりできるのです。】
『プチ幸運はプラス3。プチ幸運はプラス17800。アイテムに交換する時には言ってくださいね』
「はーい」
朝ごはん用に卵を割ったら、黄身が二つだった。
ラッキーと思ったら、最近お馴染みになったアナウンスが頭に響いた。
プチ幸運が20000になると、高い化粧品セットが貰える。
でもでもー、私はタワーマンションが欲しいのです!
頭に響くアナウンスはどこから響くのかとかは考えてはいけない。
物心付いたときから、私は女の人の声が度々聞こえた。
聞こえる声はあまりにも冷静で、私は皆にも聞こえるのかと思って居た。
もちろんある程度経ってから、何処かから声が聞こえると皆に言うのは危ない事だって分かった。
まあ、それはともかく。
少し前まではプチ不運を貯めると、それを使って幸運を起こせていた。
何かついてないなー、という事があると女の人の声が、
『プチ不運プラス3。総プチ不運数はプラス90です』
というように頭に響く。
ある程度溜まると、幸運が発生する。
自然な感じで福引で商品券が当たったりするのだ。
それが、この前に、
『今回の人生は予習です。来世は異世界でずっと一緒ですよ』
という謎の言葉で聞こえなくなった。
そうしたらしばらくして、別の女の人の声で『プチ幸運』が溜まるアナウンスが聞こえた。
『プチ幸運プラス2。初めまして山田花美さん。プチ幸運を貯めるとアイテムをプレゼントしますね』
といった感じでだ。
頭の中に声が聞こえるのは初めてじゃなかった。
だから、私は受け入れた。
なんだかプチ幸運なんて面白い!
ちなみにその時に目の前にパンフレットがひらひらと舞い落ちた。
今度のアナウンスの女の人は自然な感じじゃないみたいだ。
落ちたパンフレットは、話が長くなるので一部を大公開します!
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『アイテム交換表
※適時アイテムは追加されます。
プチ幸運
5 おいしいソフト煎餅
10 冷凍みかん
20 おいしいチョコレート
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(中略)
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20000 高い化粧品セット
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(中略)
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1,000,000 高いタワーマンションの一室(場所等は応相談)
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(中略)
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1,500,000 万能薬(あらゆる病気や傷が治る)
1,500,000 海外の別荘(管理付き)
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(中略)
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100,000,000,000 蘇り薬(※死体がある場合に限ります)
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(中略)
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・
500,000,000,000 国
(以下略)
』
ちなみにチョコレートは本当においしい。
おいしかったので、彼氏の川谷さんにもあげたら感激していた。
もしかしたら、2月14日近くだったからかもしれない。
緊張のためかガタガタ震える手で、『ありがとう』と言われてギュッと手を握られた。
プチ幸運がプラス5増えたのは、川谷さんには内緒だ。
イケメンに手を握られるというのは、それだけでプチ幸運なのですね!
あ、ちなみに私は彼氏持ちです。
川谷さんは隣の部署のシステムエンジニアで、今流行のほっそりしたイケメンです。
とても仕事ができて、はにかんだように笑うのが好きです。
プチ不運の時のあれやこれやで彼氏になったのです。
プチ不幸の時も川谷さん関連でプチ不運が増えた。
川谷さんは幸運も不幸も与えてくれる人なのだと思う。
それはそうと他にもプチ幸運は溜まる手段はある。
今朝のように卵の黄身が二つだった。
信号が歩いているときにタイミングよく青に変わっていく。
レシートの合計金額が777円だった。
後はー、スーパーでちょうど良くタイムサービスが始まった。
面白いなぁ、と思ったものには、食べ物を落としたら包み紙がちょうど良く下だった。
とかもあった。汚れなくってラッキーだった。
行きたいと思っていたお店に友達に誘われたとかもあった。
一人じゃ入りづらいと思っていたので、ラッキーだった。
ちなみにお金を拾ったとかクジに当たったとかは、プチ幸運にはならないそうだ。
アナウンスの女の人がいうには、あまりストレートすぎる幸運はプチ幸運じゃないみた。
曖昧でよく分からない。
そして、一番今のところプチ幸運が溜まるのを発表します!
四葉のクローバーを見つける。
です。
1本でなんと100ポイントだ。
幸運の象徴だからかもしれない。
タワーマンションに川谷さんと住みたいから、今日も頑張って河川敷で四葉のクローバー探すぞー。
あっ、もちろん普通に貯金もしてます!
アイテム交換表の中で『いいなこれ』と思っただけなので。
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「山田さん。あ、あのこれっ」
「うわぁ、川谷さん。ありがとう」
四葉のクローバーのポイント100ポイント。
今日もそれを目当てで河川敷で四つ葉を探していたら、川谷さんと一緒に探すことになっていた。
まあ、毎日毎日デートの日以外はどこかに一人で消えていたら同じ会社なのでバレる。
正直に『四つ葉を探している』と言ったら、『山田さんらしい、あのっ………可愛い趣味ですねっ』と言われた。
キュンときました。
キュンときたから、早くタワーマンションもらって、川谷さんと暮らしたい、……って言ったら頭おかしい人だと思われますね!
『プチ幸運はプラス2。四つ葉のクローバーでプラス100プチ幸運はプラス17902。後少しで化粧品セットに交換できます』
多分、今のプラス2はイケメンの川谷さんからキュンとする事を言われたからだろう。
なかなかタワーマンションは遠い。
最近、秋で寒くなってきたし、ちょっと日も暮れてきたしこのくらいにしようかな。
「川谷さん、今日はこのくらいにします」
「あのっ、良かったらこのこのこの後。夕飯でも!」
川谷さんが汗をだらだら流しながら私に振り返る。
その時視界の隅に、すごい速さで突っ込んでくる車のランプが見えた。
「あぶないっ!」
叫んだ時には、大音量のブレーキ音と川谷さんが空中を飛んでいた。
……。
それからは記憶が曖昧だった。
気づいたら病院にいて、気づいたらガラスの向こうに川谷さんがいた。
川谷さんは目を開けない。
さっきまで私を夕飯に誘ってくれていたのに。
お医者さんなのか、川谷さんによく似た女の人なのかが、川谷さんが重体でとかなんとか。
生きてはいるけれど時間の問題とかなんとか。
体全体に力が入らなくてフラフラしながら病院から出た。
もちろんこんな大事件があってもプチ幸運もプチ不運もカウントされない。
プチじゃない事は間違いない。
さっきからプチ幸運の神様は一言も喋らない。
でも、こんな時こそカウントしたっていいのに。
え、こんな時って?
でもでも、1,500,000ポイントで万能薬がパンフレットにあったはず。
私は吐きそうになりながらフラフラと歩いた。
もう日も暮れて街灯だけになった河川敷に辿りつく。
そう、四つ葉のクローバー。
後、1万5千本くらい摘めば万能薬が手に入る。
私は黙々とクローバーを探し始めた。
……。
………。
『プチ幸運はプラス200。四つ葉のクローバーでプラス200プチ幸運はプラス18102。後少しで化粧品セットに交換できます』
プチ幸運の神様がありきたりな事しか言わない。
ようやく1時間で2本見つかった。
こんなんじゃ全然足りない。
「ねえ、ポイント前借できないんですか? 万能薬が欲しいのです!」
誰もいない河川敷に私の声が響いた。
『かわいそうですけれどできません』
私はまたクローバー探しに戻る。
友達呼んで手伝ってもらおうか? でも、こんな夜になんて言ってきてもらう?
どうしたらいいの。
探す指先に白いものがひらひらとまとわりついてきた。
空を見上げると、ひらひらと雪が舞っている。
川谷さんと見たら楽しかったのに。
『このままでは凍えて死んでしまいますよ。いったん中止しては……』
プチ幸運の神様を無視してクローバーを探し続ける。
川谷さんと探していたからここら辺はもうクローバーが見つからない。
泣いてもだめなのに、視界が涙でぼやけてくる。
本当に今日はついてない。
どうしちゃったんだろう。
いや、でも諦めちゃだめだ。
『プチ不運が私を呼んでいる……。お前は何をしているのです。この子は私が目を付けた子です』
『お、お前は……、いや、あのその』
「プチ不運の神様! こんにちわ! ねえ、私めっちゃ不運です! 四つ葉のクローバーください!」
頭の中に、懐かしいプチ不運の神様の声が響いた。
河川敷で騒いで不審者と言われようが、何しようがもうどうでもいい。
私は急いでプチ不運の神様にお願いした。
確か、プチ不運の神様は時々すごいポイントをカウントしてくれたし、不思議な事を起こしてくれた。
『………、なるほど。私が目を離している隙にそんな事が。異世界の物をこの世界の者に渡してはいけないのですが………』
「万能薬欲しいです!」
『いいでしょう。渡すのは私ではありません。決まりをつくったこいつです。彼氏が事故。雪の中クローバー探索。プチ幸運などというエセ神に絡まれる』
プチ不運の神様が次々に私の不運をカウントする。
『一面に四つ葉のクローバーを!』
プチ不運の神様の言葉とともに、辺り一面が四つ葉のクローバーになる。
「万能薬をください」
私がそう言うと、プチ幸運の神様の返事なしでキラキラと輝くボトルが現れた。
LEDみたいな眩しさで、ボトル自体が光り輝いている。
これが異世界の薬なんだろうか。
………、多分そうなんだろう。
ボトルに触ると、神様に聞かなくても使い方が分かった。
栓を開けて、川谷さんに届けと強く思う。
すると中のキラキラした光が空を病院の方に飛んで行った。
『サービスで彼氏の傷が治った事による混乱も修正しておきます』
「ありがとうございます! プチ不運の神様!」
『礼には及びません。今世は来世の予習ですから。しっかりと良い人生を終えるように。そしてから、そこの男と一緒に異世界へ来なさい』
あれ、私が異世界に行くのは決定?
ふと横を見ると、傘を差した川谷さんが立っていた。
私もいつの間にか傘をさしている。
もう、体は寒くなかった。
「あのっ、良かったらこのこのこの後。夕飯でも!」
川谷さんの言葉に、私は力強く頷いた。
「はいっ! もちろんです!」




