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Hard Days' Knights  作者: 里崎
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発火編

クウナ、ダフォン、トララード、フォワルデが人体発火事件を解決する話。


#ファンタジーワンドロライ 参加作品

「仮面」、「奇病」、「火の粉」

げほげほと、ひっきりなしに咳の音。

白いシーツの端に点った火が、生物のようにゆらゆらと、瞬く間に燃え広がりーー


力なくもがき続けるひどくやせこけた手が、真っ赤な炎に包まれた。


***


「伯爵さま、騎士団の方が参りました」


部屋の入口から召使いが声をかける。うむとうなずいた厳しい顔の老人が、湯気の立つ紅茶のカップを片手におもむろに振り返りーー


ガタン、と椅子が大きな音を立てて傾き、また戻る。


「な、な、な、……」


目と口を大きく開けた老人が、床に盛大にひっくり返った。腰を抜かしたらしく、必死に椅子の上によじ登ろうとするのを、慌てて駆け寄った召使いたちが二人がかりで手伝う。


ブーツのかかとを鳴らして室内に入ってきたのは、三人。


切れ長の目をした濃紺の隊服の青年。

同じ服を着て、申し訳なさそうに細い背中を丸める、青白い顔の青年。

その横に、足首まである丈の黒い外套を羽織った、小柄な覆面が一人。


老人の血走った両目が釘付けになっているのは黒い小柄な覆面。先日の舞踏会で領地一の戦力を誇る警備兵たちをたった一人で圧倒したその異様な存在との再会に、権威ある老獪ろうかいは普段の存在な態度はどこへやら、これ以上ないほどビビり散らして子猫のような悲鳴をもらす。


そしてーー


顔面にびっしりと刺青いれずみを入れた褐色肌の長身の青年が天井裏から降ってきて、彼らの横にすたんと降り立った。騎士には見えないその異様ないでたちに、小さい黒マントにビビる主人を不思議そうに眺めていた召使いたちが怯えた顔をする。


刺青の青年の肩に、覆面の人物が親しげに手を置く。


「フ、フォ……!」


圧政で有名な冷酷無比の伯爵は、せっかくよじ登ったばかりの椅子から転がり落ちて、泡を吹いてその場で卒倒した。


***


「ああ面白かった」


顔を覆っていた黒い布を取り払って、長い黒髪を服の下から出した少女が、青空の下でけらけらと笑う。胸元の金具を外して真っ黒な外套を脱ぐと、その下からは左右を歩く青年二人と同じ、濃紺の隊服が現れる。


「横暴で圧政で嫌われ者にせよ、あれでも貴族で伯爵で領主さまなんすけど、いいんですか……」


隣を歩く青年が白けた目をして言うのに、少女はちらりと楽しげな目を向けて。


「なんだかんだで結構常識人だよねぇ、ダフォン」


「あんたらと比べられても困るんすよ……」


複数形で示されたその言葉の先にいる顔ーー赤鈍色の髪を揺らして狡猾に不敵に笑う青年の顔が自然と浮かんでしまって、まぁね、と少女の口角がさらに上がる。


「ああ、道案内ありがとう、説明も」


住宅の建ち並ぶ路地の途中で足を止めた少女はそう言って、青空に突き刺さる真っ黒な柱を見上げた。


明らかに一番年下の少女が先導する妙な集団をじろじろと見ながら、理解の追いついていない顔をして、地元自警団の青年はおっかなびっくり一礼する。


「残念ながら、やはり全焼ですね」


目の前に広がる真っ黒な焼け跡を見、トララードが沈痛の表情で言った。


騎士三人と自警団の青年は焼け跡の前に立ち、死者への祈りの言葉を紡いだあと、数秒間の黙祷。ぱっと顔を上げた少女は、真っ黒焦げの太い梁をぴょいと飛び越えると、焼け跡の奥で荷物を掘り出している人たちのところまで走っていく。


「先行くなよ……中佐、足元お気をつけて」


「も、申し訳ない」


数歩踏み込んだだけで早くも転びそうになっている痩せぎすの青年の腕を、ダフォンがとっさにつかんで引っぱりあげる。二人がようやく少女のもとに追いつくと。


「主人は先月から床に伏せっていて……」


煤まみれの写真立てを抱きしめてぼろぼろと泣いている女性の話を真剣な表情で聞きながら、その細い背中を、少女がさすっているところだった。


「お医者さまは何て?」とクウナ。


「何人ものお医者さまに往診を頼みましたけれど、病名は分からなくて……ただの栄養失調と老衰だろうと」


この国の医療において、それは大して珍しいことではないが、とトララードは考えながら、周囲の焼け跡を見回す。すぐ近くにある木箱のようなものに歩み寄った。ガラス製の吸い口と、炭のかたまりをつまみあげる。


「大変失礼ですが、ご主人は葉巻など嗜まれましたか」


女性が慌てて首を振り、ことさらに大きな声で答えた。「生まれつき肺が悪くて、そういったものは毛嫌いしていました」


首をかしげる少女の横で、「寝タバコが引火した可能性はない、ってことですよ」とダフォンが小声で言い添える。


「暖炉はそちらですよね。ランプなど、他に火を使うものの位置は」


トララードの問いに、召使いらしき男女がそれぞれに指をさす。


寝室だった場所を見渡して、ひとつうなずいたトララードがぐっと眉を寄せて告げた。


「火元は、こちらのーーご主人のベッドの可能性が高いかと」


騎士たちが一斉に表情を曇らせ、住人たちと自警団の青年が「やっぱり」と青い顔でうなずきあった。


***


『火人病』ーーこの地域で最近聴かれるようになった病名。様々な症状が出て、ベッドから起き上がれなくなった患者がとつぜん発火する、というのだ。安静にと一人にした寝室から出火して、家の者が気づいたころにはもう遅く、家屋全体が焼け落ちる。


「ーーこれで全部か。大体の情報は出揃ったかな」


ソースたっぷりの肉をもぐもぐと頬張りながら、少女が言う。

その背後、大きな半円形の窓の向こうには星空が広がっている。


「直接、人が燃えたところを見たやつはいないから、まだ断定はできませんよ」壁に貼られた地図を見上げ、眉間にシワを寄せたダフォンが呟く。「病人ってこと以外は、場所も年齢も性別もバラバラ。少なくとも感染する病じゃなさそうですね。この街からしか報告がないのが妙ですが」


発火地点に×を印したそれを同じように見て、うん、とクウナもうなずいた。「普通、人体が発火したなんて言っても誰も信じないから、他の街では報告として受理されないんじゃないかな」


「まぁな。実際ありえませんし。ねぇ?」


ダフォンが視線を向けた先、湯気の立つカップを両手で持ちながら、トララードが首肯した。


「人体の大半は水分ですから……例えば、大量の油をかぶって火をつけた、とかでない限り、単体で発火するなんてことはありえません」


賢しい文官二人の断言に、だよねぇと少女は腕を組み。「あ。実は人間じゃなかったとか、身体が燃えやすい物質に変わったとか?」


ダフォンが気の抜けた顔をし、トララードはふむと顎に指を当てる。


「可能性はありますが……現状すべての遺体の損傷状態が酷いため、確認することは難しいかと」


カタン、と窓枠が鳴る。ダフォンが腰の剣に手をかけると同時、「お帰りフォワルデ、先に食べてるよ」と少女が振り向かずに言った。夜風と一緒に滑り込んでくる茶色の外套。泥のついたブーツが床板に乗る。空席を示す少女の指を無視して、外套の下からすっと小さな箱を取り出してテーブルに置いた。木と象牙に埋め込まれた螺鈿らでんが光る、みごとな彫刻箱。その、焼けた跡など微塵もない綺麗な箱の中央に、昼に見て回った焼け跡のひとつで見かけたものと同じ家紋が刻まれているのを見、青ざめたダフォンが椅子を蹴って立ちあがった。


「お前まさか盗ってきたんじゃ」


温度のない瞳がすいと動いて首を振り、低い声で言った。


「隣街の質屋に、昨晩持ち込まれていた」


「えっ隣まで行ってきたの?」目を丸くする少女に、一瞬黙った外套の青年はさらにその二つ先にある街の名を言った。


「転売されていた」


うわあああと突然叫んだ少女がフォワルデの手を引いて、食事の並ぶ空席に強制的に座らせた。


「報告は明日で良いから、まず食べて食べて」


相変わらずの無表情で首を振った青年は、だが肩に乗る少女の手が緩まないのを一瞥してから、大人しくパンをちぎり始める。


椅子に座り直したダフォンが、かたわらの地図を見上げるが先ほどの地名はどれも載っていない。絶句していたトララードが、それに気付いて距離を言った。かすれた声で。


ダフォンは盛大に咳き込み、そのあと2回聞き返した。


肉にかじりつくフォワルデを数秒無言で眺めたあと、盗品の彫刻箱を見つめて、トララードがそうか、とぽつりと言った。


「ひとつ、思いつきました。病気ではなく人為的な……放火と殺人と強盗と不法侵入の可能性があります」


そっと目を細めた少女が、綺麗に食べ終えたデザートカップをテーブルに置いて、椅子に深く座り直す。


「事件ってことなら、駐在の騎士と自警団に任せてもいいんだけど」


「何言ってんすか、面白くなってきたところで」とダフォン。


「だよねぇ」


いたずらっ子のような目で笑い合う二人が催促するように目線を向けた先、トララードが言った。「まだ断定はできませんし」


「じゃあ試そうか」と少女。


「どうやって」とダフォン。


「要は、病名の付かない、衰弱したように見える人がいれば、強盗に狙われるかもしれないんでしょ?」


笑顔のクウナがトララードの肩に手を置いた。即座にダフォンが切り返す。


「敵の見えない囮捜査に国の叡智を使うのは賛成できかねます」


「しまった、アサトさんが適任だったねぇ。一人で戦えるし逃げ足もピカイチ」


「……むちゃくちゃ失礼だけど、まぁそうですね」


白けた目をしたダフォンが息を吐いた。


***


翌朝。

朝日の差し込む廊下を進みながら、隊服の少女が後方の青年に言う。


「じゃ、フォワルデには昨日の続きを辿ってもらうってことで……心配はしてないけど、無理せず急がず、何かあったら伝令出してね。向こうに泊まってもいいから、あ、お金はちゃんと持って」


「オカンか」


通り過ぎたばかりの扉の向こうから、ひどく眠そうなダフォンのツッコミ。それにへらっと笑って「先に外、出てるねー」と返すと、クウナたちは階段を下り、ロビーを抜けて宿場の玄関を出た。


人々の行き交う通りの向こうで、何かが壊れる音がした。わっと声が上がる。


「オイなんだよ、またケンカか?」


寝癖頭で寝巻き姿の男が、近くの家の窓から顔を覗かせる。


その男に少女が気安く問うた。「ケンカ多いんですか?」


「おお。そこの通りの先に、チンピラどもの溜まり場があってな」


礼を言った隊服の少女が剣の柄に手をかけて駆け出そうとするのを、隣に立つ刺青まみれの青年が手を伸ばして止めた。不思議そうに見上げてくる少女が何か言う前に、「お、あんた昨日の」と通りすがりの男がフォワルデを見て言う。騒動に加わろうと連れ立って歩いてきた数人のチンピラたちが、フォワルデの前で立ち止まった。そこでちょうど宿場から出てきた隊服姿のトララードが、ぎょっとなって固まる。濃紺の制服にチンピラたちが一瞬目を向けるが、頼りない体格と文官を示すタイを見て、すぐに興味を逸らした。


そこへ、二階の窓が開いてーーすたん、と一人の青年が降ってきた。


隊服のジャケットは着ていない。黒いシャツのボタンを留めながら顔を上げたダフォンが、「お待たせ」と気安く言うとフォワルデの肩に腕を回し、


「あんたら、あれ加勢行かなくていーの?」


どんどん大きくなっていく騒動を顎で示しながらチンピラたちに問い、


「どーせ暇だし、俺らも手伝ってやろっか」


と歯を見せて笑った。


チンピラたちが通りの先に向かうのに付いていきながら、ダフォンが、少女とすれちがいざま短く言う。


「予定変更、別行動」


連れだってケンカに向かう男たちをニコニコと見送るだけの小柄な少女騎士と、その隣で宿屋の壁にへばりついているひょろひょろの青年騎士を呆れたような目で見やる、周辺の住人たち。


少女が言った。「自分で考えて動いてくれる部下がいると、助かるねぇ」


トララードが目を泳がせながら答える。「貴女以外の上官は、勝手に動きすぎって言いそうです……」


***


血相を変えた駐在の騎士が部屋に飛び込んでくる。


「大将! リストにあった家から煙が出ました!」


クローゼットのドアが開く。


「外したかぁ」毛皮のコートと革のジャケットの間からクウナが出てきて悔しそうに呟くと、両手で抱えていた木桶を床に置く。水面が揺れる。「けっこう良い条件にしたんだけど」


「どの順に襲うか、あらかじめ計画を立ててあるのかもしれません」そう言いながらベッドから身を起こしたトララードが慌てて靴を履く。


駐在の騎士から場所を聞き出すなり、トララードにあとから来るように言いおいて、少女は誰よりも早く屋敷を飛び出して長い坂道を駆け下りる。角を曲がり、細い路地を抜け、野良猫を飛び越え、青い屋根の家の三階の窓から薄く煙が出ているのを見つけて、開け放たれた玄関に飛び込んだ。


廊下でうろたえている召使いたちの前を駆け抜け、絨毯敷きの階段を数段飛ばして駆け上がり、回廊を滑るように進んでーーそこに集まっていた駐在の騎士数人と家人たちの背中に向かって「消火作業!!」と大声で叫んだ。慌てて振り返った騎士たちが泣きそうな顔で首を振る。彼らの指さした先ーー


痩せこけた男が眠るベッドの横、窓辺に置かれた灰皿の上で、火の点いた数本の葉巻が、ゆっくりと白い煙を出している。

整然と並んだ調度品。少し開いた窓からの風に揺れるカーテン。絨毯の上にはチリひとつない。


ありゃ、と呟いた少女は、かかとを揃えて皆に向かって頭を下げた。「ごめんなさい、火事と間違えましーー」


「あってますよ」聴き慣れた声。隣の部屋からどたばたと音がして、二人のチンピラを蹴り飛ばしながらダフォンが現れた。

ポケットから取り出した少し濁った色の紙を、ちょうど、汗だく息切れで回廊を回ってきたトララードに手渡す。


「これですかね。確認を」


「あ、ありがとう」


階下から召使いたちの騒ぐ大声。階段を乱暴に駆け上がる足音。


暴れる白衣の男を太い腕で抱え込んだ状態のフォワルデが、ぬっと部屋に顔を覗かせた。


「ご、強盗だ!!」


その物騒な顔を見て屋敷の者たちが悲鳴混じりに叫ぶのに、「あっ違います違います」隊服姿の少女がフォワルデの前に飛び出して、笑顔で両手を振る。


「あ、あのう、一体なにがどうなって……」


次々に屋敷に乗り込んでくる騎士たちと、チンピラとの謎の乱闘騒ぎに目を白黒させていた住人たちが、おずおずと騎士の一人に声をかける。


「失礼しました、ご説明します」


少女に目配せされ、患者を診ていたトララードが立ち上がって皆に言った。窓辺に寄ってカーテンを引き開ける。暖炉の脇に吊るされていた火かき棒を手に取ると、その先に、ダフォンがチンピラから奪った先ほどの紙を刺して、日にかざした。


疑問符を浮かべる人々の前で、紙の端からぱちぱちと赤い火花がはぜた。驚きの声が上がる。


水差しの水を灰皿に注ぎ、紙の端をひたしてから、トララードが言う。


「強い日差しに数分あてると火の粉を発する、特殊な紙です」


水面から、白い煙がゆらりと立つ。


「発火しやすい油を染み込ませてあるんです。西州の移動民族が使う火起こしの道具です」


続けて少女が説明した。「患者の往診に来た医者が、その紙に薬を包んだり、あるいは看病用のメモかなんかにして、さりげなく日当たりの良い窓辺に置く。患者の部屋だから人の出入りは少なく、その間、紙は人知れず発火して他のものに燃え移る。そして家人が火事に気づいて、騒ぎになった隙に数人で忍び込んで金目のものを盗む、と」


「医者が換気のためにって窓を開けても、普通、まさか強盗を招き入れるためとは思いませんしね」


ダフォンの言葉にトララードがうなずいた。


手口を完全に暴かれた強盗たちは諦めの表情を浮かべる。彼らを捕縛し終えた駐在の騎士たちがほっと息をついて口々に礼を言い、満足げな表情で退室しようとしたところでーー


「さぁて、」勲章だらけの帽子を被りなおし、中肉中背の少女が、まるで散歩にでも誘うみたいに、こともなげに告げる。「本拠地、乗り込もっか」


***


数日後。北州騎士団本部。

朝の日差しが降り注ぐ下、十台ほどの馬車がずらりと、演習場の端に並んでいる。荷運びの要請を受けた若手騎士たちが眠そうな顔でぞろぞろと建物から出てくるのを、「朝からどうもありがとう」と黒髪の少女が出迎える。


髪をくくり直しながら先輩たちと談笑しつつ階段を降りてきた白髪の少年が、その姿に気づいて歩み寄る。


「でお前今度は何したの」


指示出しをしていた笑顔のクウナが振り返ってよどみなく答える。


「おはようイグヤ。強盗捕まえただけだよ」


「ぜってぇ嘘」食い気味にきっぱりと言い放つ少年。


「ーー収監しきれない数の強盗殺人集団ひっとらえて領主さまに突き出したら、やましいところのある領主さまがそれにびびってお礼の品っつう名目でご機嫌とりの品々を送りつけてきた、ってところですか」


切れ長の目をした青年が、馬車から下ろしたばかりの木箱の山をコンと叩き鳴らした。中から薄い陶器がぶつかり合う音。フンと侮蔑的に鼻で笑うと、二箱まとめて抱え上げる。


「おはようダフォン。文官には声かけてないけど」


「そんなこと言ってる間に日ぃ暮れますよ、この量。それに片棒かついでますしね。ーーこいつも」


そう言ってダフォンが、がすんとひかがみを蹴った相手ーー


茶色い外套を揺らす刺青まみれの青年を見上げ、イグヤがぎょっとなる。


「お、仲良くなった?」少女が嬉しそうに聞くのに、


「中佐の見舞いに引っぱってった、そのついでです」ダフォンが肩をすくめてぶっきらぼうに言うと、さっさと歩き去る。


新入りの小柄な二人が細い腕をぷるぷるさせながら馬車から下ろした木箱を、奪うようにして持ち上げたフォワルデに、「良かったね」と少女が笑顔で言った。一瞬何か言いたげな目をした元暗殺者の青年は、そのまま何も言わずにさっさと歩き去る。


並んで歩く二つの背中を見送り、「……うーん、妙な組み合わせ」とイグヤ。


「そう?」きょとんとする少女。


「で、中佐はまた?」


「そうそう」


2022/11/24:改稿(階級章→勲章という語彙を授かった)

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