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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
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長い夜②

 野盗から知らされた事実に愕然としているアリスを尻目に殺意と目線こちらに向ける。

 同じ魔族とわかりながら同意しない俺にイライラしているようだ。


 俺は王都がやった事にいは怒りを感じてはいるが、俺の怒りはある一点でしかなく、それは幼馴染の安否だけだ。

 なぜなら、俺は魔法が使えない事で、同じ村の魔族や親からも虐げられてきたからだ。

 目の前の野盗が言う様に同胞が殺されたと言われてもピンと来ていなかった。 


 しかし、最初の襲撃の時は同胞のよしみで手を抜いてくれていたのだろうか。

 こちらはそんな気は全くなかったのだが。


「同胞でも邪魔をするならお前を倒してでもその娘を殺させてもらう」


 野盗は体勢を低く地面を踏みしめ、次の攻撃体勢に入る。


 野盗が言っている事は本当だと思うが、直に見ていないため実感が湧いていないのが事実。

 それに、アリスは何も知らずに魔法の力を手に入れてしまったのだから、被害者の何者でもない。

 多分、アリスの言っていた適正がある人間というのがキーなのだろう。

 適正者を選び、魔法の力を与えてる者。

 つまり、魔族を捕らえ、魔核をえぐり出し虐殺しているやつが黒幕か。

 目の前の魔族の様に人間全員を憎むような感情には支配されていない。

 あまつさえ、真実を知らないアリスを見殺しにはできない。

 覚悟を決め、剣を構え戦闘体勢を取る。


 野盗は呟く。


 --我に風の加護を--


 野盗の足元に魔法円が展開し光り輝く。

 まずい、魔法か?


 効果はわからないが、操者自身に魔法円が展開されるなら強化系なのはわかる。

 次の攻撃に備え目を凝らしていると、野盗が動いたが、今までのスピードとは段違いだ。

 先ほど使った魔法は速度が上がる効果なのか、今までのそれを凌駕している。

 全力で走り距離を取ろうとしたが、追いつかれ腹部に蹴りを食らう。


 あのスピードで蹴られた腹部に強烈な痛みを感じ、衝撃で地面を転がった。

 口の中に血の味が広がる。

 猛烈に痛い腹を抑え立ち上がり、少しでも攻撃を避けられる様にまた走り出す。


 くそっ……。

 すぐに追いつかれ容赦なくナイフを突き立てられる。

 致命傷は避けているものの、全てを剣で受けきることができず、刃が身体中を蹂躙する。

 しかし、致命傷もなく相手の攻撃を受けられるのは師匠にしごかれたおかげか。


「くははは、どうした! もう終わりだな!」


 野盗が俺の懐に入り、俺の身体を蹴り上げる。

 何度目かの攻撃を受け、すでに意識は朦朧としていた。

 もうダメだと思った瞬間、衝撃で開いたのだろうか、腰に下げている本のページが開いていた。


 もしかして、そういう事か。

 師匠の言っていた言葉と、刻まれた文字により推測する。

 元々白紙だった本には二つの魔法名が記されていた。

 最初の時はアリスと話をしていたので、気づいていなかったのか、多分、魔法詠唱を視認する事で同じ魔法が本に刻まれるのだろう。

 師匠のいつか使えると言っていたのは、この事だろうか。


 しかし、あくまで俺の想像でしかないが、これに賭けるしかない……。

 俺は野盗と同じ言葉を呟く。


 --我に風の加護を--


 瞬間に野盗の方へ走り出し、足元に魔法円が展開される。

 当たりか!

 同じ魔法を使った事で野盗が驚愕している。


「貴様! 同じ魔法を!?」


 スピードのアドバンテージは潰した。

 しかし、元々剣技だけで勝てる相手ではなかったし、満身創痍の俺がどうやって勝つかを考える。

 魔法で強化され互いに高速戦闘を繰り返すが、野盗の攻撃スピードが上回っているため、防戦一方になってしまう。

 やっぱあれしかないか……。


 足を滑らせる振りをして膝をつく。

 野盗はそれをチャンスだと思い突きを繰り出しきた。


「ハハッ! これで終いだな!」


 俺は笑って告げる。


「なんちゃって!」


 野盗の笑顔が凍る。


「は?」


 どうせ避けられないのなら当てさせればいい。

 足を滑らせ、わざと突き攻撃を誘った。

 迫るナイフに左肩を差し出しだす。

 激痛が走るが、右手の剣を投げ捨て、瞬間に止まった野盗の腕を掴んだ。


「いってー!! でも、やっと捕まえた」

「くそっ! 離せ!」

「やなこった!」


 振り解こうとする野盗に対し、頭突きを繰り出す。

 怯んだ野盗に追い打ちをかける。


「お前にはまだ聞きたい事がある! まずは大人しくし寝てろ!」


 渾身の力を込め野盗の顔を殴りつける。

 魔法や剣技には劣るが、力には自信ありだ。

 良いところにクリーンヒットしたらしく、野盗は地面に叩きつけられ、昏倒した。


「あー、クソッ!」


 毒づき、肩のナイフを抜いた。

 痛い、兎に角痛い。

 朦朧としてきたが、血が噴き出す傷口を手で塞ぎ、アリスと同じ言葉を呟く。


 --神よ、彼の者の傷を癒したまたえ--


 傷口を押さえている手が光りだす。

 流れる血が少なくなり、徐々に塞がっていく。

 傷は治るが、痛みは残るのが辛い。

 しかし、同じ魔法が使える事が当たっていてよかった。

 最悪アリスに回復してもらうのも考えたが、まだアリスの意識が戻っていなかったのでそれも叶わなかった。

 本当に自己回復ができてよかった……。


 痛みが残る身体を押して、まだ復活していないアリスに駆け寄り声をかけた。

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