8.イカ焼きパーティー
「ところでシドン」
「うんー」
「川にクラーケンとか居ないよね」
「あっ、そこから聞く?」
そこからだよ、当たり前だろ。
「なんで、こんなの釣れちゃったんだろ。大賢者シドン様の見解を聞きたいんだけど」
「それは凄くー?」
「凄く聞きたいよ、これは可及速やかに原因を究明しないとマズいでしょ」
さっきのクラーケンの攻撃で、かなり木造船のヒットポイントが削られたと思うんだよね。
あと二、三回ああいうことがあったらゲームセットだよね。
「うんと、ボクレベル99だよねー」
「そうだね」
「木は良いとして、糸の代わりに猫竜の毛とか使って創造魔法したせいで、凄くレベルの高い魔法の竿的なものができちゃったというか、それ使うとレベルの高いお魚が釣れちゃう的なねー」
「つまり、シドンの強大すぎる魔法力のせいってわけか」
「ごめんねダイスケくん、ほら財宝あげるから機嫌を直そう」
「いらないよ、別に機嫌を損ねてるわけじゃないからね、ただ危ないから」
クラーケンと一緒に、色鮮やかな珊瑚の枝が浮かんできたのだが(絶対、川にこんなものないよな)。
こんな場所でそんな財宝が取れても邪魔なだけである。
「とにかく、この竿はもう使えないな」
やれやれである。シドンが竿作ってくれたのは善意なので文句も言えない。
このレベル99どもは限度を知らないから、俺が最初に注意しないといけなかったのだろう。
「ふにゃ!」
俺が危険な『魔法の竿』を仕舞いこむと、イカを食いまくっていたチャンドラーが不満そうな声を出した。
「勇者殿、チャンドラーは、せっかく良質の食べ物が取れる釣りを止めることないと言っているぞ」
「いや、そんな長い会話じゃなかっただろ」
飼い主はかなり意訳を含めているようである。
「まあ、餌は何とかしないといけないんだけどね」
「それはあとで考えるとして、我々もイカ焼きパーティーと洒落込もうではないか。早く食べないと、チャンドラーに全部食べられてしまう」
イカ焼きってどうするのかと思えば、イーミャは聖剣に炎の魔法を唱えるとズバッとイカを突き刺して焼き始めた。
なんというアバウトかつアグレッシブな料理。
「それ以前にイカとか食べるんだね君たち」
デビルフィッシュとか言って食べないんじゃ。
それはタコだっけ、どっちにしてもあんまり食べないよね。
「戦場では、モグモグ……なんでも食べないと生きていけないからな」
「クラーケンの丸焼きは、硬すぎてダイスケくんにはちょっと消化が悪すぎるねー」
俺の幼女主治医様がそう言っておられる。
粥類しか食べてないし、いきなりイカは俺も無理だと思ってた。
「美味いのにな、私がモグモグと噛んで柔らかくして、それを口移しに飲ませるというのはどうか」
「それでも消化が悪いんだよ!」
聖剣で焼いたイカをそのままダイレクトに食っているイーミャが、むちゃくちゃ言って怒られていた。
そういえば、チャンドラーの食糧よりまず自分のご飯を心配すべきだった。
ふらっと、食料庫を見てみたのだが日持ちする乾パンとかしかない。
胃腸が弱ってる俺にはちょっとまだ重すぎるな、ゆっくり食べたら大丈夫だろうか。
「まあ、ダイスケくんの食事はボクがなんとかするからまかせてー」
「シドン、お前料理とかできたっけ……」
シドンが何とかするって、申し出はありがたいんだけど、なんかあんまり良い予感がしないのだが。
何も考えてない三人が行き当たりばったりで進む
ライブ感覚船旅なろう小説。
次回、大賢者シドンが用意した消化の良い食べ物とは!
(作者もまだ先考えてないのは内緒です……)