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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
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教会②

 アリスと共に教会の入り口をくぐり、広間へ繋がる通路に入った。

 そのとき、こちらへ猛進してくる人影が見え、危機感を覚え、後ずさりした。

 その人影が徐々に近づき、その正体が少女だとわかった。

 少女は叫びながらアリスへダイブする。


「アリス〜! おかえり〜!」

「わわっ、アルマ! た、ただいま!」


 少しよろめきながらアリスが少女を抱きしめた。

 アルマと呼ばれた少女はアリスより幼い感じで、6〜8歳ぐらいだろうか。色白で黒髪が腰まで長く、清楚な風貌だ。

 因みに、アリスは12〜14歳ぐらいに見える。


 遅れてもう1人同じぐらいの少女がトテトテと小走りでアリスへ駆け寄る。

 アルマとは違い、肩までの髪と褐色肌の少女だ。


「……アリス、おかえり」

「うん! ただいま!」


 少女二人はこちらをちらちら見ながら、

 アリスにひそひそと何か聞いている。


「な、なんだ?」

「あ、この方はライザさんと言って、悪い人に襲われたときに助けてくれたんですよ」

「え! 襲われたの?! 大丈夫なの?! ナンデ?!」


 少女2人はワタワタしながらアリスを気遣っているところを、アリスは大丈夫だと2人をなだめている。


 取り敢えず安心したのか、ふ〜んと言う顔で再度俺を見ている。

 どうも警戒されているのだろうか。


 ふと通路側に目をむけると、奥から息を切らしながら走って来る人影が見える。


 ふらふらとこちらへ到着し、呼吸を整え、

「はぁはぁ、やっと追いついたぁ〜。2人とも早いよ〜」

「ごめんなさい。アリスが帰って来てると聞いて嬉しくって……」


 後から来た女性は、背格好は俺と同じぐらいだろうか。

 ウェーブのかかった薄い金色の髪をしているおっとりした口調の女性が現れた。


「あ、アリスだ〜。おかえりなさ〜い」


 今気づいたのか! とツッコミは取り敢えず飲み込んだ。


「マリアさん、ただいま。2人の面倒を見て頂いてありがとうござました。2人とも、マリアさん困らせなかった?」

「大丈夫! 困らせてないわ!」

「……うん」


 少女2人はアリスに困らせて無いことをアピールしていたが、ふとマリアの顔を見ると苦笑いしていた。

 かなり手を焼いたのだろう。


「お待たせしてすみませんでした。それでは行きましょうか」


 まだ話したりなさそうな3人と別れ、再び通路を歩き出す。


 遠くから、先ほどのお子様二人の声が聞こえた。


 「アリス〜! また後でね〜!」


 アルマが叫んで手を振っていたので、アリスも手を振って応えた。


「アリスはさっきの3人とは仲が良いんだ?」

「ええ、教会に来てからはずっと一緒なんですよ」

「ここに来る前は別のところに?」

「私は王都に住んでたんですが、両親の仕事の都合で5年前からこちらでお世話になってます。アルマとジュノは元々身寄りがなくて、私がきてからここで一緒でした」

「マリアって人は?」

「マリアさんは、私がここにくる前から教会にいらっしゃるみたいですね」


 アリスが元々王都にいたのはビックリしたが、5年間もの間、両親と離れているのが気になるな。


「そういえば、なんか子供が多い気がするんだけど?」


 ここまで歩いて来る途中でアルマとジュノ以外に同じぐらいの歳の子を何人か見かけた。


「元々ここは昔の大戦時に力をお借りした神様を祀る場だったんですが、最近は孤児院みたいな感じですね。王都から支援も頂いてるんですよ」

「そうなんだ。あのぐらいの子は手がかかるから大変そうだな」

「えぇ、そうなんですよね」


 アリスが困った様にクスクス笑っている。


「あー、そういえば、何処に行くんだっけ?」

「あ、すみません。そういえば言ってませんでしたね。今から司祭様に会いに行きます。私が助けて頂いたこと話したら、司祭様が直接お礼がしたいとの事で」


 そっちから来いよ! とイラっとしたが、心証が悪くなるので我慢した。


 しばらく歩くと、広間があり、白い衣装をまとった老人が待っていた。

 いかにも偉そうな身なりなので、多分、アリスの言っていた司祭なんだろう。


「司祭様、お連れしました」

「ようこそいらっしゃいました。私はこの教会で司祭をしている司祭のトマスと申します。この度はアリスが危ない所を助けて頂きありがとうございました」

「いや、なんとか追い払っただけで、力不足でした。こちらもアリスに傷を魔法で治してもらって助かりました」


 しまった、うっかり魔法と言ってしまった。

 が、その時、司祭がギョッとした顔でアリスの方を見た。

 しかし、その顔にアリスは気付いていなかった。


 てっきり司祭だから知っているものだと思ったが、もしかして知らなかった? もしくは、俺が知っている事に驚いたのか?

 そもそも、アリスが王都に行ってなにをするかなんて司祭なら知っている筈だ。

 だから、驚いたのは後者だろう。

 何か知られたらまずいことでもあるのか?


「と、取り敢えず本日はもう日が落ちて来てますので、もし差し支えなければこちらでお泊まりになったら如何でしょうか?」

「それじゃあ、お言葉に甘えてお世話になります」


 司祭がアリスへ部屋の案内を頼み、アリスが先導してくれた。


「それでは、お部屋にお連れしますね」

「ああ、助かる」


 そういうと、またアリスと建物の中を歩き出した。

 しかし、通路から見ると中庭もある広い建物だと思う。

 野宿ばかりだったので、今日はゆっくり眠れそうだ。

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