第三話 ハラペコ魔導師の少女
―シンザ村付近の草原
俺はなんども魔物に遭遇するも相手にせずただひたすら歩き続けた。
俺はあることを考え始めていた。魔王に関してだ。
魔王は今まで大きな動きをみせていなかった。むしろ、魔王は部屋に引きこもって配下と一緒にボードゲームなどして、この世に勇者が現れて自分を倒しに来るの待っているらしい。だがなかなか現れないとのこと。
ある意味かわいそうな魔王様だ。まさか、暇だから村ひとつ消し灰にしようと!?無きにしもあらず...
そうこう考えていると、何かが転がっていることに気が付く。
ミルムかと思ったが違った。そこに居たのはコカトリスであった。
コカトリスは怪我をしているようだった。なんとなく放って置けないので怪我の手当てをして上げた。すると、喜んでいるの翼を羽ばたかせていた。
とりあえず手当ては終わったので先を急ぐことにした。
なぜ、コカトリスを助けたかというと俺のポリシーである。まず第一に魔物などの生き物の殺生はなるべく避ける。第二に困っている者は魔物のであっても助ける。これに則って先ほどのコカトリスを助けたのだ。
実際問題この世の魔物は俺たちと同じ様に生きていることに変わりない。特に食べる訳でもないので殺さないようにしている訳だ。その代わり、持っている所持品を頂くことはあるがそれはあくまで戦利品という形だ。
それにしてもなかなかミルムが見当たらない。魔物に食われてしまったのか。
そのとき、遠くから女の子の声が聞こえてきた。
「へ~る~ぷ~、へ~る~ぷ~み~」
声の聞こえたほうに行くと狼の集団の中に白いパンツが見えた。白か、純潔だな...じゃなくて助けないとだ。
「大丈夫か!白いパンツ!」
「み~る~む~だ~よ、というか見ないでよ。助けてよ」
「あぁ悪い、綺麗な真っ白に目を奪われていた。今助ける」
さすがに、はらぺこ状態のミルムじゃ集団の狼にも勝てないか。
とりあえず俺はラグナロクを手に取り、特殊能力を放った。
「ラグナロク、シルバーフレア!!」
次の瞬間、狼を複数焼き払った。それに驚いた狼たちはすぐに逃げていった。
「ミルム、大丈夫か」
「...うわあぁぁぁん」
「怖かったか?」
ミルムはいったん泣き止み、カイを見つめてこういった。
「パンツ見られた、お嫁にいけない、責任取ってよ」
パンツを見ただけで責任を取らなければならないのか。はじめて聞いたぞ。まぁなんにせよ元気そうでなによりだ。
そう思っているとミルムのお腹が鳴った。
やっぱりお腹が空いていたようだなその音を聞いて持ってきた食パンを思い出す。そしてそれを、ミルムに差し出した。
「ミルム、食パン持ってきたんだが食べるか?」
そう言うとミルムはさっきのことケロッと忘れたかのように、食パンに食いついた。
とりあえず事情でも聞いてみるか。
「何があったんだ?」
「マリアお姉ちゃんが自分の魔力を使いたくないからって、私の爆発式転移魔法で目的地まで転移するとかで...、そしたら爆発式転移魔法の魔力消費が多すぎて魔力切れを起こしたの」
その話を聞いて驚いてしまった。
あのお淑やかと言われていたマリア・リク・ライアがそんなことをするとは...
とりあえず無事で何よりってところか。
こうして、俺とミルムは村に帰ることにした。
―シンザ村
しばらく歩いてようやくシンザ村に着いたので早急に村長のところに行くことにした。
「村長、ミルムを連れて帰ってきました」
「そんちょーただいまー」
俺の声とミルムののほほんとした声の後、しばらくすると焼けた小屋の裏から村長が出てきた。
「おぉカイよ、ご苦労じゃったのぉ。おかえりミルムや、怪我は無いかい?」
それにミルムは元気良く答える。
「怪我はしてないけどお腹空いた」
お前さっき食ってただろ!!っと思ったが考えてみると、一回使っただけで魔力切れ起こすほどの大魔力を使ったんだ。食パンだけで腹が満たされる訳が無いか。
そう考えているうちに村長がおにぎりを持ってきた。
「ミルムや、これをお食べ。スタミナおにぎりじゃ」
ミルムはそれ食べながらあることに気が付いたようだ。
「そんちょー、村がすこし焼けてるみたいだけどなんかあったの?」
気づくのが遅い!!と思いながらも、村で起きたことを俺と村長が説明した。それを聞いたリムルは驚いていた。
「私が居ない間にそんなことが...」
「それの現況を調べるためにこれからカイ君を旅に出そうと思ってな」
村長がそれを言ったとき、ミルムはその言葉に食いついた。
「そんちょー、私も行きたい!!」
「う、うーむ」
村長は困った顔で俺の方を見てきた。そりゃそうだ、旅の途中にどんな危険があるかわからない。何かあれば責任重大だ。
すると村長は予想外の発言をした。
「うむ、年頃の男女を一緒に旅させるのはどうかと思うのじゃが...」
そっちかよ。この村長はまた変な心配をしているな。
そう思っていると、ミルムがあることを言い出した。
「そんちょー、カイ君が責任を取ってくれるそうです」
うぉぉぉい!!何言ってんだこいつは。まさかパンツのことか?油断していた。餌付けしたときにころっと忘れてくれたかと思っていたのに。
早く何とかしないとと思っていたが時既に遅し、尊重は納得してしまったらしい。
「責任を...そんな関係まで発展していたとは...、わかった。カイ君、ミルムを頼んだぞ」
「は、はぁ」
結局変な流れで請け負ってしまった。一体どうなってしまうのだろう。
そして、俺はミルムと話し合い、今日は日が暮れてしまっているので明日の早朝に村を出ることにした。
その夜、ミルムは俺に昔の話を持ち出してきた。
「カイ君、子供の頃に私は父親を目の前で殺されたの。そのとき私とお姉ちゃんは隣の部屋から見ていたの」
「あぁ、俺も同じ時に目の前で母親を殺された。なぜか知らないが、悲しみより悔しさの方が強かった。自分の無力さを呪ったよ」
「あの時、私たち姉妹とカイ君の兄弟以外にもう一人男の子が居なかった?その子もたしか母親を...」
「もうこの話はやめよう。おやすみ」
本当は気になっていたさ。たしか俺の父親やミルムの母親の友人の息子だった気がする。あの親殺し事件の後に引っ越してどこにいったかわからず仕舞い。手紙くらいよこせばいいと思っていたが、あの様子をみた感じ、事件のショックでしばらく喋れなくなってたらしいし仕方ないか。
そう考えているうちに俺は目を閉じて寝始めた。
ふと気が付くと白い空間に居た。
ここはどこだ?
その答えはすぐ近くにある霧のようなものから返ってきた。
「ここは私の夢想空間。はじめましてだねカイ・ライデンス君。私はこの未知世界の創造主、神様だ」
「神様が俺に何のようだ?」
「つれないね。なに、悪いようにはしないさ。ただひとつ君に頼みがあるんだ」
「頼み?」
「この世界に虚無の力を扱うものが現れたそうなんだけどね、詳しいことがわからないのだけど君の村に手をかけた者かもしれないんだ」
「それを倒せと?言われなくてもそうするつもりだ」
「だが、おそらく君の力だけで倒すのは無理だと思う。だから、アドバイスをするよ。いろいろな町や村で仲間を作るといい」
「アドバイスありがとう神様」
「いえいえ、私の楽しい未知世界が虚無の力でなくなってしまったらつまらないからね。頼んだよ」
そして目が覚めると朝になっていた。
とりあえずミルムを起こし、朝飯を食ってからシンザ村を出た。
次の目的地であるネクス町を目指し歩きはじめるのだった。