9.シドンの料理教室
大賢者シドンは、その場でズバンとイカの足を一本手刀でたたっ斬るとそれを持って船室に消えた。
「あっ、イカ使うんだ」
というか、料理に素手とかあれなんだけども。
これなら突剣でイカ焼き作ったイーミャのほうが、まだ安心できるというか。
「できたよー」
「はや!」
はやというか、明らかに料理してないよね。そんな時間なかったよね。
そんな俺の疑問をよそに、シドンが持ってきた銀色のボウルの中に入っていたのは、何やら白い糸のようなものであった。
「フッフッフッ。大賢者のボクにかかればこんなものだよ」
「これはもしかして、イカソーメン?」
なんで異世界人のお前がイカソーメンを知っているんだという疑問は、この際おいておこう。
相手はレベル99の大賢者なので、俺の記憶から再生したとか余裕でやる相手である。
だから、読者も感想欄で矛盾点とかあまり指摘してはいけないのだ。
そこら辺あんまり突っ込まれても、こういう世界観だからとしか言えないし、良かった点だけ書こう。
ナンノコッチャであるが、それは置いておいて根本的な問題がある。
「なあ、シドン。イカソーメンも消化悪いよな」
「ままっ、食べてからいってよねー」
「うーん、いやでもさ」
俺は消化悪いもの食べると吐いちゃうんだぞ。
「ままっ、ままっ、このタレに浸して食べるんだよ!」
「そこまで言うなら、まあ一本」
木の棒を箸にして、タレに浸してすすってみる。
「んんっ!」
「どうだい、消化に良いだろう」
すごい!
「どうやったんだシドン、イカがこんなにまろやかに柔らかくツルツルと美味しくいただけてしまうとは、天才か!」
「ハハハッ、そんなに褒めるなよ」
「あっさりしてすごく美味い、これなら俺でもたくさん食べられそうだよ」
「フッフッ、へっへっ、ボクは料理も天才だからしょうがないよね、もっと褒めないでくれよ」
イーミャがぶすっとした顔で、俺の食べているイカソーメンを一本つまみ上げて口に入れる。
「おい勇者殿、これはイカじゃないぞ」
「えっ? そういえばイカじゃないよね」
じゃあ、これは何だ。俺達の視線を受けて、シドンはニヤッと笑って得意気に説明する。
「うん、イカを何とかしようとしてみたんだけど、やっぱり消化に悪い。そこで、乾パンを魔法で小麦粉に戻して、柔らかい麺にしてみたんだ」
「ただのソーメンじゃないか!」
「食べやすいからいいじゃないかー」
「うっ、そりゃそうなんだけども……」
なんだこの、騙された感じ。
クッキング番組で並んでる材料使わずに、お茶漬けかカップラーメン作られた的な。
「麺ツユだって美味しいだろう」
「そうだ、これ醤油っぽいけどどう作ったの……」
「なんとなくだよ」
「たぶん、それが一番すごいよ」
異世界でなんとなくで醤油作ったら、普通は感想欄炎上だよ。
まあ、美味しいから良い。
俺はそうめんで、久しぶりに満足した食事をして満足したのだった。
大賢者シドンは、この世界におけるジョバンニ的なあれなので感想欄炎上だけは勘弁してください(土下座)
次回、美味しい食事を終えた勇者をピンチが襲う。