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しあわせは悪魔とともに  作者: 実乃里
第一章 転校は憂鬱とともに
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彼女の目的

 放課後、僕は有国さんと『二人きり』になるための場所へと向かった。

 彼女が指定した場所は図書室で、そこの地下にきてほしいということだった。図書室の地下と聞いてもピンとこないけれど、まあ行けばわかるだろうと判断した。

 当初はホームルームのあと、有国さんと一緒に向かう予定だったけれど、僕に用事ができてしまった。転校初日というのは、少々面倒な手続きが必要なのだ。そんなわけで僕は一人校舎を歩いていた。

 桜浜高校は、三軒の校舎と一軒の別館で構成されている。別館には食堂や生徒会室、理事長室もこちらにある。本館となる校舎は、それぞれA館、B館、C館と呼ばれ、渡り廊下で繋がっている。図書室があるのはC館だ。

 結局、馬刀葉と天降は詳しいことは教えてくれなかった。「放課後になればわかるって」と、どこか悪戯な雰囲気を漂わせていたのが気になるところだ。

 さてなにがあることやら。少々の緊張を抱えながら図書室へ足を踏み入れる。

 本がギッシリ詰まった書架と、貸し出しカウンター。遮光カーテンに、鼻孔を刺激する書物の匂い。

 硬派な図書室の姿に感心しつつ内部を探索するも、階段らしきものはどこにもない。

 誰かに尋ねようと辺りを見渡しているとき、近くのドアが開いた。中から出てきたのは数人の生徒で、生徒会の腕章をしている。

 生徒会役員か。あの人たちに聞くのがベストだろう。

 先頭に立っているリーダー格の男子に話しかけようと近づいたとき、先ほどのドアがもう一度開いた。


「あら、井坂君いらっしゃい。待ってたわよ」


 出てきたのは有国さんだった。


「ちょうどよかった。地下への行き方がわからなくて困っていたところだったんだ。いったい階段はどこなんだい?」

「階段はこっちよ。やっぱわかんないわよね、ゴメンゴメン。さっきまでそこの閲覧テーブルで待っていたんだけど、急に生徒会がきちゃったもんで……。とにかく入ってきて」


 有国さんに促がされ、ドアを潜る。

 どうやらここは図書準備室のようだ。中央には小さな事務机が置かれ、左右の棚には、『貸出記録』や『入荷記録』と書かれたファイルが何冊も収められている。

 準備室の隣にはもう一つ部屋があるようで、有国さんはそちらに僕を誘導する。

 こちらは倉庫だ。大量のダンボールが乱立し、紙紐で結えられた本が収められている。


「司書さんと知り合いでさ、ここの地下室を部室として使わせてもらっているんだ」


 有国さんが指差す先、倉庫の隅には下に降りる階段があった。

 部室? なんらかの部活動がこの下で行われているのか? 

 プクプクと湧いてくる疑問を胸にしまいながら階段を下りると、一枚のドアが見えてきた。

『オカルト研』と表札が掲げられたそのドアを、有国さんは躊躇なく開く。

 広さは八畳ほどだろうか、中央には小さなテーブルが置かれ、その脇にパイプ椅子が二つ。壁際に設置されたラックには大量の本が平積みされ、その隣には湯呑やらコップが収められたカラーボックスが置かれている。


「正直に言うと、オレはまったく状況が呑めていない。まず、ここがどういった場所なのか教えてくれるかな。できれば詳細に」

「ここは図書準備室倉庫の地下で、私が所属するオカルト研の部室よ」


 彼女の説明に、僕はコクコクとうなずく。


「……了解した。じゃあ次は、ここにオレが連れてこられた理由を教えてくれるかな」

「お昼時間の食堂で約束したでしょ。二人きりになろうって。私以外に部員はいないから、じゅうぶん条件は満たしていると思うけど」

「そう、その『二人きり』の部分だ。そもそも、なぜ君はオレと二人きりになろうなんて思ったんだ? 普通に考えれば、今日会ったばかりの男子と二人きりになろうなんて思わないだろ」


 ここで有国さんが押し黙る。表情は引き攣り、頬から一筋の汗が滴る。


「わかったわ。白状します」


 かくして有国さんは話し始めた。彼女が所属しているオカルト研が置かれている状況を……。

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