表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

28話 星見祭



……昨日の人と知り合いなら、さっきの人も貴族、だよね……貴族って思ってたよりも話しやすいんだ


考えながらも足を進める。




川にやって来た。さあ、勝負といこうじゃないか!!そんな気分で仁王立ちする。昨日のように予め身につけている物を一箇所に置くと策を練る。


……うーむ、手始めに大きな石で流れをせき止めようか


「エマちゃん」

「どうしたの?」


先に来ていたラウルが手を後ろにして、モジモジしながら話しかけて来た。


「これ!これ使って」


バッと出された物に視線を移動させる。そこには、竹を編んで作られた筒状の罠があった。こちらに鰻がいるのかわからないが、うなぎ筌に似ている。うなぎ筌は入口にかえしが付いていて、鰻以外の魚介類も捕まえられるので使わせてもらえるのは嬉しい。「ありがとう」と言って受け取る。


「作ったの?」

「うん!でも一人じゃ無理だったから、お父さんに手伝ってもらった所もあるんだけどね」

ラウルは胸を張って言う。


「へー、ラウルって手先が器用なんだ、凄いね!」


……フランクさんもやるね!


うなぎ筌からラウルに視線を戻し、ニコリと笑う。


それから魚が隠れそうな、草木が覆いかぶさっていて大きめの石がある所を見つけて、仕掛ける。その後は2人で川遊びをして小魚を捕まえたが、小さすぎたのでリリースしたりした。昼食はわたしのお弁当にラウルが興味を示していたので分けてあげた。お母さんが作ってくれた美味しいおかずが減るのは悲しいが、目を丸くしたラウルがオーバーリアクション気味に喜んでくれたので良しとした。


次の日に捕れたキューリッシュという川魚はラウルと半分ずつ持って帰って、我が家では竹串に刺して焼き魚にした。久しぶりに食べた魚はアッサリしていて美味しかった。他にも脂が乗った刺身とか、魚料理が食べたくなった。



余談だが、魚籠を持っていないので、採集用の籠に入れようとしたらラウルに止められた。何でも、他のものが生臭くなるからだそうだ。そこまで気が回らなかったのですんでのところで止めてもらったのは有り難かった。魚をどうやって持って帰るかという問題に悩まされることになって、むーんと考えていた時もラウルが木の蔓を紐の代わりにして魚に通して、手で持てるようにしてくれた。頼りになるなと思って感心したので、この事を夕食の席で両親に話したら、お母さんは微笑ましそうに聞いてくれたが、お父さんはどこか寂しそうだった。よくわからないので、対応出来なかったが。



•••••••••••••••••••••••••



ついに、星見祭の日がやって来た。


「今日はこれを着て行くといいわ。さっき完成したばかりなのだけれど、サイズが合わなければ手直ししたいから、袖を通してみてくれないかしら?」


朝、お母さんが部屋に来て言う。お母さんはすでに着替えも済んでいる。頭が回らないわたしは眠い目をこすりながらのそのそ起き上がると言われるままに動いた。


「大丈夫みたいね。」

「うん、ありがとう!」


襟元は青系の糸で、見たことのない模様だけれど何処かの民族衣装にありそうな刺繍がされていて、細部まで気を配っているのがわかるほど綺麗に彩られている。レースを使ったフリルがフリフリしていて可愛い。かと言って、派手と言う訳ではなく、上品な感じなので普段着としても着られるワンピースだ。


わたしはスカートの裾を摘んでポーズをとってみる。しっかりした生地だが、動き易く、通気性もいいのか涼しい。


……麻?綿?……どっちでもいっか



「ふふっ、よく似合っているわ」

「裁縫上手だね、お母さん。わたしはこんなに上手く作れないよ」


「あら、それはやってみないとわからないわ。わたしに裁縫の才能があるようにエマにもあるかもしれないでしょう?」



……あ、自分で才能があるって言っちゃうんだね


お母さんがポンと手を打って、「そうだわ、エマもやってみましょう!」と言う。


「え、いいよ。苦手だもん。」


昔、試しにやった事があるのだが、出来が悲惨だった。出来ればゴミの量産は避けたい。


「どうして?今日は森に行かないと言っていたでしょう、星見祭までに時間があるのだから、やってみてはどう?」


お母さんが覗き込むように言う。

わたしは森に行かないことが裏目に出たかと思い苦い顔になる。


「才能がわかる前に試しておいても損は無いと思うの。ロベルトだって才能が無くても料理の腕を上げる事が出来たのだもの。」


……お父さん、才能ナシ認定されてたんだ。



この後も熱弁するお母さんをじっと見つめる。話の腰を折ることに気が引けたからだ。


断りにくくなったわたしは首を縦に振った。


「わかった。じゃあ、少しだけやってみるよ。」



……英才教育、裁縫以外が良かったよ。

がっくし



夕方になるまでお母さんの手解きを受けて頑張った。沢山失敗した。それでも思ったよりも良い出来だったので自分に合格点をあげたい。けれど、お母さんのと比べると差が歴然なので、まだ修行が続きそうだ。



「アリア、エマ、準備はできているのかい?」


帰って来たばかりのお父さんが机の上とわたし達を見比べながら声をかける。


「まだよ、でもすぐに整うわ。」

「お父さんはそのままの格好で行くの?」

「いや、私も普段着に着替えてから行くよ。」


わたしが、ふーんと頷いていると、正面に座っているお母さんが「それより」と声を大にして切り出す。わたしとお父さんがお母さんに注目して首を傾げた。


「これ、エマが作ったのよ!初めてにしては上手でしょう」



お母さんが駄作を見せながら言う。

わたしは自分の手元に置いていたのに、いつの間にかお母さんが持っていることに目を丸くした。何という手の速さだ。


「エマが!?」

お父さんは驚いた表情でわたしを見た。

その後、柔らかく微笑み、頭を撫でながら褒め始める。

「凄いじゃないか!上手だ!エマはこんな事も出来たのだね。誇らしく思うよ」



「や、やめてよ〜」

わたしはうーんと駄作に向かって目一杯手を伸ばした。


薄ピンクのハンカチに花をあしらいたくて、頑張ってみたけど失敗したのだ。花というのはわかるけれど糸のほつれがあるし、布の切り出しに失敗して歪みが生じている。自分で見るぶんには努力の証と思えば許せるレベルだが、人に見せるようなレベルには達していないと思う。


……うぅ、褒め過ぎ……自分で自分に合格点あげたいと思った事が急に恥ずかしく思えてきたよ……



椅子に座ったままでは手が届かないので、椅子から降りて作品を取り戻す。

手を後ろに回し、ギュッと握り込んで口を開く。


「下手くそだから……も、もっと練習してから見せるよ」


「エマなら上達が早いだろうね。楽しみに待つとするよ」

「ふふ、そうしてあげて」


……買いかぶり過ぎだよ





「あれっ?お母さんはマント着て行くの?」

「えぇ、まだ、日が出ているでしょう。」


……西日か



3人とも支度が終わったので戸締りをして家を出る。わたし達以外にも祭りに行く人が道を歩いているからか、皆が進む方向が同じだ。それがまた、祭り気分を高めてくれる。ワクワクして足取りが軽くなるのが自分でもわかる。


星見祭は他の祭りと同様に平民街の真ん中あたりにある広場で行われる。つまり、市場より向こうに行かなくてはいけない。広場に近づくにつれて人が多くなり、大人達の壁で視界が狭くなる。上から見たらどんなだろうという好奇心から、両親に手を繋いでもらって歩いる状態から抱っこに変えてもらった。


……みんな、祭が好きなんだ、人が多いよ。この分だと、ラウルもみんなも見つけるのは無理だね〜

それよりも、逸れないようにしなきゃだし。





広場に着いた。

広場には輪を描くようにベンチが設置されていて、幾つかは人で埋まっていた。石畳の上に茣蓙を敷いて座っている人もパラパラいる。



わたし達も席に着く。運が良く、3人で一緒に座れるベンチが空いていたのだ。



キョロキョロと辺りを見回す。


……まだ早いけど、露店でてるかな〜


「どうしたんだい?」

「うん?露店を探してるんだよ」


ニコリと笑うわたしを見てお父さんはパチパチと瞬きをした。かわりにお母さんが声を発する。


「お腹が空いたの?」

「違うよ?空いてはないけど、露店を見て回りたいの。」


「エマ……星見祭はね、」


お母さんが申し訳なさそうに切り出す。わたしは首を傾げた。


「露店は出ないのよ。」

「……え。」

「皆で天灯に火を灯して、夜空を眺めるお祭りだもの」



……お祭りは露店あってこそのものでしょ?……


「露店」「出ない」という言葉を頭の中で反芻する。暫くしてショックから立ち直った。



日が落ちてから、皆が火を灯し出したので、わたし達も動く。それが終わると少しの間、星を観て、家に帰る。わたし達のように帰っている家族もチラホラいた。

家に着くと、ちょうど夕食時でお腹が減っていたので、お母さんが作り置きしてくれていた肉団子入りの野菜スープと買い置きしているパンをみんなで食べる。




肉団子から出た旨味がスープに溶け込み、あっさりした野菜スープに深みを与えている。肉団子は生姜やニンニクのような薬味が入っているのか臭みが無く美味しい。


……うまっ


「これ、天才的に美味しいよ」

「ああ、確かに」

「喜んでもらえて嬉しいわ」



わたしはお腹が満たされて上機嫌になり、パンを食べる。


……硬いよ




硬くてボソボソしているので、そのまま食べずに牛乳に浸して口に放り込む。



……パンねぇ……天然酵母もうすぐ出来るから、ポルフェン、作っちゃう?













露店がなくて落胆しました。

でも、夕飯食べると忘れました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ