17話 膜
「そんなに大きくなったら他の子たちに見つかっちゃわない?目立ち過ぎだよ。」
そう言うと、耳をペタンとして、目に見えてションボリとした様子になった。シロにはシロなりの考えがあったのかもしれないが、目立ち過ぎは良くない。他の人に見られれば何に巻きこまれるのかわからないのだ。
[クゥーン]
シュルシュルと小さくなったシロにポンと手を置く。
「もしかして、わたしが歩いて行けないほど遠かったりするの?」
[クゥン?]
「ごめん、ごめん、わかんないよね。」
わたしは首を振る。
「とりあえず、行けるとこまで行ってみたいから案内して。」
わたしは採集用の籠にシロを入れて、案内してもらうことにした。つまり、今日の採集は無しである。
どんどん歩いて森の奥に進んで行くと、変なものが見え始めた。ある場所を境にラップのような薄い膜がぐるっと張られているのだ。まるで、この奥に何かがあるというのを示しているみたいで、向こう側に行くのを阻んでいるかにも見えた。
……これ、触っていいもの?
よくわからないものには触らないほうがいいというのはわかるが、目の前にあるものに触ってみたいという気持ちもある。
……素手は流石に何があるかわからないからやめとこう。
「何か、その辺に落ちているものを……」
わたしは足下に落ちていた小石を拾って膜から距離を取ると、投げてみた。その小石は空中に弧を描いて、目標地点である膜に触れる。そこまでは予想どおりだった。
パチン
「……へ?」
小さく弾ける音がしたかと思うと、投げた小石が膜に弾かれてこちらに向かって飛んでくる。かなり早い。
慌ててギュッと目を瞑り、両腕で顔を庇う。
バサッバサ
「あれ?石が来ない。……何で?」
恐る恐る目を開けて、腕と腕の隙間から覗くと、キーンがわたしの前で羽ばたいていた。小石は何処にも見当たらない。
「庇って、くれたの?石、当たったでしょ?痛くない?」
わたしはキーンを腕に留まらせて体のチェックを行う。キーンは[キュゥ]と鳴いて、擽ったそうに身をよじる。大丈夫そうだ。
「よかった……怪我は無いみたいだね。ごめんね、ありがとう。」
怪我が無いか調べた時に乱れた毛並みを撫でてなおす。
さて、この後はどうするか、小石が膜に阻まれたとするとわたしはあの奥には入れない。
「シロ、フォルクはこの奥で捕まえたんだよね。」
わたしは籠の中にいるシロに問いかける。
「あれ?……居ない。」
シロは籠の中には居なかった。
つい先程までは居たのだから、近くに居るだろうと思い、辺りをキョロキョロと見回す。
思った通り、すぐに見つかった。シロは膜のすぐ近くに座って、こっちを向いていた。わたしと目が合うと、膜に向かって頭を突っ込む。
「あっ!危な、い?……ん?」
……弾かれない、どうして?
目をパチパチと瞬いている内に、シロは中に入ってしまった。キーンもそれに続くつもりなのか腕から飛び立つ。
「ち、ちょっと待って!」
制止するよりも早く、中に入ってしまう。
……どうするよ、行っちゃう?
2匹とも入れたんだから入れるよね。
弾かれても死にはしないでしょ。
膜まで歩くと、恐る恐る指先を差し入れる。
「あ……入れた!」
弾かれることもなければ、変な感触がするわけでもなく、いたって簡単に入れてしまった。すんなり入れた事に驚く。
その後は先に入った2匹と一緒に更に奥に進む。膜に入る前は偶に子どもの声とかがきこえていたが、ここは全くひと気がなくて、風の音や鳥の声が良くきこえる。まるで音楽を聴いているみたいだ。
テクテクと歩いて行くと、シロが[ワンッ]と鳴いて駆け出す。わたしもそれについて行くために走る。足が短いから、追いつけないけど頑張って走った。
「はぁ、はぁ、こ、ここは……」
そこには大きな泉があり、近くの地面には手の様な形をした緑色の植物が生えていた。
泉は水面が光を反射してキラキラと光っていて幻想的だけれど、近くの変な植物の群生が全てを台無しにしていた。
予告と違う話になってしまいました。
ごめんなさい。