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閑話 星見祭へ ラウル視点




 僕はラウル。


 今日僕は、エマちゃんを星見祭に誘おうと思っている。

 凄く緊張するけれど、きっと大丈夫。


 レイルお兄ちゃんが、「男になってこい」と言っていた事を思い出す。

 レイルお兄ちゃんは兄弟の中で1番年上だ。色々な事を教えてくれるからとても尊敬している。星見祭の事もレイルお兄ちゃんに教えてもらった。星見祭はただ星を見るだけでは無く、好きな人を誘って一緒に見る事でその恋が叶うと言われているのだそうだ。

 僕が好きな人はもうみんなにバレてしまっているけれど、多分エマちゃんは知らない。星見祭に誘う事でバレると思うけれど、行動しないといつまでたっても前に進めない。レオンお兄ちゃんに先を越されるのは嫌だ。ただでさえ、最近はレオンお兄ちゃんやカレン達と一緒にいることが多いのだから。


 「エ、エマちゃん!あの……」

 「あ、ラウルおはよう。そうだ、ききたいことあるんだけど……」


 言おうとしたけれど遮られてしまった。


 「僕に?何?」

 「この前、結界の話してくれたでしょ、あの時ききそびれちゃった事なんだけど……あの結界誰が張ってるかわかったりする?」


 折角質問されたのだから、答えを出してあげないととは思う。でも、結界の話は僕の中での1番のトラウマで恥ずかしい事だから、『結界』と聞くだけで辛い。

 

 「知らないよ。でも、多分お貴族様だと思う。だって、魔法が使えるのはお貴族様だけでしょ?」


 僕がそう答えると、エマちゃんは口に手を当て、「魔法……貴族……」とボソボソと呟く。



 「ありがとう、ラウル!また何かあったらきくね!」



 エマちゃんはとても眩しい笑顔を僕に向けて、手を振る。そして走って行ってしまった。


 「あ……」




 ……そうじゃないよ……僕のバカ。言えなかったじゃないか。



 カレン達のところに合流したエマちゃんは楽しそうに話している。僕もあの輪に入りたいけれど、行き辛い。だって、カレンがいるから。カレンは僕をからかってくるから苦手だ。



 ……森についてから言おう。




 エマちゃんは森ではいつも1人で行動する。だから、いつでも機会があるはず。そう思って僕はエマちゃんについていく。すると、「シロー、キーン」と何か叫び始めた。何もいないのに何をしているのかと疑問に思う。


 ……僕に見えないものが見えるとか?


 

 「エマちゃん?なにを……」

 「ひゃっ‼︎ な、なんだ、ラウルいたんだ。」


 エマちゃんはビクッとして、驚いた顔で振り返る。


 「ごめん、驚かせるつもりは無かったんだ。でも、エマちゃんが叫んでたから……何してたの?」

 「ふぇ?あ、いや、特に何も……発声練習みたいな?」


 慌てた様子で話す。僕には言えない事なのか。幼馴染みなのに……。疲れていないのに、何故か少し辛く感じた。


 「ところで、わたしに何か用?」

 「あ、あの……」

 「ん?」


 エマちゃんが小首を傾げる。


 「いや、な、何でもない。」


 今度は僕の方が慌ててしまった。


 ……なにしてるんだよ!僕!


 自分で自分を怒っていると、「そっか、じゃあ、わたし向こうに行くね。バイバイ。」と手を振られてしまう。それを呆然と見ながら僕は手を振る。


 ……違うんだよ、そうじゃないんだ!




 帰り道、やっぱりエマちゃんはカレン達と行動する。今日こそはと意気込んでいたけれど結局今日も無理だった。


 そう諦めかけた時、思わぬところから助け舟が出された。カレンだ。


 「エマは星見祭に行くの?」

 「ほしみ?あー、お祭りね。行って見たい!」



 ……いいぞ、カレン!



 でも、どうやって誘うんだ。僕は今後ろにいるから、盗み聞きしてるみたいじゃないか。それにみんなに見られる。



 「あら、ラウルと行く約束は?」

 「え?してないよ……ん?」



 後ろ姿しか見えなくても、今、カレンがニヤリと笑ったのがわかる。カレンは振り返ると、僕の方に数歩下がり「どうぞ」と口の形を作る。

 僕はゴクリと唾を飲むと、エマちゃんの隣に行く。


 「あの……僕と、星見祭に行かない?ううん、行って下さい!」

 「うん、いいよ。お祭り行きたいし。」

 「え?本当?」

 「本当だよ。」


 はじめは不思議そうな顔をしていたエマちゃんがニコッと笑う。


 案外あっさりしていたけれど、一緒に行ってくれる事になって良かった。

 ホッと胸を撫で下ろしたとき、後ろから「良かったわね」と言う声が聞こえた。



 ……まさか……カレンはこのために話題を?まずい、絶対又からかわれる!







次は視点を戻します。


閑話は補完のために書きました。

ですので文字数はかなり少なめです。

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