出会い
「本当にこっちで良いのかよ……」
じーさん、もとい師匠の言われた方角へ歩き出した。
目的地は人間達が多く住む一番大きな都市、王都。
街道沿い? を歩いて行けばいつかは着くと大雑把な情報を貰った。
なんで王都に向かっているかと言うと、村に王都の旗が落ちていたらしい。
じーさんが王都の旗を見たことがあったためわかった事だ。
引きこもりのじーさんなのに何でも知ってるのがちょっと怖い。
そういえば、出発の時に師匠から一振りの両刃の剣と、一冊の本を貰った事を思い出した。
本の中身は全部真っ白でよくわらないが、兎に角肌身離さず持って、無くすなと言われている。
しかし、魔法が使えるようになったらしいが、いったいどうやって使うんだろうか……。
手を前にかざし色々なポーズを取って念じて見たがどうも反応がない。
使い方を考えながら半日ほど歩いた辺りで黒煙が上がっているのが見えた。
近くの木に隠れながらゆっくり近寄ってみると馬車が黒装束を着た集団に囲まれていた。
「野盗か? 数は全部で、1、2……5人か」
この辺りに魔族の集落があるなんて聞いたことがないから、乗っているのは多分人間だろう。
実のところ、俺は人間に会った事がない。
昔話でしか聞いたことがないので、理由は分からないが、人間と魔族の間で大きな戦いがあったらしい。
一緒に暮らしていたこともあったみたいだが、それから魔族と人間は互いに不干渉になった。
そんな事を考えているうちに、すでに御者が引きずり降ろされおり、更に馬車の中から金色の髪の少女が連れ出されようとしていた。
しかし、見た感じは俺らと姿は変わらない事にホッとした。
助けるか……。
もしかすると恩を売って少しでも王都と呼ばれる場所の情報を聞き出せるかもしれない。
打算的だが、そう結論づけると、剣を振りかざし走った。
オオオォッッ!
女の子を掴んでいた野盗の1人に奇襲一閃! が、寸前で気づかれたのか、バックステップでかわされた。
「クソッ!」
仕掛けた一撃が交わされ、内心ドキドキしていた。
師匠に頼んでもない剣の稽古受けていたが、流石に、実践は初めてで、人に剣を向けることに緊張していた。
ただ師匠の暇つぶしだったんじゃないかとは思うが、こんな場面に出くわした事にそれもありがたいと思う。
しかし、どうしたもんかな。
怯んで退散してくれくれたらよかったんだけどな……。
魔法が使えるようになったとは言っても、どやったらいいかわからないし、今後の展開はノープランだ。
俺は、苦笑いしながら剣を構える。
ナイフを構えた野盗Aが攻撃姿勢を取っていた。
と思った気づいた矢先、走り寄りナイフで攻撃してくる。
ガキンッ!!
振り下ろされたナイフを剣で受け止め、反撃するも、素早くかわされてしまう。
しかし、5人いるはずなのに、そのうちの一人しか攻撃してくる気配がない。
なめられてるのか……。
今の実力からしてありがたい事ではあるが、なんかモヤモヤする……。
もっと強くならないと…と心で強く思う。
何度か応戦したとき、野盗Aが突然話しかけてきた。
「オマエハナニモノダ? ナゼジャマヲスル?」
「いや、人間が襲われていたみたいだったから、ただの通りすがりで助太刀に入っただけだ」
思いもよらない問い掛けに同様しているとこを、再び野盗Aが口にする。
「あいつらを人間なんて言い方……貴様、もしかして魔族か?」
「なんでそんな事を聞く!」
俺は剣を持つ手に力を込めると、相手は距離を置いた。
「あぁ、魔族だ! なんか文句あるか?』
「……そうか」
野盗Aはボソッと呟いたかと思うと視界から消えた瞬間!
ザッシュ
「ッッ……!」
痛みを感じた腕を押さえ、後ずさり腕を見ると血が滴っていた。
しまった、と思い急いで辺りを警戒したが、野盗達はいなくなっていた。
5人相手だったらまず死んでたか……。
気が抜けてへたり込んでいた所に、先程の少女が此方に駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?!」
「あぁ、多分大丈夫……多分……」
割と痛いが、心配させまいとやせ我慢してみせた。
少女は今にも泣きそうな様子で傷口に手を当てる。
「……少し失礼します」
--神よ、彼の者の傷を癒したまえ--
少女が言葉を口にすると、手元が淡く光り出し、血が止まり、傷口がみるみる治って行く。
もしかして……魔法……か?
その時、師匠から貰った本が仄かな光を放っていた事を気付いていなかった。