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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
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王都の夜②

 ふと庭の隅へ目を向けると、灯りがチラチラ揺れているのが見えた。

 その灯りは次第にこちらへ近づいて来たので、目を凝らすと、灯篭の火の光だとわかった。

 持ち主は、あれは、リズか?

こんな時間に見回りでもしているのだろうか。


「あら、ライザ様? こんな夜更けにどうなさいました?」

「いや、なんか目が覚めちゃってね」

「では、寝つきが良くなる温かいお茶でもお入れしましょうか?」

「あー、じゃあ、お願いしようかな」

「わかりました! 直ぐにお持ちしますね!」


 そう言うとリズは屋敷の中に戻っていった。

 彼女がこんな時間に外で何していたかわからないが、手間をかけさせてしまったと少し後悔した。

 しばらくするとリズが戻ってきて、庭にあるテーブルに準備をしてくれた。

 屋敷に来た時もそうだが、リズの入れてくれたお茶を飲むとホッとする。


「そういえば、リズはアリスの屋敷にいつからいるんだ?」

「そうですね。お嬢様がまだ6歳ぐらいの時でしょうか。実は私は孤児でして、教会でお世話になっていたんです」

「教会って、マリアとアリスがいたところか?」

「そうですそうです。流石に教会にはずっとはいられないので、16歳ぐらいになると働きに行くようになるんですが、旦那様に声をかれられまして、こちらで10年ほどお世話になったんです」

 

 10年間か、じゃあリズは今26歳で、アリスは16歳か。


「2年前ぐらいにお嬢様が教会に行く事になって、しばらくお屋敷のお掃除をしていたんですが、だんな、さま? から、おしろにきてほしいって……あれ? それから、おもいだせません……」

「お、おい、大丈夫か?」


 リズは頭を抑えうずくまってしまった。

 昔の事は鮮明に話てくれるのに、最近の事は記憶があやふやになっているみたいだ。

 城で何かあったんだろうか。

 取り敢えず、話を変えよう。


「そういえば、リズばこんな時間に何してたんだ?」

「えーと、誰かに呼ばれたような?」

「こんな時間に?」

「えぇ……何かそんな気がして庭に出たんですが……」

「誰に?」

「誰に……でしょう?」

「いや、俺に聞かれても……」


 俺が聞いたのに、質問で返されてしまった。

 誰かに呼ばれた? こんな時間に?

 まさか、と思い辺りを見渡したが、特に変わりはない……か? と、思った瞬間だった。

 屋敷辺り一帯の空間が切り取られた感じがし、膨大な魔力の重圧を感じた。

 上空を見上げると、王都の広間で見たフードの人物が浮いていた。


「……何しに来た?」

「要件なんて、わかっているだろう? お前たちを排除するために出直して来たんだよ」

「準備?」


 フードの人物と会話をしていると、魔力の気配を感じ取ったのか師匠、アリス、サラ、マリアの4人も飛び出して来た。

 師匠は上空を見るや、自分も飛行の魔法でフードの人物と同じ高さまで飛んでいた。


「お主は……もしかして……インフィア……か?」


「あぁ、そうだ!」


 フードの人物は特にごまかすこともなく、フードを脱ぎ去った。

 師匠を見ると少し震えているような感じがした。


「なぜじゃ? あの時、倒されたはずじゃ?!」

「ん? 何のことだ?」

「何のことって、大戦の時じゃ!」

「何を言っていかわからないが、この俺が負けるわけないだろう?」


 師匠とインフィアの会話を聞いていると、微妙に噛み合っていないきがするが……。

 インフィアは大戦の時に倒されたことを覚えていないのか?


「とりあえず、下のやつらには性能実験に付き合ってもらおうとしよう」

「何のことじゃ?」

「まぁ、見ていればわかるさ」


 インフィアはそういうと、下にいる俺たちをめがけて何か魔法を使ったように見えた……が、何も変化がないところを見ると気のせいだったのだろうか。

 その時、隣にいたリズがうめき声を上げながら頭を抱えうずくまっていた。

その様子を感じ取り、アリスが駆け寄ってきた。

「リズ! リズ! 大丈夫?!」

「あァぁァ、おじょうさま、ハ、ハナレテクダサイィィ」


 リズの悲痛な叫びが聞こえ、その身体の中に何かが這っているかのように蠢いていた。


「ソウダ……アノひとは…………ワタシは……おシロで……」


 リズはインフィアの姿を見ると何かを思い出したようでブツブツと喋っている。

 俺は危険を感じアリスを連れ後ろへ下がった。

 一体何が起ころうとしているのだろうか……。


 リズの身体が膨らみ、膨らんだ肉は皮を裂き、血を吹き出しながら徐々に大きな肉塊に変貌していく。


 アリスは泣きながら、リズの名前を叫び続けたが、が、リズの身体はすでに人間としての原型をとどめておらず、アリスの言葉も届いていないようだった。


「あはははは、これも魔核移植の産物だ! 適正のないやつへ埋め込んだ魔核にちょっと魔力を注いで活性化させると、こんな醜いバケモノになるんだぜ!」

「なんてことをしたんじゃ……」


「リズを元に戻して!」

「これもお前の親の研究の成果ってやつだ! 感謝しているよ」


 師匠がこちらへ向かおうとするも、その道はインフィアに遮られた。


「ディーナ、お前の相手は俺だよ」

「インフィア、きさま……」

 

 リズだったものはゆっくりと立ち上がり、こちらを向いた。

 その風貌はもう人間と呼べるようなものではなく、灰色の巨大な怪物となっていた。


 怪物はこちらを見ると大きな手を振り下ろしてくる。

 アリスを抱え、その腕を避ける。


「リズ! やめて!」

「アリス、下がれ! あれはもう……リズじゃない……」

「でも、でも!」

「マリア! アリスを連れて下がってくれ!」

「は、はい」


 俺はマリアにアリスを頼み、無理やり下がらせた。


「サラ、いけるか?」

「当然だ」

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