1.人を殺す五秒前
前々から書きたかった、というか子供の頃から書きたかった能力バトルものです。
ですが、カテゴリーを見るとこうあります『ヒューマンドラマ』……。
能力バトルものを書こうとしたらまたもヒューマンドラマに……。これは呪いなのでしょうか?
いえ、単に私が馬鹿で才能がないだけなんでしょうね。
そもそも、この前投稿した『アフターヒーローストーリーズ』はどこにいったのか……。
色々と私には問題が多いようです。まあ、ただの趣味なので責任もなく勝手気ままに書いて行きます。『アフターヒーローストーリーズ』もきっといつか書くでしょう。
では、お付き合いしてくれる優しい人に、まずはありがとうございますと伝えさせていただきます。このページを開いていただきありがとうございます。よろしければ最後までお付き合い下さいませ。
気が付くと、僕は走り出していた。足に溜まっていく疲労も、体から吹き出す汗も気にならなかった。
この行動の結果、結末がどうなるのかさえ気にせず、僕は走った。右手にはカッターナイフを持っていた。もちろん刃は突き出していて剥き出しになっている。
ただ夢中だった。目の前にいる女の子を救うのに必死だった。それ以外のことを考える余裕を失っていた。でもそれでいいと思った。それくらい、無我夢中になっていないと、あの男を殺すことができないから。
人を殺したことが無い僕では、こうでもしないと決心が鈍ってしまう。
僕は走った先にいる男を殺さないといけない。
殺す。殺す。殺して、息の根を止める。そうしないと、後ろにいる女の子が死ぬから。
僕は少女を守りたくて、その為には男を殺さないといけない。だから止まらない。止まるわけにはいかない。
そうして、走って、男の元にたどり着いてのど元に向けてカッターナイフを振るった。紙を切るよりも重く、ゴムを切るよりも軽い感触だった。けれど、どうにも気色悪く、二度と味わいたくない感触だった。
でもきっと、二度と味わうことはないだろう。
男が持っていたナイフが、僕の心臓に刺さっていたからだ。
冷静な判断力を失い、男がナイフを持っていたことに気づいていなかったんだ。
でも、大丈夫だ。薄れ行く意識の中と、暗くなっていく視界の中で、男が倒れるのが見えたから。男の喉に出来た傷は、人が死ぬのに十分なものだった。人の喉を切ったことはないが、そう思えるような大出血だった。
だから、僕は安心して倒れた。胸から血を流しながら、胸にナイフが刺さったまま、固いアスファルトに体をぶつけた。
ああ、僕は守れたんだ。ちゃんと人を殺せたんだ。
初めてのことだったから、ちゃんと出来たか不安だったけれど、上手くいって良かった。
人を殺しておいて、良いことなんてあるわけないのに、僕は満足だった。死ぬというのに幸せだった。
きっと、僕がこれを望んでいたからだろう。
そうだ。僕はこんな風に死ぬことを望んでいた。
『溺れている人を見たら、迷わず助けようとしなさい。たとえ自分が泳げなくとも』
死の間際、姉の言葉を思い出した。僕はこの言葉に縛られて生きていた。この言葉の通りに行動することに憧れていた。
僕はずっと溺れることを夢見ていたんだ。人を救う為に行動し、死んでしまうことを望んでいた。
だから、それが叶った今、僕には後悔なんて何もなかった。
だから僕は安心して、一切の恐怖を感じることなく――目を閉じた。