第二話…にゅーがくしーき
若干変更 8/14
………明日。そう、明日なのです。
──────入学式がっ!!!
急過ぎ? いや、元から決まっていたんですよ。ただ今言っただけです。
「真昼お兄ちゃん、邪魔するね。」
「んー? なんだ?」
「学校の名前なんだっけ?」
「……………マジで聞いてんの?」
「うん。」
失礼ですね。学校の名前なんてすぐ忘れちゃうのです。それは愛嬌です。仕方がありません。だけど何かすごい様な…気がしなくもないですが。
「正式名称かは分からないけど、日暮原学園…だっ多様な気がする。」
なんだ、案外普通でし…たか?
「…お兄ちゃんも忘れてたんじゃないの?」
「やめて、わたしのライフはもう0よ!!」
「ああ、うん、そう言うネタ要らない。」
「夜時ってたまに無遠慮だよな」
今のどこが無遠慮なの。刺してやろうか。
「やめろ、その顔怖い。」
「この顔ですか?」
<●>ω<●>←今多分こんな感じです。これ案外楽しいです。…真昼兄さんの弱点発見ですね。
「うん。やめて。」
「はい。」
仕方ないのでやめてあげました。よろこんでください。
「にぇー」
「あ、クロームさん」
クローム、とはボクが飼っている猫の名前です。白猫です。雄猫です。クソ可愛いです。天使みたいです。…少々独特な鳴き声ですがね。
「にぇー」
「……なんだろ、何か睨まれている感じがするんだけど」
「……?」
クロームさんが睨むわけないじゃないですか。何言ってるんですかね。
「夜時には絶対分からない。クロームの恩人的な奴だからな。」
「にぇーにぇー」
「……恩人、ですか…」
ボクもボクで彼に救われていますがね。
ボクはクロームを撫でました。よしよしと。
……たまにクローム、変な事しますがね。スカートの中に潜り込んだと思えばすぐに出て猛ダッシュで逃げますし…そんな変な所も愛おしいですがね。
「お邪魔しました。」
「あいよ〜」
†
ジリリリリッッ!!
眠い目を擦り、黒い毛布の中から顔を出して、五月蠅くなり止まない目覚まし時計を睨む。
しかしいつまでもそうして居られないので、布団の中からモゾモゾと腕を伸ばして、起床を促す目覚ましを止める。
こう言う所…朝が弱いとこは吸血鬼ががっしり表へ出る。
寝ぼけた頭でトントンと階段を降りていくと、ダイニングでは既に香ばしいコーヒーの香りが立ち込めていた。
「おはよう、夜時」
「おはよ〜……ふあぁ」
ボクが起きるころには、朝陽お兄ちゃんは本を読みながら朝のコーヒーをたしなんでいる。
…今日も輝かしい笑顔でボク疲れますよ。
つーか、完璧超人が身内な人の事も考えて下さいよ。
「ふあぁぁ」
大きな欠伸をして洗面所へと向かった。
顔を洗わないとイマイチ目が覚めず、本領の猫かぶりが発揮できない。パシャパシャと顔を洗い、頭を目覚めさせる。タオルで丁寧に水気を取って、化粧水、クリームをペタペタ塗る。お肌のお手入れは大切です。
ボクはまあまあ可愛い方です。(自己評価ですがね。)
目はハーフな為か…それが理由かは分からないが、パッチリ二重。お肌は白くてツルツルすべすべ……紫外線に極端に弱いからですかね。
「入るね。」
ボクが顔を洗っている間に着替えを済ませただろう朝陽お兄ちゃんが入ってくる。
「ん。」
髪のセットだけはお朝陽兄ちゃんまかせです。髪を櫛で梳かすお兄ちゃんを鏡ごしに見やる。だけどすぐに逸らし、鏡ごしに自分の目を見る。真っ黒な右目、左目は眼帯で見えない。
そうしながら、ボクの中のスイッチが切り替わっていく。
無気力からの、猫被りっ!
………ボクは中身がアレですからね。うん。
巻いた髪を二つに分けて、ツーサイドアップにする。仕上げに黒いリボンを括りつけたら完成です。
幾らなんでもリボンはないですよ、と思うのだが、お兄ちゃん達と両親の「この髪型にはリボンが似合うから」の言葉に押し切られて、こうして毎日のようにリボンをつけられるのだ。種類は二つあってですね、一つが現在付けたばかりの黒いヤツで、もう一つは青いヤツなんですよね。
「はい、出来上がりっ。今日も可愛いね、夜時」
「ありがと、朝陽お兄ちゃんも素敵ですよ。」
にこりと、猫をかぶる。ですが内心は
……うわぁ…朝陽お兄ちゃんそりゃないですよ。
なんですか、今日も可愛いね、とかうわぁ……ホストかってのです。
「くっ……リア充め!」
「………何言ってるんですかね。」
「さあ?」
後ろで真昼お兄ちゃんがなんか言ってる。
どうしたんでしょうか。
「真昼おにいちゃん、おはよーございまーすっ!」
「ん? ああ、はよ。」
「おはよう、真昼」
「おう。はよ、朝陽」
ニコニコしてたら服着替えてなかったな、と気づき、着替えて来ます、と言う。若干の駆け足になりながら、階段を登る。
「にぇー」
「あ、ふふっ、おはようございます、クロームさん」
「にぇー!」
クロームは元気に挨拶をしてくれます。自室の扉を開けて入り、焦げ茶のクローゼットを開ける。
†
…ボクは新品の制服を着たのですが……何故ですかね、若干手が出ず、いわゆる萌え袖状態です。……可愛いからいっか。
とりあえずボクは黒の薄手のタイツを履きます。それからいつも通りの白い手袋と着けてから、足早に部屋を出て階段を降りる。
「お、似合ってるんじゃねぇの?」
「なんで疑問系なの。」
「これがオレだ。」
…ボクは最近いもーととか、おとーとが欲しいな、と思いました。何故末っ子なのですか。うんめいですか、そうですか。…ですがやはり、お姉ちゃん、などと呼ばれてみたいですね。
「……ふぅん?」
「どした?なんか怖いけど」
「べっつにぃ?」
怖いなんて失礼ですね。
カッター、投げたくなります。
†
「………でかすぎわろた。」
あ、今のは気にしないで下さい。しかし|ここ(学校)が大きいのは気にして下さい。
気 に し て 下 さ い
大きくねぇですか? 大学なの? ねぇなんなのこの学校。……まあいっか。
ボクは不意に見上げる。
「……きれーですね…」
桜舞い散る校門で、学級委員長である朝陽お兄ちゃんは新入生の胸に花を付ける役割を負っていた。
「ほら、おいで、夜時。花を付けてあげるよ。」
大好き(猫被り)なお兄ちゃんの元へ子犬のように走っていき、嬉しそうな顔(猫被り)をして花を付けてもらっていたときでした。
風が吹いて、桜が舞った。そんな中現れた長い黒髪彼女の姿に一瞬で兄は恋に落ちた。…様な顔をした。
(どこの少女漫画ですか。ここは現実だと言うのに。)
とボクは内心でツッコミを入れながら、ポーっとするお兄ちゃんからそっと離れます。
(いやぁ…ボクって本当に良い妹ですよね。流石ボク! 空気を読まないただの御まぬけな妹とは違うのだ! 物凄く空気を読みますよね、ボクって。)
しかしたまにお兄ちゃんが廊下で女の子に囲まれて困っているときは、
「お兄ちゃんに近づかないでよね!」
と言う感じで追い払ってるんですけど、こういうときは場をわきまえているのですよ。出会い的な場面にいりませんよね? ボク。
「花を、どうぞ」
馬鹿みたいな笑顔で差し出された花。兄の爽やかな嘘つき笑顔に「?」と疑問符を浮かべた彼女は洞察力に溢れていたと思う。それに気付いた兄は、彼女の容姿以上にその態度を気に入ったっぽい。
いや、青春ですよね。憧れます。
…初恋は…未だ未経験なんですよ。
憧れますね、初恋。
お兄ちゃんと可愛い女の子との出会いを果たしたとき、ボクはその様子を離れたところから観察していた。
「ねぇ、そこの新入生、なにしとるん?」
「ん? ああ、すいません、邪魔でしたか?」
声のした方へにっこりと猫被りの笑顔を浮かべる。みると、たいそう美形な少年がいました。
青年…とも言えるでしょうがね。オレンジがかかった赤い髪に、鮮やかな赤い瞳……ネクタイの色からして二年生なのでしょう。この学校はネクタイで何年生か分かりますからね。
一年生は赤。二年生は青。何年生は黄色。見事なトリコロールカラーですよね。あ、特待生や生徒会は白とその学年の色があるですよ。
ボクは一応特待生なので白です。
……にしてもこの人なんでしょうかね、裏がありそーなんですが……怖い怖い。
「いや、ちゃうちゃう。こんな可愛い子がここでなにしとるんかなーって、思って聞いただけや」
フ ェ ミ ニ ス ト だ っ た か 。
出来れば関わらないで欲しいですね。厄介者ですので、フェミニストは。
…しかし弄って見るのも面白そうですね。
「えっ!? そ、そんな…わたしが可愛いだなんて…」
かーらーのー?
「……なぁんて、言うと思いました?」
ボクは可愛くない。性格的に。
うん、何せ捻くれてますからね。仕方ないです。
「へ」
「ボクが可愛いのは見た目だけですよ、ばぁか。」
すーと、肩にかかった長い髪を後ろへとながす。
うんうん、どんな反応を見せてくれるのかな?
「………っぷ……あはは! アンタ最高や!」
「えと…?」
なんで笑っているのでしょうか…? 頭イっちゃってる?
そして彼はしばらく笑ったあとこう言いました。
「ふぃ……久々にこんなん笑ったわ。オレは紅 伊吹。アンタ、名前はなんて言うん?」
「……………有栖川、夜時。」
ちょっと機嫌が悪いな、と自分でも分かります。対して赤髪先輩は機嫌が良さそうです。
「ほーアリス言うんか。」
「有栖川夜時。」
「アリスな。」
「………む」
「…………すまん、悪かった。だから睨むのやめてくれへんか?」
「ふんっ………べ、別に……許してあげないこともないけどっ…」
何なんですか、アリスって…ボクは有栖川夜時なのに…!