29話 実験
天然酵母を培養している瓶の蓋を開けるとアルコールの匂いがする。
数日前はシュワッと炭酸の音がしていたけど、今はない。代わりに、白い粉みたいなものが底に溜まっている。
瓶を机に置くと、小麦粉、牛乳、塩、蜂蜜、バターをポンポンとテーブルに並べる。アレンジ用の卵、ベーコン、マヨネーズ、ジャムなども一緒に並べた。
「ポルフェンを作るって言っていたけれど、誰かに作り方を教えてもらったの?」
準備を手伝ってくれているお母さんが問いかける。
他のお店は行った事が無いので知らないが、お食事処ガイストンでは秘伝のレシピを公開していない。それは確認したから知っている。教えてもらえるならその方が楽だから良かったのだが。
「ううん、誰からも教えてもらってないよ。だから、同じ物は作れないし、ポルフェンになるかどうかも微妙なんだよね。ポルフェンじゃなくて、ポルフェンもどきを作るって言った方がいいかも……」
……所謂、実験ってやつだよ。
わたしは肩を竦める。
「もどきでも美味しく出来たらいいんだけど。」
わたしの呟きにお母さんが微笑みながら返す。
「そうね、きっと大丈夫よ。失敗しても必ず発見があるのだから、楽しくやりましょう」
「うん!」
わたしはニッと笑った。
材料を混ぜ合わせてパン生地をつくり、一次発酵させ、ガスを抜いてから生地を分けて形を作り、2次発酵をさせる。待ち時間は暇なので、刺繍の練習をしたり、お母さんが昼食の準備をするのを勉強の為に横で見たりした。2次発酵が終わると、用意していたアレンジ用の材料で一味加えて、焼く。
「良い香りね」
「うん、しかもフワッフワ、天然酵母でここまで膨らむとは思わなかったよ」
触れるくらいの温度に下がったパンに指を押し当てて話す。
……コレは成功だよね!
「ねぇねぇ、お母さん、焼き立ての内に食べちゃおう!」
「えぇ、そうね。昼食の準備もできているから、少し早いけれどお昼にしましょうか」
ほんのりフルーツの香りがするパンを数個とお母さんが作ってくれた昼食を2人で美味しく食した。パンは幾つか余ったので夕食に持ち越す事にした。
今日はお父さんは夕方頃帰宅するから焼き立てを食べてもらうことは出来なかったけれど、帰ってきたら食べてもらうのだ。
2人からアドバイスを貰って次に活かすという算段である。
……はふぅー満腹、満腹。そう言えば、ポルフェンは甘みのあるミルク味のパンだから今日のパンは何と呼べばいいんだろ……もう、『パン』でいいのかな?でも、硬くないんだよね〜〜『おかずパン』?『ポルフェンもどき』?
何でもいいか。
お腹がいっぱいで眠たくなって、思考停止。もう、パンでいいやってなっています。
次は、才能




