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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
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長い夜①

 アリスに部屋へ案内され、食事も貰った。

 司祭のあの顔を見てしまったせいか、毒でも入ってるんじゃないかと思ったが、特にそんな事もなく食事を終えた。

 お腹もいっぱいになったのでベッドで横になった。

 だが、全然眠れない……。

 旅に出てから、立て続けに色々な事があった。

 野盗との戦い、魔族ではないモノの魔法、更には今、人間の建物で宿泊している。

 ベッドはふかふかで寝やすいのだが、気が昂ぶっているのか、眠れる気がしなかった。

 少し夜風に当たろうと思い部屋を出る事にした。

 念のため帯剣し、師匠からきつく言われてたし、白紙の本も持って行こう。

 

 アリスに案内されている途中に見た中庭を事を思い出し、そこへ向かった。

 夜中に歩く長い通路は少し不気味であった。


 やっと中庭についた俺は丁度あった長椅子に腰掛け、背伸をする。

 あー、なんか疲れた。

 急に色々あったし、行先不安だ。

 考え事をしていると、近くで物音がした。


「誰だ!」


 剣を抜き、身構えた。


「わわっ、ごめんなさい、私です! アリスです!」


 ワタワタと慌てて植込みの後ろから出てきた。

 俺は、ため息をつき、話し始めた。


「こんなとこで何やってたんだ?」

「あ、いえ、中庭に歩いていく姿が見えたので、コッソリついてきちゃいました」

「あっそ……」

「隣いいですか?」

「ああ、構わないよ」

「ありがとうございます」


 ニコニコしながら隣に座るアリス。


「今日は色々ありましたね〜」

「そうだな〜、旅に出て1発目でこれだったしなぁ……」

「えっ!旅をされているんですか? でも、ライザさんが通りかかってくれたおかげで助かっちゃいましたけどね」

「まぁ、役に立ててなにより……」


 少し間が空いたが、アリスの方からまた話しかけてきた。


「何故か、ライザさんと初めてあった気がしなくて、安心できたんですよね。おかしいですよね」

「俺は初めてだと思うけど?」

「そうですよね、なんて言うか、久しぶりに会ったというか、懐かしいと言うか、やっと会えたなーみたいな、不思議な感じでした」

「よくわからん……」

「そうなんです、よくわからなくて、もやもやした感じで、上手く言葉に表せないんです」


 アリスははにかんだ笑顔でこちらをみているが、俯いて何かごにょごにょ言っている。


「もしかして、一目惚れかもなんて……」


 消え入りそうな声で何か言っているが、上手く聞き取れなかったので、聞き返した。


「あ、いえ、何でもないです!」


 と、恥ずかしそうに答え手を振っていた。

 その仕草に可愛いと思ってしまった……。

 アリスを見ていると魔族も人間もそんなに変わらないんじゃないかと思えてくる。


「あ、そういえば、ライザさんは旅をされてるんでしたね?」

「あー、旅? そうそう、旅をしてるんだ」


 実際は旅をするのが目的ではないため、返答に少し悩んでしまった。


 一人で息抜きをするつもりだったが、特に会話もなく2人で座っているだけの時間を過ごすのも悪くないと思った。


 しかし、今が一番気になってだ事を聞けるタイミングだ。


「そういえば、魔法ってなんで使えるんだっけ?」

「あ、馬車で少し話ししましたね。」

「ああ、どうも引っかかってね。興味本位だけど」

「なんでも、あまり詳しくはわからないんですが、適正がある人に神様から授けていただける力だとか。たまたま私にもあったみたいですね」

「適正……ね」


 どっかて聞いたことがあるようなフレーズだな……。


「はい、結局、どうやって授かったかわからないです。王宮に呼ばれて、ベッドに横になったらふわふわっとして寝てしまったんです。目が覚めた時に終わったと聞かされて」

「で、すぐ使えるようになったのか?」

「いえ、どんな魔法が使えるか少し検査みたいなのがありましたけど」

「人間が魔法が使えるとかはまだ公になってないとか?」

「はい、まだ人に話すなと言われてました。多分、欲し人が多くて騒ぎになっちゃうからですかね」


 アリスも明確な事はわからないようだ。

 神様から授かる力……か。

 そんな事で魔法が使えるようになるなら楽なものだ。

 俺なんて、どんな目にあったことか。


「なんだ……?」

「え?」


 急に回りの木々がざわつき始めたのを感じ、椅子から立ち周りを見渡す。

 昼間の野盗の時に感じた気配を感んじた。


 正面を見ると、昼間に会った野盗の1人がこちらへ歩み寄って来る。


「またお前か……」


 面倒くさそうに野盗が呟いた。


「それは、こっちも言いたいんだが……今回は仲間は一緒じゃないのな?」

「あぁ、私1人だ……」

「確か5人ぐらいいたよな。もしかして、仲間割れでもしたか?」

「ふざけるな。私たちは仲間割れなどしない」


 今日の野盗はやたらと話しをしてくれるな。

 とにかく隙をうかがいつつ、剣の柄に手をかける。

 それと同時に、野盗が距離を詰めナイフを振り下ろしてくる動作に合わせ、鞘から剣を引き抜く。


 ガキン


 刃が交差し、大きな金属音がした。

 衝突した瞬間、野盗は左に交わし距離を取る。


「ふん、貴様はまた邪魔をするのか」


 吐き捨てるように野盗が叫ぶ。


「いきなり襲われたら応戦するだろう!」


 剣を構え、野盗を見る。

 野盗は構わず、俺の方ではなく、アリスの方へ向き直り走る。

 やはり、アリスか狙いらしく、庇いながら相手の刃をいなす。


「貴様は見逃してやろうと思ったが、庇いだてするなら容赦はしないぞ」

「見逃してくれるつもりだったのか? そりゃどーも。俺が弱そうだからか?」

「違う。そうじゃない。私に同族と戦う意味がない。憎いのは人間だけだ」

「人間が憎い? アリスは確かに人間だが別に何もしていないだろう?」


 微妙に噛み合ってないような気がするが、野盗を煽る。

 その状況に徐々にイライラしだした野盗が叫ぶ。

 しかし、今同族といったか?

 もしかして、こいつも魔族なのか?


「とぼけるんじゃない! とにかくそこをどけ!」


 とぼける? いったい何の話をしているんだ?

 俺は野盗の言っていることがわからず、再度剣を構え緊張する。


 野盗から思いもしない言葉が出た。


「何故だ! 貴様も魔族だろう、人間が何をしたかわからないのか? 何故その人間をかばう!」

「な……?」


 ただの野盗じゃなかったのか? やはり俺と同じ魔族なのか。


「貴様も魔族なら邪魔をするな!」

「魔族だからって何故人間を狙うんだ!」

「人間が敵だからだ! 特に目の前のやつは!」


 同じ魔族、人間が敵…? ハッとある考えが脳裏をよぎった。


「もしかして、お前も仲間を……?」


 同じ魔族といった野盗は、怒りの表情を浮かべ声を荒げる。


「そうだ!!」


 あいつと俺は同じ状況だという事はわかったが、アリスを狙う理由がいまいちわからない。


 野盗は再度アリスへ向けてナイフを振るうが、ギリギリのところで受け止める。


「しかし、連れて行かれた事とアリスは関係ないだろう」


 剣に力を込め一閃すると、野盗はバックステップでかわし、


「お前達を襲った後、暫く観察していた。貴様も見ただろう! そこの人間が魔法を使うところを! 何故魔法を使えるかわかるか! 同胞の魔核を移植されたからだ!」


 魔核というのは魔族であれば生まれつき体内に生成されるものだ。

 魔核があるおかげで魔族は魔法が使えるようになる。

 俺は生まれつきその魔核がなかったのだが……。

 それを人間が奪っているというのか?


 アリスと野盗の話が繋がって行く。

 しかし、それは残酷な事態を考えてしまう。


「貴様にわかるか! 捕えられた魔族は生きたまま腹を裂かれ魔核を奪われるんだ! 目の前で! 何人も! 何人も! 何人も! 断末魔を上げながら! 私の恋人も目の前で殺された! 私達が一体何をしたと言うのだ……。わかるか! この絶望! 怨み!……憎い! 人間が憎い……!」


 刃を交えながら野盗は叫ぶ。

 野盗の尋常ではない殺意から嘘ではない事がわかる。


 アリスを見ると口を手で押さえ、愕然とした表情で、


「……そ、それは、本当……なん……ですか……? わ、私は神様から……え……?」

「アリス?!」


 野盗の言葉から衝撃を受け座り込んでしまっていた。


 多分、アリスは本当に何も知らなかったのだろう。

 神の力と言われ、全く知らずに……。

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