16話 疑問
「シロー、どこー?」
[ワン]
「あ、いた!」
昨日と同じで背後からヒョコッと顔を出す。かわいい。でも、さっきまでそこに居なかったのにどうして居るんだろう。隠れてたのかな?
「シロは何処から来たの?」
[クゥン]
首を傾げて小さく鳴くシロは愛くるしい。それはわかった。しかし、思念波を読み取れなくなったわたしには、何を言いたいのかわからない。首を傾げているからわからないと言っているのだろうか。
「わからないの?」
[クゥン]
シロは地面を前足でしきりに叩き始めた。何をしたいのだろうか、と不思議に思いわたしは首を傾げる。すると、次は木の陰になっているところに移動して、地面に前足を沈めた。
「!?」
[ワン]
あまりにも驚きすぎて脳が処理落ちしてしまっていたが、どこか得意そうに鳴く声で我に帰る。
「ど、どういうこと?まさか影に潜む事ができるの?」
[ワン!]
コクッと頷き肯定される。
「……って事はわたしの影にも?」
[ワン!]
「もしかして、既に……?」
[ワン!]
しばらく見つめ合う。
この世界、なんか変。
えっ、これが普通なの?
そんな考えがグルグル回って、目も回る。
……ま、いいか。わたしの常識がまた1つ崩れたけどね。
思考を放棄すると、随分頭が楽になった。
「シロは忍者みたいで、かっこいいね。もしかして、わたしが家で呼べば出てきてくれたりするの?」
それは流石にないよね。普通なら。
[ワン!]
目の前から元気な声がする。
……出来るんだ。普通って何だろう。シロ以外の魔獣は?
はふぅ、と息を吐くとシロの頭をなでる。パタパタと尻尾をふる様子は普通の犬だ。
「今日もわたしとキーンときのみ拾いする?」
[ワン!]
森と言ったら採集と罠仕掛けだ。やる事がパターン化して毎日はとてもじゃないが行きたくない。偶にで十分だ。森に行けるようになって数日しか経ってないけれどそんな考えが浮かぶ。
わたし、飽き性なのかな?でも、ラウルとかも町で遊んだりしてるらしいし。みんな一緒だよね。
……あー何かもっと実りのある事がしたいよ。
「あ、そうだ!シロ、昨日のフォルクの居た場所教えて。」
そこに罠を仕掛ければ中々捕まえられない獣を又捕まえられるかもしれない。そして、それを売ったお金で料理の道具とか本とか欲しいものを買えばわたしが幸せになれる。色々と。
シロは[ワンっ]と一声鳴く。
すると、元々真っ白な毛が一際白く輝きを増す。それに呼応するみたいに、わたしの手の甲に変な模様がゆっくりと浮かび上がり始めた。その模様は一度クッキリと浮かぶと、その後はスゥーッと消えてしまう。あの時と同じだ。ただ、今回はシロの方が先に光り始め、苦しくもないし、意識を失うことも無かった。
……何、今の?
わたしは自分の手に向いた視線をシロに戻す。そこには先程までの小さいシロは居なかった。代わりに大きなシロが、まるで自分の背中に乗れと言っているかの様に目線と顎の動きで合図を出していた。
次は調べ物です