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ある春の思い出

作者: 榠樝

降るように舞う花びらはさながら涙のようにも見えた。




涙雨、というものがあると教えてくれたのは父だった。

あれは卒業式の前日、明日は晴れるだろうかと天気予報を見ればそこには傘のマーク。

そういえば去年の先輩の卒業式も雨だった。

どうしてか卒業式の日は雨が降る気がする、と呟いた私に父は言った。

誰かの悲しみが空に昇って雨になるのさ。それが涙雨なんだよと。

門出の日。祝いの日。けれどそれは別れの日でもある。その寂しさが悲しさが、雨になると。

何ともファンタジックな説明だったが、どこか納得してしまった。



けれど予報に反して次の日は晴れた。

これはつまり悲しむ者がいないのだろうかなんて思っていると、父はお前は晴女だからなぁ、と苦笑いを浮かべた。

悲しみに勝てるくらいに笑っているからきっと空も笑ったんだろうと。

ファンタジックというより荒唐無稽な話だったがそれでも納得してしまった。

確かに私のイベント事は必ず、晴れだったから。





それから一月ほどした旅立ちの朝。

やはり、空は晴れていた。

庭の桜の下で、父と写真を撮った。

ざぁ、と風が吹いて、桜の花が散る。

それはまるで、真っ白な雨のようで。

父の目尻に光るものが見えた気がした。





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