長い夜④
なぜ捕まっていたこいつは王城から抜け出せたのかが疑問であった。
そもそも、魔法が使えるのに王都の連中と戦うことができなかったのだろうか。
「そういえば、お前はなぜ逃げ出すことができたんだ?」
野盗は俯いて少し考え込んでいたが、思い当たることがあったのか、こちらを見て話し出した。
「なぜ、か。そうだな、実は私にも詳しいことがわからないんだが、私たちが捕まっていた場所で何かが起きたんだ」
「何か?」
「私たちの番が来る少し前に、別の魔族達が連れて行かれたんだ。しばらくしたら、その瞬間に爆発が起きて、王宮の警備がゆるんだんだ」
「そのあとは?」
「その爆発に乗じて数名で牢を抜け出した。牢から出たら、建物が半壊して手薄になっていた。その隙に逃げ出したんだ」
「タイミング的に、前に連れて行かれた魔族の誰かが魔法を使ったんじゃ無いのか?」
「いや、人間がどうやったかわからないが、魔法を妨害する結界みたいなものが使われていてな」
「だから魔法を使って抵抗もできなかったのか」
「そうだな、ただ、魔法が使えていたとしても修練を積んだ騎士に戦闘が素人の私たちが反撃しても難しかったかもしれないけどな……」
「で、その前に連れて行かれた魔族のことは何もわからないのか? 例えば、その中に俺ぐらいの年齢の女の子とか」
「お前ぐらいの? 確かその爆発があった時に連れて行かれた集団にいたような気がするな」
「お前が見たその子達はどうなったんだ?」
「私が逃げだす瞬間にちらっと見たときはいなかったな。爆発に巻き込まれたか、同じように逃げたか。何かあるのか?」
「あ、いや、なんでもない……」
「ああ、申し訳ないが詳しくはわからないんだ。それからは、逃げ出した同胞と共に魔法に関係していた人間を探して殺しまわっていたよ」
それで、今の状況に繋がるわけか。
他の4人は一緒に逃げた魔族なのだろう。
アリスも少し緊張しながら話しかけた。
流石に2回も襲われた相手だし、恐れるのはしょうがない。
「野盗さんは、王宮で眼鏡をかけた学者みたいな男性と女性はみませんでしたか?」
野党はギロッと睨みながらアリスの言ったことを訂正した。
「あ、野盗? そんなチンケな奴と一緒にするな!」
「ヒィッ!」
叫び声を上げて、アリスはこそこそ俺の影に隠れた。
「……サラだ」
「なに?」
「私の名前はサラだ……。因みに、お前が言ったような学者はいなかった様な気がする。私がいた所は処刑場みたいな場所だからな……」
「そ、そうですよね。こちらこそ、ごめんなさい」
少し俯いて寂しそうな顔をしていた。
アリスにも何か魔核移植に対して何か心当たりがあるのだろうか。
探している人が何か関係している?
「ところで、まだ捕まっている魔族はいるのか?」
「いや、多分いないんじゃないかと思う。私たちは最後の方だったからな」
残っている魔族はいないのか……。
しかし、その王城を半壊させた魔族がどうも気になるが、王都へ行けば何かわかるのだろうか。
旅に出る前に密かに誓った事、あいつを助けたい……と。
ただ、逃げ出した可能性とは別に最悪の事態は考えなくてはいけないとは思っている。
「決めた。やっぱり俺は王都に行くよ。どうなったか自分で確認したい」
「ライザさんに同行させてください。私も確認しなくちゃ行けないことがあります」
アリスも何かを決意したかの様に俺の方をじっとみて、王都への同行を求めて来た。
ふと空を見ると少し明るくなってきていた。
取り敢えず眠い……。
部屋に戻るか……。
俺は背伸びをしながら欠伸をする。
それに釣られたのかアリスも欠伸をしていた。
色々引っかかっていた事が少しわかってきたので、少し気を緩められたのかもしれない。
「取り敢えず部屋に戻って寝るか」
「そうですね。さすがに眠くなってきました、けど?」
アリスがちらちらとサラの方を見ている。
「お前ら……。私はこのまま放置か?」
「いや、だって縄を解くとまた殺しにくるよな?」
「……はぁ、もうしないよ。だから解いてくれ」
「信じられないな」
しばらく間を空けサラが口を開く。
「私も同行する。いや、させてくれ。私達をこんな目に合わせた奴を殺さないと……ダメなんだ。私の心が持たない」
サラは何かに耐えている様な顔をし、こちらを睨んでいる。
アリスがサラの気持ちを察したのか、近づき、縄を解き始めた。
「サラさん、私はあなたを信じます。ね? ライザさん」
「あ、あぁ」
俺に同意を求めて来たが、アリスの圧に負けてつい賛同してしまった。
まぁ、目的が決まったのであれば、サラが無差別に人間を攻撃することはないだろう。
「私とライザさんはこの件で王都へ行こうと思います。真実を知るためにもサラさんも一緒に行きませんか?」
アリスはさらに同行を持ちかけた。
真実を知ることで少しでもサラの気持ちが軽くなると思ったのだろうか。
アリスの申し出を静かに聞いていたサラの目から涙が溢れ、一言呟いた。
「……頼む」
とりあえず、野党と思われたサラの襲撃は片付いたが、一人旅のはずだったが、3人で王都を目指すことになった。