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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
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攻城直前

俺は窓から射し込む光で目が覚めた。

重い身体をゆっくり起こす。

昨日の戦闘を思い出すと身体が震えている。


そういえば、魔法が使えるようになって、旅に出てから何度か戦う場面に合ったが、実際のところ俺は単独で戦ったことなんてなかった気がするし、いつも師匠やサラに庇ってもらっていた。


村にいた頃の劣等感が頭の中を駆け巡り、吐き気がした。


今日が王城に乗り込む日か……。

俺が参戦して何かの足しになるのだろうか。

悔しさと悲しさを堪える様に唇を噛む。


誰かが用意してくれたのか、ベッドの傍にあった服に着替え広間へ向かう。

屋敷中央の階段に差し掛かった辺りで反対側からアリスに会った。


「おはようございます。ライザさん、昨日はお疲れ様でした」

「おはよう。昨日……か、俺は何も出来なかったけどな……」


アリスが悲しそうな表情で俺を見ている。

不甲斐ない俺を憐れんでいるのだろうか。


「ライザさんは、私を助けてくれたんです! 何も出来なかったなんて事ないです! それに、リズの事だって……」

「俺は何もしちゃいない、できなかったんだ……」


昨夜の事を思い出したのか、アリスの目には涙が浮かんでいた。

ヴァリアントはサラが倒したのだろう。

俺の記憶はアリスを庇った所から途切れている。

俺は結局何も出来なかった……。

アリス顔をこれ以上見る事が出来なくなり、互いに言葉を詰まらせたまま、黙って階段を降りた。


広間には師匠とサラ、マリアが既に集まっていた。

リズはいなかったが、まだ部屋で休んでいるのだろう。

結局、ギドは来なかったのか……。

唐突に師匠がアリスに話し始めた。


「アリス、お主の魔核はどうやって手に入れたものじゃ? もしくは、本当に連れてこられた魔族のものか?」

「どう言う事ですか?」

「一晩考えたんじゃが、リズが人間に戻れたのは回復魔法ではやはり考えられない事なんじゃ」


アリスはよく分からないと首を傾げている。

一体何が言いたいんだ?


「あれは、回復なんてそんな生易しいものじゃない、リズが人間だった頃に巻き戻ったんじゃ」

「ちょっと待てよ、言ってる意味がよくわからないんだが……」

「最後にアリスから放たれた光を見た事がある。あれはシア、クロノシアの魔法じゃ」


師匠が言いたいのは、アリスの魔核はクロノシアの物なのでは? ということか。

クロノシアと言ったら、師匠と同じく魔王クラスの魔族だ。

前に聞いた師匠の説明では、インフィアが使った王都全域を巻き込む広域魔法の発生源を道連れに次元の狭間に転移したんじゃなかったのか?

そんな状態で魔核だけ残す事なんて出来ただろうか。


「師匠、それは流石に無理なんじゃ?」

「しかし、あんな芸当はシアの魔法しか考えられないんじゃよ」

「たまたまアリスが使えるようになったとか?」

「そうかもしれんが……」

「んで、何か意味があるのか?」

「大ありじゃ!」


「王宮の最深部には王が待ち構えているじゃろう」


まあ、王都の主だから最後に出てくるのは当たり前か。

しかし、インフィアが黒幕じゃなかったのか?

サラも同じ疑問を持ったようだ。


「黒幕はインフィアではないのですか?」

「多分じゃが、インフィアじゃない気がするんじゃ。どちらにしても、わしに昨晩のリベンジマッチを仕掛けてくるじゃろう。そうなった場合は先に行ってくれてかまわん」


師匠が言うにはインフィアの性格は負けず嫌いで自分の納得が行くまでこだわるのだそうだ。


「取り敢えず、今回王宮に乗り込むのにコソコソする必要が無くなったという事じゃ」

「そうですね。既にインフィアに知られているのであれば、変わらない気がします」

「騎士達が出てきたら面倒じゃがな。後は、あの変異体か、名称はさしずめヴァリアントと言ったところかのぅ」


確かに、相手は王とインフィアだけじゃないか……。

まぁ、騎士といっても普通の人間だ。

師匠なら特に問題にはならないと思うが、師匠の言う様にヴァリアントが沢山出てきたら厄介だ。

それこそ、俺は何も役に立たないだろうな……。


「なぁ、師匠、今日の件なんだが、俺は行かなくていいんじゃないか……?」

「なぜじゃ?」

「だってさ、俺ってなんの役にも立たないと思うんだけど」

「いきなりどうしたんだ?」


師匠とサラが眉間にシワを寄せて俺を見た。

アリスとマリアに至っては寂しそうな顔をしている。

今更こんな事を言う俺も空気を読めていないのはわかっているが、昨晩の事、これまでの事を考えると、自分は今回の戦いにいらないんじゃないかと思えてならない。


周りの目が俺に集まると、過去と現在の劣等感が怒りになって噴出した。


「俺が行ってどうなる!!!!」


俺の叫びで辺りが静まり返ったが、それでも続けた。


「俺が、俺がなんの役に立った!? 何度か戦ったが、1回も勝ったことがない! 昨日の戦いだってそうだ! 途中で気を失って! それに、助けられるばかりで……折角魔法が使える様になったのに……」


怒りに任せ叫んだが、最後の方は涙声になっていた。

自分の情けなさ、不甲斐なさが我慢ならない。

それに、みんなに迷惑は掛けられない。


師匠が悲しそうな声で話し始めた。


「元々、わしが発端で起きた事じゃ、ライザ、今まで迷惑をかけてすまんかったな。わしから強制できる立場じゃない、特にお主には……大丈夫じゃ、わしに任せておけ」


俺の顔を笑顔で見つめていたが、その目には涙がたまっている様に見えた。

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