表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋の息子  作者: まぼろしおう
7/14

過去5

退院1週間前。


包帯から解放される日がやって来た。


俺は、嬉しくてたまらなかった。


仲間には退院の事を内緒にして、こっそり皆を驚かすのも良いかなー。

とか考えて、1人で喜んでいた。


「お願いします!先生!」


まずは、身体の右手を中心とした包帯の解放。


相変わらず、凸凹して火傷の後は治らないけど、いい感じだ。


次は、今まで触れる事の許されなかった、顔に巻かれた包帯の解放。


外された瞬間、病室ながら、今までとは違う風を身体全体に感じる事が出来た。


(よしっ!)


そして、隠れていた顔の感触を…


触れてみた。


こちらも、腕と同じで凸凹感がある。


まあ、しょうがないか。


何もしていないのに、左上に引っ張られる違和感…。


更に、髪に触れようと上に手をあてがうが、度々1.2本の毛に触れる事はあるけど、束になった髪の毛と言う感触がない…。



喜びが不安に変わる…。


病室を抜けて、鏡を探しに行く。


走る!


「何処だ!」


走る、探す、走る、探す、走る、探す


「何処に鏡があるんだ!」


走る、探す、走る、探す、走る、探す…


「無い訳がないんだ!」


走る、探す、走る、探す、走る…。




そして、とうとう窓に写る自分の顔を見つけた…。


これが、俺の顔…


これが、俺の顔…


これが、俺の顔…


思わず、声に出していた…


「これが!俺の顔!!!」


顔の左半分は爛れて、耳も変形。

左前方の髪は無くなり、左側面だけ禿げ上がっていた。


「ーーーーー!!!!」

言葉に表せない叫びを上げた!!



先生が、後ろからやって来た。


「これが最善だった。すまない」


「ーーーーー」


既に言葉にもならない…。


この、虚無感…。


涙も出ない…。


ふと浮かんだのが、自警団仲間の顔。


アイーダの顔…。


こんなんじゃ、会わす顔が無い…。


「先生…、退院を早める事は出来ますか?」


「あぁ、可能だよ…」


「じゃあ、明日にでもお願いします」



翌日。


顔に、布を巻き皆を避ける様に、1人家に帰った。


帰ると、父親(ウィリアム)が家の前で待っていた。


病院から報告があったのだろう。


「ちょっと来い」


「はい…」


工房に連れていかれた。


「まず、布を取れ」


「はい…」


父親の顔は変わらない。


「お前、道具を持てるのか」


「左手なら持てます」


「利き腕だった右手はどうした」


「痺れて上手く持てません…」


それを聞いた父親は目をつむり…

「そうか…。なら、鍛冶屋の成人の儀は無理だな」


「そんな!!」


更に父親は言う。

「片手で出来る鍛冶は無い、別の生き方を考えろ」


「出来ます!絶対やりきります!お願いします!成人の儀を受けさせて下さい!」


父親は凄みを増して、

「左手も失いたいのか!」


「ーーーー」

何も言えなかった。


「話は以上だ」


俺は、自分の部屋に入った。

久々の部屋だが変わりは無かった。

そして、机に置いていた鏡を手に取り、自分の顔を見直した。


何て酷い顔だ…。

左手周辺の火傷の後も見る。


俺、化け物じゃないか…。


「新・人物紹介」

エンハンス家

党首:ウィリアム・エンハンス

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ