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弱小魔族の冒険譚  作者: さわ
13/34

師匠の家から急転

 久々の我が家、と言う訳ではないが、勝手知ったるなんとやらで、いい朝を迎えられた。

 俺の村では木のベッドに藁を引いて寝ているが、師匠の家は布団というものを畳と言う床の上に直に引いて寝るスタイルであった。

 なんだっけ、和風? だったか、王都じゃない国ではこう言った形式が主流との事だ。

 師匠の元で修行している時は、起きたらまず朝ごはんの用意だ。

 とりあえず、炊事場へ向かおう。

 部屋を出て向かう途中に、アリスも丁度起きて来たようだ。


「ライザさん、おはようございます」

「あぁ、おはよう。よく眠れたか?」

「はい、なんか、初めて布団で寝ましたけど、ふわふわして心地よかったです」

「なんか、他の国の寝具らしいけど、この建物も俺の村とも違った建築で気になってたけどね」

「確かに、王都とも違いますね。機会があったら一度行って見たいですね」


 確かに、一風変わった場所だ。

 今回のことが終わったらその国に向かって旅するのもありか。

 その時は、あいつとも一緒に行けるといいなと思った。


 修行時代は俺が朝食を用意していたのだが、今日はアリスが手伝ってくれると言うので楽になりそうだ。

 ただでさえ人数が増えてるしな……。


 調理場に着いたら、流しの横にある大きな引き出しがある棚を開いた。

 なんでも、師匠が開発した食べ物を冷蔵できる装置らしい。

 棚の中に冷気を纏う魔法陣が描かれている。

 描かれた魔法陣の魔力が枯渇するまで半永久的に冷気を出し続けるらしい。

 とりあえず、中にあるものであり合せにするか。


 基本的に、師匠の朝食はご飯とお味噌汁が多い。

 これもこの屋敷の作りのある国で食べられるものらしい。

 アリスも初めての料理らしく、指示出しながら二人で作っていく。

 作ったものを母屋に運び、テーブルに並べた。


 テーブルにはすでに師匠とサラが座っており、みんな揃ったところで朝食を頂く。


「そういえば、いつの間にかまったりしちゃってるけど、王都へ向かわないといけないんだが……」

「まぁ、そう焦ることもないじゃろ?」

「でも、教会まで馬車でも1日かかるんだぞ? 帰りの馬車なんてないし」

「あぁ、教会か。そこまでなら直ぐに送ってやれるぞ」

「え? どうやって?」

「まぁ、後から教えてやる」


 馬車でも1日かかるところへどうやっていくんだ? もしかして、馬車を持ってたりするのだろうか。

 まぁ、嘘は言わない師匠だ。

 とりあえず、信じてみよう。


 朝食を食べ終わり、片付けのためアリスと炊事場へ向かって歩いていると、途中の通路から師匠とサラが対峙しているのが見えた。

 声をかけようと近づこうとしたが、二人の空気が一変したのを感じ、足を止めた。


 --風よ--


 サラが詠唱し、足元に魔法陣が展開される。

 教会で戦った時と同じ魔法だと思ったが、その時とは異なり詠唱が短かった。

 サラの足元のに魔法円が展開される。


「いざ!」

「いつでも来ていいぞい」


 掛け声と共にサラが踏み込み、魔法の力で加速する。

 加速した瞬間に目を疑ったが、明らかに以前戦った時よりスピードが増しているじゃないか。

 しかし、難なくサラの攻撃をかわしている師匠は、もう変態だと思った。


 しばらくの攻防が続いたが、サラのスタミナが切れたところで終了した。

 俺と戦った時より格段に早かったのに、サラの攻撃は一撃も師匠には当たらなかった。

 どう言った経緯で戦っていたのかわからないが、とりあえず、サラに近寄り話しかける。


 「……なにやってんだ?」

 「おはよう! 丁度、師匠に手解きを受けていたところだ!」

 「ああ、そうなんだ」


 汗だくで息を切らしながらニコニコ満足そうな顔で誇っていた。

 師匠? いつのまにかサラが師匠と呼んでいる事に違和感を感じたが、いつのまに仲良くなったんだか。

 サラは汗を流したいと風呂場の方へ向かって行った。


「師匠、何やってんの?」

「あぁ、ライザか。サラに戦い方のコツ? みたいなものを教えておったんじゃ」

「コツねぇ……そう言えば、サラの詠唱が凄く短かったような」

「あぁ、それか。魔法はな、イメージなんじゃよ。魔法を発現するイメージを膨らませる意味で詠唱をするんじゃ。だから、実際は詠唱なんてなんでもいいんじゃよ」

「結構適当なんだなぁ」

「まぁ、そんなもんじゃ。まぁ、ただ、覚えやすく効果に合った名前をつけるのがベターじゃな」

「名前か……そういえば、サラの魔法が以前見た時よりスピードが早かったのも何かコツがあるのか?」

「いや、そんなことないじゃろ? もしかして、こいつと戦った時は手抜きでもしていたのか?」

「なんでだよ……」


 教会で戦った時は本気じゃなかったと言うのか?

 本気で殺しに来たと思っていたが、やっぱり同胞だから手を抜かれていたのだろうか……。

 しかし、魔法のイメージか。

 そういえば、師匠から貰った本に書かれている詠唱文はアリスやサラが使っていた言葉とは少し違っていたのを思い出した。

 イメージしやすい様に本が勝手に解釈したのか?

 それとも別の意味があるのだろうか。

 しかし、サラに手加減される俺が、サラが抵抗できなかった王都の兵士に勝てるのだろうか。


「師匠……俺も少しお願いできるかな?」

「自分から頼むなんて珍しい事もあるもんじゃな。今の身の程を知ったか?」

「まぁそんなとこかな」


 これから何が起こるかわからないし、さっきの師匠とサラのやり取りで自分の弱さを再確認できた。

 少しでも強くなれるチャンスがあるなら逃したくない。


 しばらく師匠と手合わせをし、朝からどっと疲れた。

 サラと戦った時の様に上手く魔法が発動できなかった。

 師匠が言うには、使い慣れていない事と、イメージ不足だと言う。

 もっとイメージの練習をしなければ!


 大分汗をかいてしまったので、朝食前に風呂へ向かった。

 魔族の村では石で組んだ風呂の下に火の魔法陣を描き、お湯を作っていた。

 ここには地下から温泉が湧き出ているらしく、熱い風呂に入ることができ、便利なものだ。

 温泉の扉を開け、中に入ろうとすると黄色い悲鳴が響いた。


「きゃー!」

「お、おまえ!!」


 其処には、アリスとサラが裸で立っていた。

 二人は慌てて持っていたタオルで身体を隠す。


「わ、わ、すまん!」


 俺はびっくりして、慌てって扉を閉めた。

 まさか、サラがまだ居たなんて。

 しかも、アリスまで。

 うーむ、次は顔が合わせづらい。


 しばらく扉の横で待っていると、服を着た二人が出て来た。


「次は、コロス……」

「ら、ライザさんこんにちは、キョウモゲンキデスカ?」


 二人は赤面しながら、そそくさと母屋に向かって行った。

 アリスに至っては、よくわからないことを言っていたな……。

 ま、まぁ、次会った時に謝ろう。


 ささっと風呂で汗を流し、母屋へ向かう。

 向かう途中に縁側に座る師匠が居た。 


「これからどうするつもりじゃ?」

「んー、少しの間、師匠に修行してもらいたいんだけど……」

「あまり時間がないんじゃなかったのか?」

「まぁ、そうなんだけど……でもさ、今の状態だと不安もあってさ……」

「まぁ、そうじゃろうな。王宮には魔法は使えなくともサラより強い奴はいると思うからな」


 確かに、王宮には訓練された騎士がたくさんいるのだろう。

 俺は師匠に鍛えられたと言っても、それほど長くないし実戦だってほとんどない。


「とりあえず、今日は師匠に戦い方を教えて欲しいと思ってるんだけど」

「まぁ、お前さんから言ってくるのも珍しいからな、一肌脱いでやろうかのう」


 それから、師匠の家に1日滞在し、サラ共々修行をつけてもらったのだった。

 大分魔法の感覚はわかって来たが、結局サラと模擬戦をしても敵わなかった。

 今は時間が惜しいため、再度師匠に頼もうと思った。


「またとりあえず教会にいくんじゃったか?」

「んー、王都に行くには教会からの方が近いらしいからね」

「そうじゃったな」

「あぁ、そういえば師匠は教会って知ってるのか? ちなみに、女の子の神様の像も飾ってあるんだけど」

「……なんじゃと!? ふ〜む、そんな事になっとるのか……」


 師匠がまたブツブツ言っているが、歳のせいだろうか。


「で、師匠は何か知ってるの?」

「あぁ、よく知ってるぞ。その教会とやらも」

「そうなんだ。それで、教会に送ってくれるって言ってたけど、馬車があったりするのか?」


 流石に馬車は持ってないだろうと思ったが、念のため聞いて見たが、


「あるぞ」

「え?」


 まさかの返答で固まってしまった。


「馬車じゃないが、教会にならすぐに行けるぞ」

「どうやって?」

「裏庭にある祠があるじゃろ? あそこにゲートが張ってあるからそこをくぐればすぐじゃ」


 ゲートとはある場所と場所を繋ぎ、遠距離へ移動を可能とする魔法なのだが、術者はほとんどいなく珍しい魔法のはず。

 何故、師匠の家と教会がつながっているのかは謎でしかない。

 理由を聞いたが、はぐらかされるだけだった。


 裏庭に行ってみると確かに祠があり、扉を開けるとゲートの魔法がかかっている門があった。

 3人で師匠に挨拶をし、緊張しながらゲートをくぐった。

 しばらく歩くと、正面から光が溢れてくる。


「ここは……?」

「あ、もしかして、教会の離れにある倉庫でしょうか?」

「アリス、わかるのか?」

「はい、何度か物を取りに来た事ありますし、今までゲートがあるなんて気づきませんでした」


 もしかして、一方通行なのか? もしくは、師匠が何かしたのか。

 とりあえず外に出ると確かに教会とは目と鼻の先だった。

 教会に戻ろうと建物の方を見ると、女性が逃げるように飛び出して来た。


「なんだ?」

「さぁ……あ、あれ? マリアさんじゃないですか?」


 後ろからは甲冑を纏った騎士っぽい奴がマリアを追いかけるように出てくる。

 サラがナイフを抜き、険しい顔をする。


「何か、尋常じゃない! 急ぐぞ!」

「あ、待ってくれ。アリスはとりあえず待機だ!」

「わかりました」


 騎士がマリアへ剣を振り下ろす瞬間、間一髪、サラが騎士の横っ腹を蹴り吹っ飛ばした。

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