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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
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団欒と真実

 俺たち一行は師匠の恫喝、もとい交渉で盗賊の宿営地へ案内されることとなった。

 野原に天幕が張られている簡素な物を想像していたが、期待を裏切り想像以上のしっかりした建物が建っていた。

 野盗が建てたわけではなく、ちょっと昔に王都までの宿営地として利用していた場所だったのだが、別ルートで新しい宿営地ができたため、廃墟となった建物を野盗が占拠したようだ。


「やっとゆっくりできるのう。馬車は腰が痛くなていかん」


 今でこそは十代前半の背格好をしている師匠だが、見た目とは裏腹な事をぼやいていた。

 師匠は野盗達に食事を用意するように話していた。

 もう野盗達は最初に襲って来た猛々しさはなく、今は師匠の使いっ走りでしかなくなっていた。


 魔族は内包する魔力で身体が活性化するらしく、長命となっている。更に、身体能力能力が高い年齢が一番長く続き、魔力量で生きられる年齢に差が出てくる。

 大戦の頃から、生きているのだから、もう数百歳になるのだろうか。

 やはり魔力量はハンパないのだろう。師匠よ、全くもって恐ろしい……。

 そういえば、この本の事を聞けていなかったと思い、食事をしながら師匠に聞いてみることにした。


「なぁ、師匠。この本なんだけどさ、相手の魔法を覚えられることはわかったんだが、一体どういうものなんだ?」

「あー、それはじゃな、厳密に言うと相手の魔法を覚えているわけじゃない」

「そうなんですね。サラさんや私の治癒魔法を覚えられましたけど」


 俺に続き、アリスも話に加わって来た。

 しかし、その質問を聞き、師匠の顔が一瞬曇った。


「その本の話というか、お前の事に関する事になってしまうが……」


 師匠はあまり離したくはないと言う表情をしていたが、やはり色々隠していることがある様だ。

 もしかして、この本は俺に移植された魔核と関係があるのだろうか。


「この本はお前に移植した魔核と繋がっておる。その魔核の元々の持ち主が使っていた魔法を再度習得し、再現しているだけじゃ。だから、魔核の持ち主が使える魔法しか使えないし、覚えられん」

「その魔核の持ち主って……?」

「その魔核は魔力がないある人間のために作った一品物じゃ。その人間にしか使えないし、流用もできん」

「いや、師匠、はっきり言ってくれないとイマイチ話がわからん。そんなものが何で俺に移植できたんだ?」


 アリスがはっとした顔をしていた。意味がわかったのだろうか。


「ディーナ様、もしかして、その人は大戦の時に戦ってくれた方でしょうか?」

「そうじゃ」

「もしかして、ライザさんとその方は……?」


 アリスは最後まで言葉にはしなかったが、師匠はその内容を理解したのだろう、静かに首を縦に振った。


「な、なんだよ、二人とも……? どう言うことだよ」


 しばらく沈黙の時間が流れ、俺は頭の回転がいい方では無い事は理解しているが、師匠とアリスが何を言いたいのかはそれとなくわかっていた。

 自分自身にその事実を受け入れたく無い気持ちがあるのだろう。すんなりと受け入れることができていなかった。

 そんな状況を見かねたサラが口を挟んで来た。


「イマイチ私もわかっていないが、大戦の頃に人間側を守った奴の生まれ変わりみたいなのが、お前なんじゃないか、ということだ」


 確信についた発言に俺は自分が自分で無くなってしまうんじゃ無いかと困惑していたが、サラの言葉に師匠が反応した。


「そうじゃ」

「え? 本当に俺が生まれ変わりってだって言うのか?、そんなものどうやって? 俺は、生まれ故郷があるし、そいつは大戦で死んだんだし、生まれ変わりなんて本当にあるのか?」

「そうじゃ」

「知ってるんだったら、ハッキリと言えよ!」

「そうじゃな……すまん……」

「なんで……謝るんだよ……?」


 同じ言葉しか言わない師匠に激昂したが、この話を始めた頃からずっと俯向いているため、強く言葉をかけることができなかった。

 しばらく静寂が流れ、師匠が俺の不安に思っていた事の事実を口にした。


「すまん、ライザ、お前は、200年前の大戦で一度死んだ。」

「なんだよ……それ……」

「わしの我儘で現世に輪廻させたじゃ」


 輪廻? なんだそれ? 師匠が突拍子も無いことを言い始めたため、理解に苦しんだ。

 ついにボケたかと思ったが、そうじゃなさそうだ。


「わしらの身勝手で巻き込んでしまった最愛の人間への罪滅ぼしのつもりじゃった。わしらの里に招き入れなければ大戦も起こらなかったし、そいつの平穏な人生も乱してしまった。わしらが招いた戦争だったのに、そいつはわしらの代わりに命をかけて戦いを終息させてくれた。次は平穏な人生を歩めるように輪廻の法を使ったんじゃ」

「そうかよ……なんで、魔族に転生させたんだよ。転生後も魔法が使えないってわかってたんじゃないのか。もしかして、里に来させるように仕向けたのも師匠のせいか?」


 師匠は急に席を立ち、声を少し荒げた。


「ちがう! 輪廻の法はある程度の生物限定はできるが、どういった種族で生まれるかはわからないんじゃ。それに、魔族に転生しても魔核が無いのは正直想定していなかった。それに、戦いに身を置かせるつもりもなかった。じゃが、わしに頼って来た時は最大限に力を貸そうと思っておった。そうする前にお前は魔核を盗んでいってしまったんじゃが……」


 しばらく師匠を睨んでいたが、泣きそうな顔であわあわしながら弁明している姿をみて毒気を抜かれてしまった。

 転生体と言われていたが、魔核が無い事以外何も引き継いでいない気がするし、記憶が全くない。


「はぁ、もういいや。で、俺はその転生体と言う事なんだが、全く何も覚えてないんだが……」

「記憶の継承は行なっておらん。じゃないと、新しい人生は歩めないじゃろう」


 しかし、平穏な人生と言っておきながら、魔核をくれたり、戦い方を教えてくれたり旅に出させるなど、矛盾してるんじゃないか?

 戦わせたく無いなら、門前払いすれば良かったような気もするが、それも考えがあってのことだろうか。


「なんかどうしてって顔をしとるな。わしはお前が望んだ事は否定はしたくなかった。王都の件は申し訳なかったが、色々と絡み合っていることがわかったから、全てを背負わせるつもりはない。ただ、ただ……戦いの中で、魔法を覚えていく中で、少しでもわしの事を思い出してくれたらと思った。ただの身勝手じゃがな」


 転生前の俺にまだ執着があったのだろうか。

 自分の想いに歯止めをかけ記憶だけは継承させなかったのかもしれない。

 ってか、よっぽど好意があったという事に驚いているが、少しは我儘も聞いてくれるんだろうかという腹黒な考えをしてしまった。


「それで、昔の俺の名前はなんだったんだ?」

「転生前も同じじゃ。ライザ! すまんがこれはわしがお前の村に行って命名の際に誘導してしまった」


 上目遣いに少し照れながら答えてくれたが、チクショウ、前の俺に未練タラタラじゃないか……。

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