過去2
他愛も無い話をしていると、前方に煙が立ち込めていた。
火事だ
しかも、その辺りにある家…
ガドの顔が思い浮かんだ。
ガドの父親は躾に厳しく、それに反抗しては家を追い出される事など、頻繁にある家庭で、その逃げ場の様に、よく俺達の集まりに参加していた。
その厳しい躾の反抗姿勢が性格についてしまい、突っぱねた性格で、少し扱いにくく暴力事もしばしば起こす男になっていた。
それでも、付き合いを続ければ多少はガドの気持ちも掴める様になり、ほっとけない皆の弟のような感じの大事な仲間になっていた。
嫌な予感だ。
3人は顔を見合せ、現場に向かい一斉に走った。
煙と人で、なかなか現地に着けない。
3人の行動はバラバラになったが、ゴールは同じ。
最後は合流出来る。
野次や逃げる人を掻き分けて走った。
そして、何とか着いた火事の家。
やはり、ガドの家。
ガド・シールド。
シールド家の鍛冶場である。
既に国をあげた、消化活動に入ってはいるが、一向に消える気配は無い。
それもそのはず、シールド家は盾をメインで作る鍛冶屋で、鉄・鋼だけの装備ではなく、人の好みや体質に合わせて布・革をベースに盾を作ったりしているので、他所の鍛冶屋より燃える物は多い。
回りに火が回らぬ様に消化し、消し炭になるまで、待つしか無いだろう…。
そんな中、消化活動をしている兵の指揮官らしき男の前で、取り抑えられてる、おっさんが居た。
……。
ガドの親父だ…。
必死に、指揮官に訴えている。
「ワシの倅が!」
「ワシの倅が!倅がおらんのだ!」
マジかよ…
今日は、ガドは集まりに来ていない。
てか、あいつは結局、1人息子と言うのもあり親の言う事を聞き入れ、家業に専念すると言う事で、暫く会っても無い。
今もまだ、親父さんは泣きながら指揮官に訴えている。
マズイな…。
そんな中、野次の中から
「シールドの御子息は中にいる!」
と、叫ぶやからがいた。
指揮官にも、その声が聞こえたのか、消化活動をしていた兵を何人か割いて、燃え盛る中の捜索活動を指示していた。
が、しかし、消化活動の人員を減らすのは厳しく、あまり人数を回せてない。
それに加え、炎の中に近付く事に躊躇し、捜索活動になっていなかった。
その状況を見て、俺は苛立ちを覚え、歯を食い縛り、咄嗟な判断で俺は炎の中に身を投じた!
「ガド!どこだ!ガド!」
「返事をしろ!俺だ!カイルだ!助けてやる!居るなら何か音を出せ!」
炎の燃える音と焼ける音もあって、なかなか変わった音は聞こえない。
「どこだ!音を出せ!」
クソッ…
火の影響で、軽い火傷はいくつもでき、服も多少燃えてしまい焦げていた。
更に、不幸なことに、自分の回りは既に火の海で外へ戻るのも難しくなっていた。
最悪だ。
その時だった。
追い討ちをかける様に、焼けた木が上から落ちて来た!
家の基礎の一部。
ヤバイ!デカイ!!死ぬ!!
思った時には、燃えた木を避ける事なく、本能的に利き腕の右腕で防いだ。
死にたくない思いと、その重みに負けまいとする思いで、訳の解らぬ奇声を発しながら、気合いを入れて、俺は防いだ右腕をそのままに、せめて大木の落下位置をズラスすくらいはっ!
「グラァーーーーーー!!」
と、渾身の力で落下の軌道を変えて、落ちて来た木と同様に倒れ込んだ!
不思議と防いだ腕の痛みは無かった。
そして、焼けた木の軌道をズラせた事を確認し、前方に見える光に安堵してしまい、気が抜けて、そのまま炎の中、意識は遠退き俺の視界はブラックアウトしていったのだった。
「新・人物紹介」
シールド家の1人息子
ガド・シールド